オルドゾーンにもこれで平和が戻った。デクリアモンを倒したコユリとキリハは住人達から深く感謝されている。 「有難うございます!皆無事に帰って来ました!」 「良かったね、ラブラモン」 「はい!」 二人は休む暇も無く次のゾーンに移動しようとしたが、住人達が感謝の気持ちを込めて祭を催すと言う。一晩でいいから泊まっていってくれと懇願され、二人はラブラモンの家で一泊する事になった。 陽も暮れ、街灯の温かな灯火が夜闇に揺らめく。街の中心部では住人達が集まり祭を始めている。祭と言っても思い思いに踊り、歌うだけだが住人達はとても楽しそうだ。そんなデジモン達にコユリは囲まれていた。 「コユリサマー」 「はいはい!」 「コユリ様!こっちにも来て下さい!」 「はーいっ!」 住人達に引っ張り凧(だこ)になっているコユリを、ハクシンモンとシキアモンは遠目から眺めていた。 「コユリはほんに人気じゃのう」 「本当だね」 その横でヒョウルモンはデジノアにがっついており、品の無い姿にシキアモンは頭を抱えながら溜息を吐いた。 シキアモン達と同じ様にコユリを遠目から眺めている人物がいた。今回の戦いの立て役者とも言えるキリハである。キリハは今晩泊まる部屋の窓から祭を眺めていた。無意識の内に流れるような白銀の髪を追い掛ける。しかしそれは無意識の事で、また別の事を考えている。 自分の目指す世界は、強者のみの世界。DWに来てからそれを実現させる為に今までやってきた。しかし、コユリと行動を共にしてからは自分の目的を見失っている様な気がしてならないのだ。彼女のペースに飲み込まれている自分がいる。だが苦ではないのだ。それとは逆に心地好さまで感じてくる。何故そう感じるのか、何故コユリなのか、今のキリハには見当もつかなかった。 窓を叩く水により彼の意識は呼び戻された。 「……雨か、」 ポツリと呟くキリハ。 そう、雨だ。ぽつぽつと降り始めた雨は次第に激しさを増す。外からは突然の雨に急いで家の中に戻っていくデジモン達の声がする。 コユリも例外では無く。急いでクロスローダーにヒョウルモン達を戻し、自分もラブラモンの家に駆け込んだ。 「こんな時に雨なんて……」 「恵みの雨ですから、嬉しい事なんですよ」 「恵みの、雨……」 「そうです。それに、最近は雨が降らなかったので」 そう言いながらラブラモンはコユリにタオルを手渡した。コユリはラブラモンに礼を言い、渡されたタオルで濡れた髪を拭く。 そのままラブラモンに二階の空き室に案内されたコユリ。そこは隅々まで掃除がされている綺麗な部屋だ。コユリが何度も礼を言うと、ラブラモンは「遠慮せずに使って下さい」と言って一階に降りて行った。 彼女は一息吐いてクロスローダーを机の上に置き、久々のベッドに感激しながら横になった。疲れもピークに達しており、今夜はすぐに眠りにつけると思いゆっくりと瞼(まぶた)を閉じる。 だが遠くの方から聞こえてくる鈍く重い音に肩がビクッと跳ねた。耳を澄ませば自分の大嫌いな音が近付いてくるのが分かった。 「どうした?」 「な、なんでもない……」 そんなコユリの変化に気付いたヒョウルモンが声をかけるも彼女はそう応えた。そう言われては何も言えない為、ヒョウルモンはまた眠りにつく。コユリが外を恐る恐る見ると、激しく雨が降っていた。暗闇の奥で見えた一筋の閃光に、少し躊躇いがちに部屋を出た。 まるで恋愛小説の如く ------(11/03/31)------ 次はちゃんとしたキリハ夢になると思います。……多分← このゾーンを抜けたらアニメ沿いにしようと思います´∀` 12/07/24:加筆修正済み |