「――…キリハくん、本当の強さって…何かな……?」



パチパチと乾いた音を立てながら燃えているオレンジの炎を見つめながら、コユリはぽつりと呟くように言った。



「……今日の、ディスクゾーンの事か」

「……うん、」



数時間前までいたディスクゾーン。そこでバグラ軍三元士の一人、ブラストモンとブルーフレアが戦った。

その帰り際、壊れ行くゾーンとそのゾーンの住民達を放って戻って来た事が、コユリに罪の意識を感じさせていた。それに加え、傍にいたにも関わらず、キリハを止める事の出来なかった無力な自分を責めている。



「強さとは力、俺はそう考えている。……コユリはどう思っているんだ?」

「私は……まだ、分からないの。一体何が本当の強さなのか」

「そうか、」



キリハは徐(おもむろ)に立ち上がり、メイルバードラモンをリロードした。



「偵察に行って来る」

「じゃあ私も……!」

「大丈夫だ。ヒョウルモン達がいる、コユリは仮眠を取っていろ」

「…うん、分かった。気をつけてね?」

「ああ、すぐ戻る」



本当に夫婦の会話だな、とメイルバードラモンは内心思いながらキリハを乗せて偵察に出た。



「俺達が見張ってるから、コユリはもう寝ろ」

「うん……。ねえ、ヒョウルモンは何が本当の強さだと思う?」

「俺か?……坊主を見ていると、昔の俺を見ている気分になる」

「え?」



ヒョウルモンは昔の己を思い出し、それをキリハと重ねながら話していく。



「昔の俺も、坊主と同じように独り善がりで力ばかり追い求めていた。それが"強さ"だと信じ込んでいたからだ」

「昔…って言う事は、今は?」

「"仲間"だ。仲間を信頼して戦う事が本当の強さだと思っている」

「仲間……、」

「ま、いつか坊主も力が全てではないと分かる日が来るさ。……俺がそうであったようにな」



ヒョウルモンがここまで話す事に、コユリは少し驚いていた。大嫌いな筈のキリハを話に織り交ぜるという事が、今まで無かったからだ。



「私も、分かる時が来るかな?」

「当たり前だ」



話しているうちに眠くなって来たのか、コユリはヒョウルモンに寄り掛かりながらうとうとし始めた。



「眠いのか?」

「ん、少しだけ……」

「安心して寝ろ」

「…ありがと、ヒョウルモン……」



コユリはゆっくりと瞼を閉じ、身体を完全にヒョウルモンに預けた。

すると、先程のヒョウルモンの話を聞いていたラティスモンが音も無く近寄って来た。



「先程の話からすると、私(わたくし)の事も信頼して下さったのですか?」

「最初は警戒してたけどな。同じようにコユリが大切で、身体を張って守っている姿を見ているうちに信頼しても良いかと思ったんだ」

「今日は何だか素直ですね」

「っ……!ただの気まぐれだ!」

「そんな大声を出すと主(あるじ)が起きてしまいます」

「あ、ああ…そうだな」



そこで会話は終わり、ラティスモンはまた自分の持ち場へと戻って行き、ヒョウルモンも神経を研ぎ澄ましたまま目を瞑った。





静寂に包まれて





------(11/08/27)------
書いているうちにヒョウルモンがお父さんキャラになってしまいました……(・ω・`) そしてキリハ放置というね(笑)





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