グリンゾーンに来て二日目の朝を迎えた。コユリは頭上で手を組み、ぐっと背伸びをして眠気を覚ます。その横でヒョウルモン達も朝日を浴びながら同じ様に伸びをしている。彼女が伸びをした際ワンピースが少し上がり、真っ白な脇腹がチラリと見えた。後ろにいたキリハがそれに頬を赤くしたのは言うまでもなく。

そんな事など露知らず、コユリは丸太に腰掛けてヒョウルモンとハクシンモンの毛並みを整えていく。そんな時風を切る微かな音が聞こえ、視線を上げるとコグルモンがこちらに向かって飛んで来た。立ち上がって左腕を伸ばすと、コグルモンは鋭い爪で彼女の腕を傷付けない様に静かに腕に停まった。


「お帰りなさい」

「タダイマ、情報盛リ沢山」

「ありがとう、お疲れ様」


コユリがコグルモンの頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。


「――……赤ノジェネラル"工藤タイキ"。天賦ノカリスマ性ヲ持ツ子供」

「工藤タイキ……か、」

「昨日は凄かったね」

「ああ……。コユリ、」

「何?」

「工藤タイキを俺の片腕にしようと思う。お前の意見が聞きたい」

「タイキくんを、片腕に……」


赤のジェネラル、工藤タイキの戦いを見て、キリハはこの一晩考えていた。タイキはまだ弱い。だがいずれ強くなると考え、自身の片腕にと思ったのだ。だがそれをコユリが受け入れてくれるか、柄にも無く心配だった。そしてそれを今彼女に打ち明けたのだ。コユリの表情に一瞬影が差したが、すぐに笑顔を見せた。


「キリハくんが決めた事なら私は反対しないよ」

「コユリ、」

「でも、タイキくんは断ると思うな」

「……何故そう思う」

「昨日のタイキくんを見て思ったの。キリハくんとタイキくんは正反対の性格だって」


彼女の言葉にキリハは僅かながら眉間に皴を寄せた。


「対照的って言った方が正しいのかもしれないけど……」

「……そうか、分かった」


キリハはそれだけ言うと待機させていたメイルバードラモンの背に乗る。コユリも急いでコグルモンとハクシンモン以外をクロスローダーに戻して自身も背に乗った。


「タイキの所へ行く」

「承諾してくれるかな……」

「絶対に首を縦に振らせてみせるさ」


キリハのその言葉に、メイルバードラモンは微笑みの里へと飛び立つ。その途中、コグルモンは集めて来たもう2人の情報を読み上げていく。


「アカリちゃんにゼンジロウくん……。仲良くしたいな、」

「……む、」


コグルモンのデジクロスを解き、コグロモンをクロスローダーに戻す。その時ハクシンモンの耳がピクリと動き、千里眼を開眼させた。


「バグラ軍が動き出したようじゃの。全く、懲りぬ奴らじゃ」

「何処にいる」

「……微笑みの里に向かっておるのお」

「っ早くしないと……!」


メイルバードラモンは更にスピードを上げた。微笑みの里に近付いて行くと、地面からなにやら巨大な植物の様なモノが沢山生えている。それらを見ながらコユリ達はかなり高さのある建物の屋上へと降り立った。キリハは一旦メイルバードラモンを戻す。


「……筍?」

「バグラ軍の雑兵が地下に潜ってエネルギーを発している所為じゃな、これは」

「……」


巨大な植物、筍だ。タイキ達はその先端に掴まって降りられなくなっているゼンジロウを助けようとしていた。


「どうすんだよ、タイキ」

「登る!」

「だよなー、それっきゃねえ!」

「そんな事をしている暇は無いと思うぞ」


キリハの声に全員が上を見上げた。


「あっ!に、人間!」

「お前達、誰だ!」

「蒼沼キリハ」

「私は凛堂コユリ、宜しくね」


キリハはメイルバードラモンをリロードさせ、それにタイキ達は驚きを隠せないでいる。


「青いクロスローダー……?!」

「この男が噂の人間ッ……」

「ねえ貴方達、キリハ君コユリさん、貴方達も人間の世界から来たんでしょ?帰る方法知ってる?」


アカリの問い掛けに一度は視線を移したキリハだったが、その視線はすぐにタイキへと向いた。その為、コユリが慌てて答えた。


「ごめんね、私達も良く分からないの」

「そう……」


彼女の答えにアカリは残念そうに肩を落とした。


「俺がこのメイルバードラモンでお前を助けてやろう」

「……」


タイキに向けられたその言葉。タイキは少し考えてから踵(きびす)を返し、ゼンジロウがいる筍へと歩いて行く。


「待て、どうした」

「……助けはいらないよ!お前は人助けをする人間に見えない!」


自力で筍に登ろうとしながらタイキが放った言葉に、コユリは反論しようとしたがキリハに止められてしまった。


「でもっ……!」

「いや、いい」


コユリはタイキにその発言を撤回して欲しかった。しかしキリハは1度コユリと視線を合わせ、彼女にだけ聞こえる様に言った。


「鋭いな、ますます気に入った。助けてやる見返りは一つだ、俺の片腕になれタイキ」

「……」


アカリ達はキリハの発言に驚きながら視線をタイキへと移した。しかしタイキは何も言わない。


「それが生きる条件だ、断れば死ぬ。これから攻めてくる、バグラ軍の手によってな!」

「ッな、何だって!?」




渦中で交わる対色視線



------(11/04/06)------
だ、ダメだ……キリハの性格が定まらない(・ω・`) 本当はこの1話で収めたかったんですけど、余りに長くなったので、また2話に分けました´`

12/07/26:加筆修正済み





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