「雷火雨(サンダーレイン)!」

「白裂(ハクレツ)!」



技が乱れ飛ぶ。デジモンの群れの中心にヒョウルモン達はいた。クロスハートを助ける為、処刑場に向かっている最中に襲撃を受けたのだ。



「チッ……!キリがないね」

「ダークナイトモンの野郎、わざわざ配下のデジモンを送り込んで来るなんてよ」

「どうやら私(わたくし)達が邪魔なようですね」



先手を打ったダークナイトモンは、配下のデジモンを送り込んで来たのだった。

クロスハートの処刑時刻は疾(と)うに過ぎているが、一向に敵が減らない。

住民や警察は全員処刑場にいるのか、住民に被害は無く、警察も来ない事が唯一の救いである。



「クロスハートの奴等、もう死んでんじゃねーか?!」

「もしそうなら、それだけの奴らだったと言う事だ……!」

「ちょっとリーツァモン!コユリ、振り落とさないでよね!」

「分かっている……!」



雷を落しながら、刃を振り下ろしながら、会話を続ける。いつまで経っても減らない敵に全員が苛立ち始めていた。

その時、



「――…ピュアグロウ、デジクロスッ……!」



コユリの声と共にヒョウルモン達が光輝き、ソリフィアモンとルーツァリモンに姿を変えた。



「コユリッ!」

「ジェネラル!目が覚めたのか!」

「迷惑かけてごめん…。もう大丈夫だから……!」



ルーツァリモンの上で元気そうに言ったコユリの姿に、ソリフィアモンの口角が上がる。



「ルーツァリモン、魔王の息吹(トルジェラメント)!ソリフィアモン、神々の祈り(プリーチェノヴァ)!」



ルーツァリモンの前にいた敵は全て凍り付き、それを免れたデジモン達はソリフィアモンの矢によって貫かれていった。

コユリが戻った事により、チーム内の空気が一変した。彼女がいるだけで心強いのか、単体時とは比べものにならない程、息を合わせて敵を倒して行く。

そして、ダークナイトモンの送り込んで来たデジモンを全て倒し終わった丁度その時、突如ゾーンが大きく揺れ始めた。



「ッ……!」

「しまった……!」



コユリには何が起こっているのか分からなかったが、ソリフィアモンとルーツァリモンの脳裏には最悪の事態が過ぎった。



「ルーツァリモン、神殿まで飛ぶぞ!」

「分かった。ジェネラル、しっかり捕まっていろ!」

「う、うん……!」



ソリフィアモンは純白の羽根を出し、ルーツァリモンの横を飛びながら、今起こっている事だけを簡潔にコユリに説明した。

その間にも空中神殿から闇の力が溢れ出し、ゾーンのデジモン達は次々と豹変していく。その光景に、コユリは辛そうに顔を逸らす。



「――…っタイキくん!」

「コユリッ!無事か?!」



神殿では既にシャウトモンX4Bとルーチェモンが戦っていた。コユリはすぐにタイキ達の元へ駆け寄る。



「ごめんね、助けに行けなくて……」

「いや、いいんだ。それより、コユリ達は空中神殿に行ってネネを止めてくれ……!」

「…わ、分かった!」



コユリは頷き、ルーツァリモンに乗って神殿の更に上部、空中神殿へと飛ぶ。

見慣れた後ろ姿が紅の瞳に映り、反射的にその人物の名前を呼んだ。



「ネネちゃんッ!」

「ッコユリ?!どうして貴女が……!」



Xローダーで闇の力を吸収したまま振り向いたネネは、己の目の前にコユリがいる事が信じられないのか、困惑の表情を見せた。



「まさかこの短時間であの数を撃破するとは……流石はピュアグロウと言った所か」



ダークナイトモンの愉快そうな笑い声が、神殿内に響き渡り、ネネは苦痛の表情を浮かべた。



「ネネちゃん、そんな事止めよう……?」

「…っそれは無理な話ね」

「私、ネネちゃんとは戦いたくない」

「私も同じ気持ちよ。だから……っ!」

「…だから私は、」



コユリはネネの言葉を遮り、真っ直ぐに、紅の瞳でネネを見据えた。



「今此処で、闇の力を浄化する……!」

「っ……!」



邪悪な闇の力の浄化、それはソリフィアモンが提案した事だった。成功する確率は五分五分。それでも、ネネと戦う事だけは避けたかったコユリは、浄化と言う道を選んだのだ。

ソリフィアモンの弓を、見よう見真似で構える。ネネは闇の力を取り込んでいる為、コユリを止める事は出来ない。



「このままでは質が落ちてしまう……ネネ」

「ッ…スパロウモン!コユリを……!」

「でもネネ……!」



幾らネネの命令とは言え、スパロウモンは躊躇う。一緒に話し、遊び、喜びを分かち合ったコユリ達を攻撃する事は出来ないのだ。

戦況が変わらない中、ルーチェモンとの戦いを終えたタイキ達がシャッコウモンの力によって空中神殿へとやって来た。



「タイキ君まで…!」

「ネネ止めろ!」



コユリとタイキの説得にネネは応じない。その時、シャウトモンの傍らを黒の何かが通った。



「きゃあっ……!」

「ネネ!」

「ネネちゃん!」



黒の何かとは、先程までクロスハートと戦っていたルーチェモンだった。

ルーチェモンはネネを絞めながら闇の力を吸収し始めたが、力を抑え切れず、ネネを飲み込んだまま姿を変えていった。



「ネネーッ!!」





全ては無情に進むだけ





------(11/08/10)------
「コユリ達のいた場所から神殿までどんだけ遠いんだよw」とか「時間の進み具合違い過ぎるだろw」なんて言わないで下さい……orz 書いた自分が一番分かってます(´`;)





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