足場の悪い砂漠をものともせずに、勢い良く地面を蹴り上げ、ソリフィアモンは一気に標的へと跳んでいく。 「久しいな……バアルモン!」 「裏切り者は始末しろとの命令だ」 金属のぶつかり合う音が上空から響き渡る。コユリは心配そうに見上げながら瞳を動かす。 「ジェネラル、少し此処を離れるぞ」 「え、でも……」 「この距離だと巻き添いを食らう可能性が高いからな」 「わ、分かった」 リーツァモンはコユリを乗せて、その場から離れた場所まで移動する。その間にもリーツァモンの言った通り、地上に流れ弾や逸れた技が至る所に落ち、コユリは冷や汗を流した。 「リーツァモン、バアルモンはどんなデジモンなの?」 「バグラで雇われているデジモンだ。周りからは"死神"と呼ばれていたな」 「死神……」 「何か気になる事でもあるのか?」 「う、うん……。少しだけ……」 呟く様に言いながら、コユリは敵である筈のバアルモンを見た。 「聖なる光線(ホワイトレイ)!」 「ッ……!!」 ソリフィアモンの攻撃がバアルモンを直撃し、成す術無く真っ逆さまに地面へと落ちた。すぐさまソリフィアモンも地上に下り、立ち上がろうとするバアルモンの喉元に槍を構える。 「女神の(ベロナ)……」 「止めて!」 「ッ……!?」 「コユリ!」 コユリがソリフィアモンの手を取り、攻撃寸前だった槍を止めた。突然割り込んで来た彼女に、二人共も驚きを隠せないでいる。 「しかし……!」 「もういいの。……大丈夫?バアルモン」 「何故止めを刺さないッ……!」 「だって、貴方の目に私やソリフィアモンが映ってなかったから」 「私には言っている意味がよく分からないのだが……」 首を傾げるソリフィアモンに、コユリは根拠等無い、自らが直感で感じた事を語り出した。 「私には、バアルモンが私達を通り越してもっと別の物を見てる様に思えたの」 「ッ……、」 「私達を始末する事より、もっと大切な事がバアルモンにはあるんじゃないかと思って」 「お前は……、」 「所詮それはコユリの憶測だろう?」 「……憶測でも、一度そう考えちゃうとどうしても……」 「馬鹿みたいだよね」と、自分自身に対しての嘲笑を浮かべたコユリは、そのままソリフィアモンのデジクロスを解いた。 「ラティスモン、バアルモンの傷を治してあげて?」 「分かりました」 「俺は…敵だぞ……?情けをかけたところで、また命を狙われるかもしれないというのに……」 「幾ら私でも、良いデジモンと悪いデジモンの区別位つくよ?バアルモンは悪いデジモンには見えなかったから」 敵を目の前にしても尚、呑気に微笑みかけてくる眼前の少女に、バアルモンは呆気に取られた。というより度肝を抜かれたと言った方が合っているかもしれない。だがそれもそうだろう。 つい先程まで命を狙われていたというのに、その敵を心配し、更に傷の手当てまでしているのだから。全て当たっているとしても、それが唯の勘だけで行っている行為だとすれば尚更の事だ。 後ろでその様子を窺っていたヒョウルモン達は、呆れた表情を浮かべている。 「――…これで大丈夫な筈です」 「お疲れ様ラティスモン。バアルモン、動ける?」 「あ、ああ……」 「良かった!」 「……変わっているな」 「え?」 「お前の様な変わっている奴は初めてだ」 傷が完治したバアルモンは、スルリと立ち上がりながらコユリに言った。それに対し、彼女は「よく言われるの」と笑いながら返した。 「俺がお前達を狙う事はもう無いだろう」 「バアルモン……」 それだけ言って、彼女達の前からバアルモンは姿を消した。後ろのヒョウルモン達には聞こえなかったが、コユリの耳には確かに「済まなかった」という去り際の声が聞こえていた。 「……」 「いつかその甘さが命取りになるぞ、コユリ」 「!?……キリハ…くん、」 少女と死神の駆け引き ------(11/06/29)------ バアルモンの口調が迷子← 割と絡みが少ないし……。いつもの事ながら話もゴタゴタしていて申し訳ないです……(・ω・`) |