「凄い……!」



コユリは目の前に広がる光景に惚れ惚れし、ため息を零した。彼女の瞳に映っているのは、お菓子で出来た街並み。その甘い匂いは鼻腔を擽(くすぐ)り、食欲をそそる。



「……このゾーンのコードクラウンはタイキ達に持っていかれた様だな」

「あ、そうみたいだね」



上空を見上げれば赤の軍旗が掲げられ、靡(なび)いていた。それは既にクロスハートがこのゾーンの支配者になったという事だ。



「このゾーンにもう用は無い。次のゾーンに行くぞ」

「う、うん。分かっ……」

「あっ!人間だ!」



ゾーン移動しようとXローダーを掲げた瞬間、このゾーンの住人が声を上げた。何をするかと思えば沢山の住人に囲まれ、「クロスハートを知っているか」と聞かれ、二人は首を傾げる。



「俺達はライバ……」

「友達だよ!」

「……ハァ、」



キリハとコユリのクロスハートに対しての認識が違うからか、二人は全く正反対な答えを出した。と言っても、コユリがキリハの答えを遮ったが。



「俺達はクロスハートに助けてもらったんだ!クロスハートの友達なら、是非俺達のお菓子を食べて行ってくれ!」



そう言われ、あれよあれよという間に一件のお店に連れていかれた。席につかされた二人の眼前には沢山のケーキが並んでいく。



「さあ、食べてくれ!」

「本当にいいの……?」

「勿論だ!」

「そ、それじゃあいただきます……!」



コユリは一つのケーキを取り、一口サイズにフォークで刺し、口に運んだ。口内に広がる甘い味に、コユリの表情は綻(ほころ)ぶ。



「美味しい……!」

「ケーキ、好きなのか?」

「うん!」



嬉しそうな彼女の笑みに、キリハは恥ずかしくなって外方(そっぽ)向いてしまった。

並んだケーキを物珍しそうにヒョウルモン達が見ている。



「これがコユリの言ってたケーキってやつか?」

「うん、美味しいから皆も食べた方がいいよ!」

「あ、じゃあ僕それ食べる」

「では私(わたくし)はその隣のを」



ヒョウルモン達は初めて食べるケーキを好奇心旺盛に選んでいる。それを楽しそうに眺めていたコユリだったが、キリハがずっと黙っている事に気が付いた。



「キリハくん、甘いもの苦手だった……?」

「……いや、少しなら大丈夫だ」



あまり得意ではないキリハだったが、そう言ってはコユリを傷付けてしまうと思い、そう答えた。するとコユリは己の食べていたケーキをフォークで刺し、キリハの目の前に差し出した。



「はいっ、キリハくん!美味しいよ、このケーキ」

「ッ……!」



少し食べる位なら別にいいか、そう思っていたキリハだったが、今の状況では無理だと瞬時に思った。

コユリの差し出したケーキを食べれば、間接キスになってしまうからだ。しかし、コユリはそんな事微塵も考えておらず、食べなければマズイとキリハは考えた。

そして意を決して差し出されたケーキを食べた。



「ね、美味しいでしょ?」

「……あ、ああ…そうだな」



間接キスの方に意識がいっている今のキリハにはケーキの味など分からなかった。





君に侵蝕されていく




------(11/08/27)------
コユリにアプローチしようと、キリハがコユリの頬に付いた生クリームを舐め取る、っていうネタを書きたかったんですけど、間接キスの所で断念しました(・ω・`) でも勿体ないので、機会があれば書きたいです(o´ω`o)

二人を案内?したのは一応スパーダモンです……。





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