凛堂コユリは裕福な家庭に産まれ育ち、周囲からはなに不自由無いと思われて来た。

だが、彼女は孤独だった。

両親の仕事上家ではいつも一人。友達はいたが、本音で言い合える友達は一人もいなかった。それは、周りから高嶺の花だと思われている事に原因がある。

一人で溜め込み、己を責め、それを周囲には覚らせないようにする。そんな生活を送っていた所為か、彼女は何でも一人で溜め込む性格になった。

そんな彼女だからこそ、DWで出逢ったキリハやネネ、タイキ、ヒョウルモン達が大切な存在になった。本音で語り合える仲間、生い立ちなど関係なく接してくれる友達。

やっと手に入れた掛け替えのないそれを、簡単に忘れ手放す程コユリは愚かではない。

絶対にDWに戻り、友達を、仲間を、そして世界を必ず救う。その強い思いがDWに戻れる切っ掛けになる事を夢の中の彼女はまだ知らない。



***



ヒョウルモンが人間界に来たのは、今回が二回目だった。

まだDWが平和だった頃、些細な事でデータの狭間に迷い込んでしまった事があり、辿り着いた先が人間界だった。

そこでヒョウルモンは一人の少女に出逢った。艶(つや)やかな金髪に、綺麗な紅の瞳を持つ少女に。

その少女もまた、一人だった。彼女にだけはヒョウルモンが見えており、一人は可哀相だと思ったヒョウルモンが彼女の話し相手になったのだ。

少女の名前をヒョウルモンは知らない。別に興味が無く、自分も名乗らなかった。だから少女はヒョウルモンを"狼さん"と呼んでいた。

いつしかヒョウルモンは、その少女に恋心を抱いていた。しかし彼女は人間。その思いをヒョウルモンが彼女に伝える事は無いままとある拍子にDWへと戻って来たのだ。

年月が過ぎ、ヒョウルモンはまた人間の少女に恋をした。あの時の少女と同じ紅の瞳を持ったコユリに。

コユリと出逢ったばかりの頃はあの少女と重なる部分があり、ヒョウルモンはそれに惹かれた。だが余りにも面影があり、ヒョウルモンは内心不思議に思っていた。

そして今日、漸(ようや)く気が付いたのだ。コユリが、あの少女の娘だという事に。

今、ヒョウルモンはコユリが好きだ。それは少女に似ているからではなく、"凛堂コユリ"という一人の人間に惹かれ、恋に落ちたのだ。

だが、コユリを幸せにするのは自分ではないと分かっている。だからこそ、キリハには自分と同じ過ちを犯してほしくなかった。

それでもヒョウルモンは、これからもコユリを守り続けると誓った。





世界は動き続ける





------(11/08/30)------
二人の内面的なものや過去を書きたかったのですが……見事に失敗しましたねorz

次回で第一期最終話になります´`





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