綺麗な石畳の道には、陽の光に当たりキラキラ光る水溜まりがあちらこちらにある。他のゾーンに移動する為、コユリとキリハはその石畳に立っていた。陽が昇ってまだ間もないにも関わらず街の住人達が二人を見送りに来ている。


「もう行かれるのですか?」

「ごめんね、困ってるデジモン達がまだ沢山いると思うから」


淋しそうに言うラブラモンにコユリは申し訳なさそうに眉尻を下げながら話し、キリハは早く行きたそうにしている。


「もう行ってもいいか?」

「あ、ごめんっ」


オルドゾーンのコードクラウンを持っているコユリがクロスローダーでゲートを開く。


「あ、あの!」

「どうしたの?」


ある一体のデジモンに呼び止められ、コユリとキリハは脚を止めて振り返る。


「お二人の軍の名前を教えて下さい!」

「ブルーフレア」

「私達は……、」


興味がなさそうに名乗るキリハの横でコユリは言葉を詰まらせた。まさか軍名を聞かれるとは思っておらず、何も考えていなかったからだ。そしてコユリは少し考えてからまた口を開いた。


「私達は……ピュアグロウ」

「ブルーフレアとピュアグロウ……。一生忘れません!」

「大袈裟だよ」


目を輝かせるデジモンにコユリは笑いながらそう言った。


「…良いんじゃないか」

「っキリハくん……」


キリハがそんな事を言うとは思っておらず、コユリは驚いた表情で振り返った。しかし依然としてキリハは外方(そっぽ)を向いている。


「どうした」

「う、ううん。ありがとう」


微笑むコユリだが、キリハは訳が分からず小さく首を傾げた。


「皆、またね!」

「「有難うございました!」」


最後まで笑顔で住民達に手を振るコユリとは対照的に、キリハは素っ気なくゲートを潜(くぐ)った。遠くに見える出口を目指し、データの道を進んでいく。


「ねえ……キリハくん」

「なんだ」

「昨日はごめんね、」


昨日とはキリハの部屋に行った事を指している。朝からコユリはその事を謝っている。キリハは別段気にしていないのだが、彼女は気にしている様で。


「気にしていない」

「でもっ……」


コユリが伏せていた視線を上げると、キリハが目の前にいた。


「キリハ、くん……?」

「本当だ。だからもう謝るな」

「う…うん、」


コユリは感覚的に「雰囲気が少し違う」と思った。だが何処が違うのかよく分からず、首を傾げるのはコユリの番となった。それから二人の間に沈黙が続く。出口が間近に迫った時、キリハは沈黙を破った。


「コユリ」

「えっ…?あ、どうしたの?」

「連れ去られる様な面倒事に巻き込まれるなよ」


キリハはぶっきら棒にそう言った。「気をつけろ」と言いたかったらしいのだが、口から吐き出されたのはそんな言葉。しかし“蒼沼キリハ”という男を分かりかけてきたコユリには、キリハの言いたい事が何となく分かった。


「うん、もう迷惑かけないようにするから」


コユリがそう言った瞬間出口に着き、二人は新たなゾーンの土を踏み締めた。


「……わあっ、」


彼女の口から無意識の内に零れた言葉。目の前に広がる光景に目を奪われた。初めて見る、何処までも広がる綺麗な緑の草原。


「此処は……?」

「グリンゾーンだな」

「綺麗な所だね」

「綺麗だが、平和ではないようだ」

「えっ……?」


コユリがキリハの視線を辿ると、そこにはバグラ軍の兵士であるマンモンやプテラノモン、トループモン達がいた。「バグラ軍」と言う単語に反応し、白のクロスローダーからヒョウルモンとハクシンモンが、青のクロスローダーからはメイルバードラモンとグレイモンが出て来た。


「っバグラ軍……!」

「それだけじゃないみたいだぜ、コユリ」

「……子供じゃの、」

「子供?」

「俺達と同じジェネラルか……」


ハクシンモンとキリハの言葉に、コユリは目を凝らしてバグラ軍の方を見る。そこにはマッドレオモンと、三人の子供がいた。子供達はマッドレオモンに追い詰められており、コユリは「助けなきゃ」と呟いてその場に向かおうとした。しかし、キリハが彼女の右腕を掴んだ。


「行くな」

「でもっ……!」

「まあ見ていろ」

「…?」


そう言われてはどうする事も出来ず、コユリは大人しくキリハの隣で子供達の様子を覗(うかが)う。すると突如現れたデジモンが子供達を助け、更にゴーグルの少年は赤のクロスローダーを取り出してデジクロスしたのだ。


「凄いっ……」

「あの小僧、センスあるな」


ヒョウルモンが感心する程の戦いのセンスを持つ赤の少年に、コユリは釘付けになっていた。それは己には無い“センス”を持っているからなのだろう。その時キリハはゴーグルの少年の力が欲しいと思った。それと同時に心の隅で少年に対する嫉妬を覚えた。コユリの視線を独り占めする、その少年に。

デジクロスしたそのデジモンは、マンモン達を吸収したアームドマッドレオモンをいとも簡単に倒してしまった。それによりマッドレオモン率いるバグラ軍は一時撤退した様だ。


「奴ら、また来るぞ」

「うん、そうだね……」




迷い込んだ新参者たち



------(11/04/04)------
軍名は、ruriha様の「ピュアグロウ」に決定致しました!ruriha様、応募有難うございました!そして、素敵過ぎる軍名を応募して下さった皆様、本当に有難うございました! 第2期始まりましたが、やっとアニメ沿いです´`;なるべく早めに更新していくつもりなので、生暖かい目で見守ってやって下さい← それから、グリンゾーンで合ってますかね?(・ω・`) 一応wikiで調べたんですけど、自信無くて……

12/07/25:加筆修正済み





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