「――…っコユリ!」

「コユリさん!」

「女神ッ!」

「……タイ、キ…くん…?…アカリちゃん?ゼン、ジロウ…くん……?」

「良かった!どこか打ったりしてないか?」

「う、うん……」



タイキ達の呼び掛けによって目が覚めたコユリは、まだぼんやりする頭を押さえながら上半身を起こした。



「…他の皆は……ッ?!」



どこにいるの、そう続けようとしたコユリだったが、目の前に広がる光景に言葉を飲み込んだ。



「どうやら俺達だけ人間界に戻って来たみたいなんだ」

「……っなら、ヒョウルモン達も……!」

「俺だけなら、ここにいるぜ」

「っヒョウルモン!」



そう言ってXローダーから出て来たヒョウルモンは、ハクシンモンよりも小さく、半透明の姿だった。



「やっぱりシャウトモンと同じか……」

「ねえタイキ。コユリさんも起きた事だし、一旦家に帰らない?」



アカリの言葉により、4人は一旦帰宅すると言う事で纏まった。タイキ、アカリ、ゼンジロウは明日会う事にしたが、コユリは自宅が少し離れている為、それを断念した。その場で三人と別れ、電車を乗り継いで帰路に着く。



「――…本当に、帰って来たんだ……」

「にしても…デカイ家に住んでるな」

「えっ、そうかな?」



ハクシンモンの様にコユリの肩に乗っているヒョウルモンは、目の前の豪邸に驚いている。だがコユリは平然と応えながら門扉(もんぴ)を開けた。

すると庭の方からペットのアルボが駆けて来た。犬種は超大型犬のグレート・ピレニーズだ。しかし、飼い主であるコユリを威嚇して吠えた。



「アルボ?」

「俺に気が付いたんじゃねぇのか?」

「あっ、そうかもね」



久し振りにアルボの真っ白でふわふわの毛に触りたかったコユリだが、それを断念して玄関を開ける。



「ただいま」



誰もいない家に、コユリの声だけが虚しく響く。彼女にとってはそれが普通で、当たり前なのだ。

無駄に広いリビングを通り、二階の自室へと入った。鞄を机に置き、疲労から重く感じる身体をベッドに沈める。



「……本当に、帰って来た……」

「…なあ、コユリ。この家には誰もいないのか?」

「え?あ、ああ……お母さんは仕事で遅くまで帰って来ないからね。因みにお父さんは今アメリカに行ってるの」

「…淋しく、ないのか?」

「……もう、馴れちゃった」



そう言って気丈に笑ってみせたコユリの姿に、ヒョウルモンは顔を顰(しか)めた。

――…淋しくない訳、ないだろ……。顔に出てるし、バレバレだっての……。



「……さ、晩御飯の支度しなきゃ」



自分に言い聞かせる様に呟いたコユリは、ヒョウルモンを肩に乗せてリビングへと降りた。そこから洗濯物を取り込んで畳み、アルボに餌を与え、更に休む暇無く夕食の支度を行った。



「コユリ、お前疲れてないのか?」

「…疲れてるけど……他にする人がいないからね」



前はお手伝いさんがいたんだけど、とコユリは続けた。そんな彼女の表情は明るい。いつもはたった一人の家事も、今日はヒョウルモンがいる。そう思うとコユリは嬉しくてしかたがないのだ。

夕食を食べ終えたコユリは、ヒョウルモンとこれからについて話し合った。



「――…早く、戻らないと」

「お前の世界はここだ。戻る必要は……」

「私はピュアグロウのジェネラルだよ……!」

「ッ!だが、今頃はバグラモンの手によって地獄の様な世界になっている筈だ!」

「その地獄に置き去りになったキリハくんやネネちゃん、ピュアグロウの皆……それだけじゃない、DWの住民を見殺しにしろって言うの?!」



コユリは声を荒らげた。大切な友達と仲間を見捨てる事が、彼女には出来なかった。ここで諦めてしまえば死ぬまで後悔する、そう思ったのだ。



「……だが、俺達には戻る術(すべ)が無い」



悔しそうに、声を絞り出す。彼女の思いは、ヒョウルモンにも伝わった。だが、今の二人に戻る術は無い。



「……そう、だね。…私、お風呂に入って来るから、ヒョウルモンはここで待ってて」

「ああ、」





無力を責めた





------(11/08/29)------
ペットの名前がお菓子の名前っぽい、と思った方、ノーコメントでお願いします←

超進化の時の名前をどうするか考え中……。DWに戻っても最初はキリハ達と合流しないのでご了承下さい(´`;)





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