「……痛っ、」 いきなり放り出され、コユリは上手く着地出来ずに腰を打ってしまった。 「相変わらず鈍いな」 「に、鈍くなんか……」 「ほら、服汚れるから立って」 差し伸ばされたシキアモンの手を借りて起き上がり、辺りを見回す。 静かで綺麗、落ち着きのある場所に、コユリは声を漏らした。 「……綺麗な所だね」 「それは、そうせざるを得ないからじゃよ」 「…どういうこと?」 「ん、まあこの話は後でするとして……コグロモン!」 「シゴト?」 「ああ、頼んだぞ」 「ワカッタ!ワカッタ!」 ヒョウルモンの上に乗っていたハクシンモンの命により、コグロモンズが一斉に飛び立った。 「……っそうだ!タイキくん達は……!」 「俺達とは別の場所に落とされた様だな」 「直にコグロモンズが見付ける筈じゃから、ゆっくりすればいい」 大きな欠伸を一つして、ハクシンモンは身体を丸めた。 ゆっくりすればいい、その言葉にコユリはもう一度辺りを見回した後、当ても無く観光気分で歩き始めた。 「……コユリ、」 「うん?」 「その首のヤツ、坊主に貰ったんだろ?」 「そうだよ?」 「…なんであんな野郎から素直に受け取ってんだよ、」 ヒョウルモンは若干拗ねていた。サンドゾーンでキリハと対峙した際にXローダーに戻された事、コユリが素直にネックレスを受け取った事をまだ根に持っているのだ。 「えっと……渡されたから?」 「渡されたから?…じゃ、ねェだろ!坊主の事、怨んでねーのかよ」 「……怨んでないよ。怒ってもない。タイキくんが言った事を信じてるから」 「コユリ……」 「あ、でも……」 「?」 「キリハくんには、本当の事を話してもらいたかったけどね。…私、信用されてなかったのかな……」 天を仰ぎながら、寂しそうに思いを吐き出した。 ――…逆だ。信用以上のものがあったから話さなかったんだろうよ。 ヒョウルモンは、出そうになったその言葉を飲み込んだ。彼女を励ましたいと同時に、憎いキリハから彼女を離したい思いがあり、後者の方が勝(まさ)ったのだ。 なんだか空気が重くなって来たその時、コユリ達の耳にピアノの音が聴こえて来た。 「……ピアノ?」 「ここは芸術を愛するデジモンが多く暮らしてるからね。音楽も芸術の内って事でしょ」 「あ、そっか。……懐かしいな……、」 「なんだ、コユリ。弾けるのか?」 「うん。習ってるからね」 近くにあったベンチに腰掛けながら話していると、ハクシンモンが起き出し、コユリの膝に乗り移った。 「さてコユリ。このゾーンの昔話、聞きたいじゃろう?」 「聞かせてくれるの?」 「ここならゆっくり話せそうじゃからの」 そう言って、ハクシンモンはゆっくりと語り出した。このヘブンゾーンに隠された"闇"の話を。 「――…つまり、もし悪いデジモンが大統領になって封印を解いたら、このゾーンはまた闇に覆われるって事?」 「まあの。じゃが、コードクラウンに選ばれた選挙管理委員と言う者がおる。心配は無いと思うが……」 「それはどうかな」 「どうして?シキアモン」 「今周囲を見て回ったら、選挙の看板にルーチェモンが写ってた。バグラ軍にもいたよね?ルーチェモンって」 ハクシンモンの長い話にうとうとしていたヒョウルモンは、突然シキアモンに話を振られ、ビクリと身体を揺らした。 「ッあ?…ああ、ルーチェモンならリリスモンの部下だ。ま、偏(ひとえ)にルーチェモンっつってもルーチェモンフォールダウンモードだし、同族なんて幾らでもいるからな」 「なら違うんじゃ、」 「無きにしも非(あら)ず。念の為に用心しといた方がいいと思うけど?」 「……そうだね。じゃあ、ルーチェモンを見掛けたら警戒するって事でいい?」 「ああ、分かった」 「了解」 「承知した」 話が纏まった時、傍で飛んでいたコグロモンが声を上げた。 「ハッケン!ハッケン!」 「お、小僧共が見付かったようだな」 「ツウシンチュウ……ツウシンチュウ……」 宙に映し出された画面を観ていると、他のコグロモンと中継が繋がり、アカリやゼンジロウが映し出された。 「アカリちゃん!ゼンジロウくん!」 『コユリさん!タイキ達が大変な事に!』 「えっ……?」 アカリとゼンジロウのただならぬ様子に、画面越しに緊迫した空気が流れた。 『タイキ達が警察に連行されたんです!』 「タイキくん達が…連行……?!皆、今何処にいるの?」 『私達、野外美術館ってトコにいます!』 「分かった!すぐに向かうから、待ってて!」 天上に堕ちた女神 ------(11/07/28)------ ねた置場に書いたネタで連載かシリーズがいけるんじゃないかと思って数話書いたんですけど、挫折しました(笑) まあ需要があれば書きますが……。 最近この連載の最終話ばかり構想してます← 早く続き考えろって話ですよね(・ω・`) |