「――…ったく、レイクゾーンの再現じゃねェかよ」



ヒョウルモンの苛立った声が病室に響く。

あの後、病室を借りる事が出来た。しかし、コユリが起きる気配は無く、窓の外はまだ暗い。



「命があるだけ有り難いと思わないの?」

「だけどよ……!」

「――…彼奴(あやつ)らは、コユリが計画の邪魔をしかねない、と申しておったな?」

「ええ、そうです」



ネネが言っていた"計画"。思い当たる節を必死で思い出す中、ベッドに置かれたXローダーからリーツァモンが声を出した。



「このゾーンの闇の力、奴らの狙いはそれじゃないか?」

「ルーチェモンとトワイライトが繋がってたら辻褄が合うね」

「どっちにしろ、コユリが起きなきゃ話になんねーだろ」



ヒョウルモンは、僅かながら辛そうな表情を見せてコユリを一瞥(いちべつ)した。



「だが、奴らの狙いが闇の力であれば、我等で阻止すべきだ」

「私(わたくし)はリーツァモンに賛成です。主(あるじ)なら、計画を止める筈ですから」

「でもさ、実際問題、デジクロス無しでダークナイトモンに勝てるかどうかって話じゃない?」

「なんじゃ、戦闘狂の御主にしてはやけに消極的じゃの」



窓際で星空を眺めながら話を聞いていたハクシンモンが、シキアモンの言葉に首を向けた。



「負け戦して、何が楽しいの?」

「そんなの、戦ってみねーと分かんねェだろ」

「分かる。デジクロスすれば可能性があるけど、単体じゃ九割方無理だ」



冷静に現状を分析し、淡々と話すシキアモンに、ヒョウルモンは食って掛かった。両者の視線は宙でぶつかり合う。リーツァモンは止めようか悩んでいるが、ラティスモンとハクシンモンは余り関心が無い様だ。と言うよりも、二人の口喧嘩に慣れているのだ。



「一割もあれば十分だ!」

「でも残り九割は負ける。戦いは好きだけど、勝率の低い戦いは無闇にしない」

「そんなのただの腰抜けだろ!」

「僕はヒョウルモンと違って馬鹿じゃない。力だけで勝利を得ようとはしないんだ」

「なんだとッ……!」



怒りがピークに達したヒョウルモンは、躊躇いなくシキアモンに襲い掛かった。



「咎人の拘束着(ピオレガータ)!」

「っ……!」

「お二人共いい加減にして下さい!主の前ですよ!」



すんでの所でラティスモンが止めに入った。床から無数の鎖が現れ、ヒョウルモンを縛り付けたのだ。



「――……僕だって、コユリをこんな目に合わせたダークナイトモンを切り裂いてやりたいよ」

「それならなんで……!」

「やられた惨めな姿をコユリに晒したくないから。いや、そんな事、絶対にしちゃいけないんだ……!」

「ッ……!!」



もう、コユリを泣かせたくない。それがシキアモンの本音だった。もし負け姿を晒せば、コユリは責任を負い、気を病む筈だ。それが分かっていたからこそ、シキアモンは消極的であったのだ。

シキアモンの言葉に目を覚まし、ヒョウルモンは一気に大人しくなった。もう大丈夫だろうと踏んだラティスモンは、ヒョウルモンの拘束を解く。



「……済まなかった、」

「僕も少し言い過ぎたよ、ごめん」



和解した二人の頭にハクシンモンが順番に飛び乗り、ぺちりと前足で頭を叩いた。



「イテッ」

「っ……、」

「全く、世話のかかる奴らじゃ」



その光景に、ラティスモンとリーツァモンはクスリと笑う。先程までの殺伐とした空気は完全に消え失せていた。



「っ……だけどよ、計画は食い止めないと駄目だろ」

「彼奴が狙っているであろう闇の力も、ルーチェモンが指導者にならなければ良い話。ルーチェモンを倒せば、それ以上は進まない筈じゃ」

「ルーチェモンを殺るなら、元の姿に戻る前に止めを刺すべきだ」

「その前にクロスハートを助けないと駄目じゃない?」



シキアモンの言葉に、一同はそっちのけだったクロスハートを思い出した。やはりコユリが一番大切なのだ。

そして話を重ね、クロスハートを助けた後、隙を衝いてルーチェモンを倒すと言う結論に達した。更に、コグロモンが記録して来た処刑場の地図を見ながら作戦を立てる。



「――…では、ここから奇襲をかける、と言うことで宜しいでしょうか?」



ラティスモンの問い掛けに、各々が首を縦に振る。一段落付いた所で、ハクシンモンは明け始めた空を見上げた後、コユリに視線を戻した。



「……"青"がいれば、早く目覚めるのかのう」





指揮官不在の作戦会議





------(11/08/07)------
コユリがいないとすぐに喧嘩したり、口論になったりする皆が書きたかっただけです← 結局文章が思い付かず、最後はゴタゴタっとなってしまいました……orz





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