バグラ軍と戦っていたコユリとキリハは、突然現れたネネからマグマゾーンにいるタイキが処刑される事を聞かされた。すぐにでもタイキを助けに行こうとしたコユリだったが、キリハに止められてしまった。

ネネの情報によれば、マグマゾーンにはバグラ軍三元士の一人タクティモンがいるらしい。隙をつかれてコユリが怪我でもすれば足手纏いになり面倒だと言い放ち、キリハは一人でマグマゾーンに行ってしまった。

彼が戻って来るまでコユリはネネと一緒にいる事に。先程まで戦っていたバグラ軍は何処かへ逃げてしまった為、周囲は静かだ。コユリは岩に腰掛け、その後ろでネネが彼女の髪を梳(と)いている。そんな中、コユリはキリハに置いていかれた事がショックのようで溜め息をひとつ。


「私、そんなに弱いかな……」

「コユリは弱くないわ」

「じゃあ何で……!」

「キリハ君はコユリが大切だからじゃないかしら?」

「……大、切?」


コユリは呟くように復唱する。


「彼は、コユリにもしもの事があってはならないと思ったから残したのだと思うわ。それに考えてもみなさい。あのキリハ君が大切でもない子を傍に置くかしら?」

「キリハくん、優しいし……」

「でも彼、私には冷たいわよ」

「えっ?」


その言葉に驚いて振り向くと、紅が紫の視線と絡み、ネネはクスリと笑った。


「声のトーンも表情も、コユリと私じゃ全く違うわ。気付かなかった?」

「う、うん……」

「あんなに丸いキリハ君、コユリの前でしか見た事ないわね。あ、少し前向いて」


ネネに言われ、コユリはまた前を向く。すると彼女は何処からか取出した黒のリボンでコユリの髪を結び始めた。


「そうなの……?」

「そうよ。端から見ればコユリは十分大切にされてると思うわ」

「大切……、」


ネネの言葉にコユリは何だか嬉しくなり、口許を密かに綻(ほころ)ばせた。その時、ネネはある話題を切り出した。


「ねえ、コユリ」

「なに?ネネちゃん」

「私と一緒に来ない?」

「…えっ……?」


突然の誘いにコユリは呆気に取られており、ネネは饒舌に勧誘を続ける。


「絶対に貴女を危険な目に合わせたりしないわ。一人にする事もないし……どうかしら?」

「わ、私……、」


コユリは何て返してよいか分からずに言葉を濁らせる。その間にネネは彼女の髪を結び終えた。白銀は両サイドの高い位置で結ばれており、所謂ツインテールだ。しかしコユリは内心パニックに陥(おちい)っている為、自分の髪型など気にしていられない。ネネは何としてでもコユリを引き入れようとしており、後ろから彼女の首に腕を絡めて抱き着いた。


「キリハ君より私の方がいいと思うけど……?」

「っ……私…は、」

「何をしている」


聞き覚えのある声にネネはコユリから離れて振り向いた。それに釣られてコユリも振り向けば結んだ髪が揺れる。


「キリハくん!」

「あら、予想よりお早いお帰りね」


マグマゾーンに行っていたキリハが戻って来たのだ。ネネがコユリに抱き着いていたのが相当気に入らないらしく、いつも以上に眉間に皴が寄っている。


「何をしていると聞いてるんだ」

「それは、」

「キリハ君には言えないこと」


クスリと笑ったネネが気に入らないようで、キリハは更に顔を顰(しか)めた。そのままブーツを鳴らしながらコユリの元に寄り、彼女の腕を引いてネネから距離を置く。


「き、キリハくん……?」

「無事か?」

「う、うん」

「私と居たんだもの。無事に決まってるじゃない」

「俺は君に何かされたのかと聞いているんだ」


コユリを挟んでキリハとネネは睨み合っており、それに対しコユリはあたふたしながら二人を交互に見る。


「ふ、二人共……!」


彼女の声に二人はハッと我に返った。キリハは小さく舌打ちをしてからコユリと共にメイルバードラモンへと乗った。


「まだコユリに話があったんだけど?」

「知るか、そんな事」


冷たく言い放ったキリハはメイルバードラモンに指示して宙へ飛ぶ。その時コユリはギリギリまで身体を乗り出してネネに言った。


「ネネちゃん!私っ…やっぱりネネちゃんとは一緒に行けない。ごめんねっ……、」

「…そう、残念だわ」

「コユリ、行くぞ」


キリハは身体を乗り出しているコユリを自身の方に抱き寄せて言った。

次のゾーンへと向かうコユリとキリハを見送ったネネ。彼女の持つクロスローダーから声がする。


「“白の君”は断ったようだね」

「……」

「キミが誰を選ぶか楽しみだよ、ネネ」

「っ……、」




白と黒は混じわらない



------(11/04/18)------
今回のネネ様は漫画版に近い?饒舌キャラになってしまった……。自称貴族←の口調も良く分からない(´Д`)

12/09/19:加筆修正済み





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