突然現れた少年に、コユリは息を呑んだ。こんな所で会えるとは思ってもみなかったからだ。彼女が言葉を発する前に、後ろにいた銀と黒が動いた。 「蛇雷(レーペレボルト)!!」 「白裂(ハクレツ)!!」 その技により、キリハとコユリの間で強風と共に砂塵が舞う。 「ッ…ヒョウルモン!シキアモン!止めて!」 「俺はアイツを殺らないと気がすまねぇんだよ!」 「そう言う事。だからそこ退いてくれない?グレイモン、サイバードラモン」 「それは無理な話だ」 「……」 緊迫した空気が肌を刺す。両者の間には殺気混じりの視線が飛び交う。しかし、その張り詰めた空気はすぐに壊れた。 「止めんか、馬鹿者」 「ッ……ハクシンモン、」 「だってさ……!」 「またコユリを泣かせる気か」 その言葉にヒョウルモンとシキアモンが振り返ると、コユリが今にも泣きそうな表情でおろおろしていた。 ハクシンモンはキリハに視線を合わせた。 「済まなかったの、急に攻撃して。……まあ、非があるのは完璧に御主じゃがのう」 「……グレイモン、サイバードラモン、戻れ」 「…坊主、何の様だ」 「フン、たまたま通りかかっただけだ」 メイルバードラモンの上に立つキリハと、臨戦体勢のヒョウルモンが睨み合いを続ける中、リーツァモンがラティスモンに小声で話し掛けた。 「青のジェネラルと何かあったのか?」 「…え、ええ。リーツァモンが来る前に……」 「そうか。……ジェネラル、ヒョウルモンとシキアモンは戻した方がいい」 「う、うん……。ヒョウルモン、シキアモン!ごめん、戻って!」 「ッ俺はまだ……!」 言い残した事があるようだったが、ヒョウルモンとシキアモンは光の粒子となり、Xローダーへと引き込まれていった。場の空気を読み、それに続いてラティスモンも中へと戻った。 「……」 「……」 コユリとキリハ。昨日の今日で、いざ面と向かうと何を話して良いか分からず、二人とも視線を逸らし、沈黙が続く。 その沈黙を先に破ったのはキリハの方だった。 「――…体調はもう大丈夫なのか?」 「え?…う、うん。もう、平気……」 「……そうか」 それだけの言葉が交わされ、また沈黙。するとキリハはポケットから何かを取り出し、コユリに放り投げた。 コユリは何が何だか分からず、バランスを崩し、転びそうになりながらそれを両手で受け止めた。 「それ、やるよ」 「え、キリハくっ……!」 「じゃあな」 ぶっきら棒に、そう言い残してキリハは足早に去ってしまった。コユリは呆気に取られながらも、急いで手の中にあるものに視線を下げた。 「…ルビーの…ネックレス……?」 細い銀のチェーンに取り付けられた真紅の輝きを放つ大粒のルビー。それに、コユリは目が離せなかった。彼女の肩に乗っていたハクシンモンは驚きの表情を浮かべ、言葉を漏らした。 「まさか御主の手に渡るとは……」 「これを造ったの、ハクシンモンだったり……?」 「なんじゃ、今日は勘が良いの。その通り、それを造ったのは妾(わらわ)じゃ」 「!」 「妾の友人に、酷く薄幸(はっこう)ものがいての。気休め程度じゃったが、その石に呪(まじな)いをかけてやったのじゃ」 「……それが、このネックレスの始まり?」 「そうじゃろうな。どう言う訳か、それが"青"へと渡り、そして御主の元へ来た。まあ、それをどうするかは御主次第」 そう言うと、ハクシンモンはそそくさとXローダーへと入ってしまった。手の中に残ったままのネックレスをどうしようかと悩んでいるコユリを見兼ねたリーツァモンが口を開いた。 「かけたらどうだ」 「え、でも……」 「ジェネラルは粗忽(そこつ)だからな、お守りだ」 「私そんなにそそっかしいかな……」 呟きながら、コユリは首にそれをかけた。少しチェーンが長かったが、特に気になりはしなかった。 「コユリ!」 「あっ、コグルモン!」 「大変ダ!」 漆黒の翼で風を切ってこちらに向かってくるコグルモンは、コユリがこのゾーンに来てすぐに放ったのだ。コグルモンは焦った様子でコユリの元へ来た。 「バアルモンガリリスモンニ、ヤラレタ……!」 「ッ……!?嘘、何で……!」 衝撃が走った。つい先程まで言葉を交わしていたバアルモンがやられる等、考えられなかったからだ。 「…コグルモン、案内して!」 「分カッタ!」 コユリは急いでリーツァモンの背に乗り、バアルモンの元へと飛び立ったコグルモンを追った。 紅玉と少年の心中 ------(11/07/16)------ 書くまでも無いと思いますが、タイトルの"心中"は「しんちゅう」ですので(´ω`) 進まない連載と最終回間近?な本家……。かなり辛いです、ハイ(・ω・`) もっと色んな方のキリハ夢が読みたい!と叫んでみても増える気配はゼロ。私に最後の最後まで自給自足させる気ですか神様!← |