降り立った瞬間から容赦無く照り付ける陽の光に、コユリは眩しそうに目を細めた。



「……砂漠?」

「懐かしいの」

「ハクシンモンは此処に来た事があるの?」

「……昔の話じゃ」



ハクシンモンはいつもの様にコユリの肩に乗りながら、懐かしそうに辺りを見回す。



「コユリ!宝探しに行こうぜ!」

「うん!」

「ちょっと待ってタイキ。コユリさんはリーツァモンに乗って移動した方がいいんじゃない?」

「確かに、この砂漠は病み上がりの女神にはキツイかもな」

「私、皆が心配する程弱ってないよ!」

「変な意地張ってないで、今のうちに体力温存しとけ」

「ヒョウルモンまで……」


Xローダーの中から話を聞いていたリーツァモンが、場の空気を読んで勝手に出て来てた。

それにより、コユリはアカリとゼンジロウに背中を押され、やや強引にリーツァモンの背に乗せられた。

リーツァモンはメイルバードラモンと違って乗り易いらしく、初っ端からコユリが落ちるというアクシデントは無かった。



「落ちるなよ、ジェネラル」

「気をつけるね」



クロスハートとピュアグロウは宝探しと称して意気揚々と歩き始めた訳だが。いくら歩けども砂漠にピラミッドという景色が変わる事は無く、宝の「た」の字すら見当たらない。

それでも照り付ける太陽の元をただひたすら歩き続け、遂には砂漠のど真ん中で立ち止まってしまった。



「死ぬ……」

「もうダメ……」

「皆大丈夫……?」

「これが大丈夫に見えるかよ……」

「ごめんね、シャウトモン」



リーツァモンの背から平気そうに声をかけるコユリであったが、彼女もまた、灼熱の太陽によって知らぬ間に体力を奪われていた。

その時、バリスタモンがオアシスを発見し、シャウトモンが死に物狂いで走って行った。そんなシャウトモンを追い掛け、タイキ達も必死で走る。



「シャウトモン速い……」

「妾(わらわ)とリーツァモンであれば、水を作り出す事等造作無いものよ」

「それを早く言って!」

「誰にも聞かれなかったからの」



今更過ぎる会話がリーツァモンの背の上で行われている間に、クロスハートはスコピオモンの罠に嵌まってしまった。リーツァモンはクロスハートの後ろをゆっくり飛んでいた為、難を逃れた。



「ッ……皆!リーツァモン、スコピオモンに攻撃して!」

「それでは、赤のジェネラル達にまで当たってしまうぞ」

「そんな……!」



コユリが急いでヒョウルモンをリロードしようとした時、閃いたタイキがドルルモンの力を借りて地下へと逃げた。



「っ……」

「あやつらの事じゃ。心配せんでも大丈夫じゃろう」

「……だと、良いんだけど」



クロスハートの消えていった地面を、コユリは心配そうに見つめる。



「ッ来るぞ!」

「え?……きゃあっ!」



突如鼓膜を劈(つんざ)く様な銃声が辺りに鳴り響いた。誰よりも早く殺気に気が付いたリーツァモンは更に上へと舞い上がり、銃弾はリーツァモンの装甲を掠めるだけに留まった。突然の銃撃に、コユリは今だに状況が飲み込めていない。



「敵……?!」

「コユリ、ボサッとしてんな!リロードしろ!」



戦えるのがよっぽど嬉しいのか、Xローダーの中からヒョウルモンの愉快そうな声が聞こえてきた。

コユリがXローダーを構えながら銃弾が飛んできた方向を見ると、宙に浮く逆さまのピラミッドの上に、一体のデジモンが立っていた。初めて見るデジモンだった。生温い風が吹き、デジモンのマントと、コユリの銀髪が緩やかに靡(なび)く。



「………」

「………?」



そのデジモンと目が合った(様にコユリには思えた)直後、一度は止まった攻撃がまた始まった。

リーツァモンは両翼を羽搏(はばた)かせ、器用に避けていく。操られていたとは言え、流石元バグラ軍と言った所か。その間にも隙を見付け、コユリはヒョウルモン達をリロードする。



「厄介な相手だね」

「その方が燃えません?」

「ラティスモンの言う通りだぜ。コユリ、デジクロスだ!」

「う、うん。ピュアグロウ……デジクロス!」



Xローダーが光輝き、ヒョウルモン達はソリフィアモンへと姿を変えた。



「リーツァモン、コユリを頼んだ!」

「ああ、任せろ!」

「気をつけて、ソリフィアモン!」







砂漠に咲いた華




------(11/06/17)------
いつにも増して更新が遅くてすみません……(;ω;)暫く?はタイキ達とは別行動です。リーツァモンはコグロモンとデジクロスかな……。





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