アイツの涙を堪えながら必死に笑おうとするあの表情(かお)がいつまで経っても頭から離れない。馬鹿らしい程、脳裏にアイツの姿ばかりが浮かんでしまう。 その度にアイツへの想いが更に強くなっていくのが分かる。自分から突き放したと言うのに、本当に馬鹿な話だ。 誰もいないのに、横を見てしまう事が度々ある。いつも隣にいたからか、今となってはどうも落ち着かない。メイルバードラモンの上も、アイツがいないだけで広く感じる。 たった一日。その僅かな時間ですら堪えられない俺は随分弱くなったものだ。前は、アイツと会う前はそうではなかった。全てを忘れる事が出来れば、こんな感情を抱くことも無いと言うのに。 ポケットに入ったままのネックレスを見る度に、アイツの顔が浮かぶ。 何処かのゾーンで長老にコードクラウンと一緒に貰った代物だ。紅に輝く石がアイツの瞳と重なり、捨てられずにいた。いっその事渡した方が楽だと思い、ずっと渡そうとしていたが、タイミングが掴めず今だに俺が持っている。 「あら、それルビーじゃない。キリハ君って宝石に興味あったの?」 「あるわけ無いだろ。唯の貰い物だ」 「でもそれ、コユリに上げる為に持っているんでしょ?」 「それは……」 「ルビーの石言葉、知ってる?」 「さあ、興味が無いからな」 「"純愛"よ。ルビーの石言葉は、"純愛"」 「……」 「キリハ君の想いがどうであれ、言葉にしない限りあの子が気付く事は無いと思うけどね」 含みのある言葉を吐きながらクスリと笑う横の女が、一瞬でも憎く感じた。 やはり俺の隣にいるのはコユリだけでいい。 *** あの子に対しての罪悪感ばかりが募っていく。今まではこんな事なかったのに。私はユウと帰りたいだけ、あの子だって分かってくれていた。でも、間接的に傷付けた今は? 彼女を悪魔の手から守る為に行った行動が、結局傷付けてしまうなんて。今になって後悔してる。本当に馬鹿ね、私は。 あの子とタイキ君は優し過ぎる。一番冷酷になれるのはキリハ君だけ。だから彼を選んだ。でも、いつも隣にいるあの子には私の黒い部分を見せたくなかったし、私と同じ黒にしたくもなかった。だから、私とキリハ君から突き放した。 ――これで良かったのよ そう自分に何度も言い聞かせた。それでも、罪の意識は拭えない。 その時、あの子の瞳と同じ色が視界の隅を掠めた。 「あら、それルビーじゃない。キリハ君って宝石に興味あったの?」 「あるわけ無いだろ。唯の貰い物だ」 「でもそれ、コユリに上げる為に持っているんでしょ?」 「それは……」 「ルビーの石言葉、知ってる?」 「さあ、興味が無いからな」 「"純愛"よ。ルビーの石言葉は、"純愛"」 「……」 「キリハ君の想いがどうであれ、言葉にしない限りあの子が気付く事は無いと思うけどね」 嫌味の様な事しか言えない私を、悪女の様にしか振る舞えない私を、貴女はいつもの笑顔で許してくれるかしら?ねえ、コユリ。 青と黒の滓 ------(11/06/29)------ まだまだ精進しなければ、と書いていて実感させられました……。やっぱり心情を書くのは難しいですね。シリアスであれば尚更の事で。これからはもっと上手く書ける様になりたいです(・ω・´) |