アイランドゾーンから新たなゾーンに降り立ったコユリ達。このゾーンはバグラ軍の侵略が進んでおらず、まだ平和なままだ。自然溢れるこのゾーンを見て歩きたいコユリだが、キリハに迷惑がかかってしまうと思い、その場に止(とど)まってそわそわしている。そんな彼女の様子に気が付いたキリハが口を開いた。


「見てきたらどうだ」

「えっ?でも、キリハくんに迷惑が……」

「いや、別に構わない」


その言葉に、コユリの表情が一段と明るくなった。


「やった!」

「絶対に転ぶなよ」

「大丈夫だよ。行ってきま……ふあっ!」


言ってる傍からコユリが脚を引っ掛けて転び、キリハは溜息を吐いた。


「大丈夫か?」


コユリは照れた様に笑いながらキリハから差し延べられた手を取って立ち上がる。


「気を取り直して、行って来るね」

「足元と背後に気をつけろよ」

「うん、行ってきますっ!」


コユリはヒョウルモンとシキアモンをリロードし、軽やかな足取りで草原を駈けて行った。草原を横切り、川沿いに森を進んでいく。川のせせらぎをBGMに辺りを見回せば、デジモン達が幸せそうに暮らしていた。


「平和なゾーンだね」

「ここは比較的端の方にあるゾーンだからな。バグラ軍の進攻が遅れてんだろうよ」

「じゃが、コードクラウンを確保しなければいずれこのゾーンもバグラ軍の手に堕ちるじゃろう」

「っ……!」

「まあ今頃“青”がコードクラウンを探している頃じゃろうから、コユリは心配せんで良い」

「そうだ、今日は休みだと思え」


そんな会話をしながら進んでいると、前方から見覚えのある顔触れが歩いて来ている。それに逸早く気が付いたコユリは、大きく手を振った。


「タイキくーんっ!」

「コユリ!」


前方から歩いて来ていたのはタイキ率いるクロスハート。見た所シャウトモン達とは別行動の様だ。


「タイキくん達もこのゾーンに来てたんだね」

「ああ!まさかコユリに会えるなんて思ってなかったよ」


微笑ましく笑いあう二人を気に入らない人物が一人いた。


「ストーップ!」

「ゼンジロウ、どうした?」


ゼンジロウだ。いきなり声を上げたと思えばタイキの腕を引き、彼にしか聞こえないように小声で言った。


「お前だけ女神と話すなんてズルイぞ、工藤タイキ!」

「女神……?話したいなら話せばいいじゃないか」

「簡単に言いやがって!あんな神々しい子とどうやって話せって言うんだよ!」


タイキとゼンジロウがそんな会話をしている最中、アカリはコユリに話し掛けていた。


「コユリさん、この前はありがとうございました!」

「気にしないで。困った時はお互い様でしょ?」

「優しいんですね、コユリさんって」

「そんな事ないよ」


(…凄く謙虚な人なんだな……)

そう言って笑うコユリに、アカリは瞬時に思った。


「コユリさん!」

「どうしたの?ゼンジロウくん」

「つ、強い男は好きですか?!」

「え?」

「コユリさんに何聞いてんのよ!」


ゼンジロウの唐突過ぎる質問に、コユリは呆気に取られたが、すぐに答えた。


「好きだよ」

「本当ですか?!」

「でも、優しい人はもっと好きかな」


ニッコリと笑顔で続けたコユリに、ゼンジロウは又しても見惚れている。そんなゼンジロウを横目に、タイキは疑問に思っていた事をコユリにぶつけた。


「なあ、コユリはなんでキリハと一緒にいるんだ?」

「…キリハくんは、私の事を助けてくれたから」

「キリハが…コユリを?」

「うん。この世界に来て直ぐにバグラ軍に襲われて、その時にキリハくんが助けてくれたの。そしたら「一緒に来るか?」って言ってくれて……だからキリハくんと一緒にいるんだよ」


微笑むコユリにタイキは安心した。タイキは、キリハが強引にコユリを連れ歩いていると思ったからだ。もしそうであれば、絶対にコユリを助けなければ、とまで考えていた。

その時、コユリ達に影が落ちた。頭上を見上げれば見覚えのある青いデジモンが飛んでいる。


「キリハくん!」

「キリハ!」

「なんだ。タイキ、お前も来ていたのか」


メイルバードラモンはコユリの所まで降りた。その背にはバランス良くキリハが乗っている。


「コユリ、そろそろ行くぞ」

「うん。またね、タイキくん、アカリちゃん、ゼンジロウくん」


コユリはキリハに引き上げられ、メイルバードラモンに乗った。突然現れたキリハに呆気に取られているタイキ達に、コユリは笑顔で手を振る。タイキはまだキリハを警戒している様だが、アカリは手を振り返し、ゼンジロウも惚れ惚れした表情で手を振っている。

それらから来る嫉妬か、キリハはタイキを一睨みし、メイルバードラモンに次のゾーンに行く様に指示した。青空を切る様に飛ぶ中、コユリは靡(なび)く髪を抑えながら口を開いた。


「キリハくん、コードクラウンは?」

「コードクラウンなら既に手に入れた」


そう言ってキリハは持っていたコードクラウンを見せる。


「でもどうやって……」

「此処の長老は話が分かる奴だったからな。話し合いの結果だ」

「なら良かった」


力づくじゃないと知り、コユリはほっと胸を撫で下ろす。するとキリハは、彼女にそのコードクラウンを渡した。


「これはお前が持っていろ」

「でもこれは……!」

「俺がいいと言ってるんだ」


そう言って強引にコードクラウンを持たせたキリハ。彼女は何故キリハがコードクラウンを渡してきたか全く見当もつかなかった。だが、きっとキリハにも何か考えがあっての事だろうと思い、コユリは笑顔で礼を言った。


「キリハくん、ありがとう」

「フンッ……」




個々の心中はいかに?



------(11/04/14)------
取り合えずタイキ達と絡ませたかったんですが、何だか纏まりの無い話になってしまいました(・ω・`) 何でキリハがコードクラウンを渡したかって?私にも分からな((蹴

12/07/27:加筆修正済み





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