雨粒が窓を叩く。まだ雷鳴が辺り一帯に轟き、その度にコユリは身体を縮こませる。一つのベッドに背中合わせで横になる二人。だが然程狭さは感じない。お互い肌で相手の気配を感じる。コユリはそれに安心感を覚えるが、キリハは今までにない胸の高鳴りに戸惑いを隠せない。騒がしいそれをどうにか抑えようと全く別の事を考え出す。ブルーフレアの戦力拡大、戦略。軍事的な事を考え、気を紛らわせる。その時、今までで一番大きな雷鳴が鳴り響いた。


「ッ……!?」

「近いな、落ちたんじゃないか?」

「お、落ちた……?」


コユリの声が震える。キリハは「言わない方がよかったか……」と内心後悔した。するとコユリは寝返りを打ち、思い切りキリハの背にしがみついた。


「っコユリ……?!」

「ご、ごめっ……。本当に……怖くて、」


ベストを握っている手が震えているのがキリハには分かった。落ち着かせる為に頭を撫でる位の事はした方がいいのだろうが、今のキリハにそんな度胸は無い。二人の間に沈黙が続く。雨音が大きくなった気がした。

どうしたら良いのか、キリハの中で自問自答が繰り返される。それが長時間続き、雷鳴は遠くから聞こえてくる様になった。暫(しばら)くして、キリハの背後から静かで規則正しい寝息が聞こえてきた。


「……コユリ?」


キリハがコユリに声をかけるも返事は無い。高鳴る鼓動を抑えながら、キリハは彼女を起こさない様に静かに寝返りを打つ。


「っ……、」


息を呑む音がした。蒼の瞳に飛び込んできたのは、コユリの寝顔。余り彼女の顔を直視した事がなかったが綺麗な顔立ちをしていると素で思った。上質な絹糸のような白銀の髪に手を伸ばす。躊躇いながらも髪に触れて梳(す)いてみる。すると指の間をスルリと擦り抜けていく。

キリハ自身、なんでこんな事をしているのか分からなかった。ただ、コユリが気になって仕方が無いのだ。気が付けば揺れる白銀の髪を目で追い掛け、脳裏には彼女の笑顔が思い上がる。濁りの無い透き通る様な瞳で見つめられる度、綺麗なソプラノの声で名前を呼ばれる度、あの純真無垢な笑顔を向けられる度、心臓が高鳴り、それと同時に痛い程締め付けられる。

そこまで考えて、キリハは漸(ようや)く分かった。

(……俺は、コユリが好きなんだ…)

そう考えれば全て辻褄が合うからだ。あの胸の高鳴りも、締め付けも、無意識にコユリを考えてしまう事も。そう分かると何が原因なのか悩まなくて済むからなのか、少しだけ胸が軽くなった。

コユリの髪を梳きながら、やっと気が付いた自分の思いを呟いた。


「……好きだ、」


当然深い眠りにつくコユリはこの呟きを知らない。この事を知っているのはキリハ本人と、クロスローダーの中で静かに二人の様子を窺っていたメイルバードラモンだけだ。




複雑思考回路少年の恋



------(11/04/02)------
純情が書けないorz もっと精進しなくては(・ω・´) 次の話で白軍の軍名を出そうと思います(´ω`) ですが、まだまだ軍名募集中なので、是非拍手・メールまでお願いします!

12/07/24:加筆修正済み





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -