デクリアモンは龍の姿を一度解き、影となって大広間に拡がっていく。床を伝い、コユリ達に襲い掛かる。キリハはコユリの手を掴み、メイルバードラモンの背に乗って影を避けていく。


「コユリ、絶対に落ちるなよ」

「わ、分かった……」


今更ながら初めてメイルバードラモンに乗り、その高さに僅かながら恐怖心が芽生え、無意識の内にキリハのジャケットを握る。


「っ……!」

「キリハくん?」

「何でもないっ……、」

「?」


ジャケットを握られている事に気付いたキリハの耳は気恥ずかしさからほんのり赤く染まった。敵の前で何を考えているんだと自分に言い聞かせる。

デクリアモンはまた影を集め、今度は先程よりも更に巨大な姿に変わろうとしていた。その瞬間をキリハは見逃さなかった。


「メイルバードラモン、プラズマキャノン!」


メイルバードラモンは指示通りにプラズマキャノンを変化途中のデクリアモンに繰り出す。それが影を裂き、影の隙間から核が垣間見えた。


「ソリフィアモン!女神の制裁(ベロナスクーレ)!」


待機していたソリフィアモンが一気に間合いを詰め、純白の槍でデクリアモンの核を突いた。そこから罅(ひび)が入り、内側から核が弾けた。


「お、おのれっ……!……絶対に殺してや……」


憎悪渦巻く言葉を残し、デクリアモンは粒子となり消えていった。その光景にコユリは息を呑む。


「っ……」

「奴は“悪”だ。お前の望む世界には必要のないものじゃないのか?」

「そう…だね。でも私は……全てを救いたい」

「そう思うのなら強くなれ」

「…うん、」


デクリアモンは倒すべき敵。しかし優し過ぎるコユリには罪悪感が残っており、キリハにはそれが分かっていた。


「コユリ!」

「皆大丈夫だった?怪我はない?」

「大丈夫だよ。コユリは心配性だね」

「それが主(あるじ)の良いところですわ」

「その通りじゃ」


デジクロスが解けたシキアモン達はコユリの元に駆け寄った。しかし、表情の暗いヒョウルモンは一人後ろの方で脚が止まっている。


「ヒョウルモン」

「っ……コユリ、」

「ヒョウルモンはデクリアモンとは違うよ」

「……!」

「だって、罪を悔いて心を入れ替えたんだもん。そこが一番の違いだよ」


ヒョウルモンの瞳には、自分の全てを受け入れてニッコリと笑うコユリが聖母のように映った。


「俺は……俺は此処にいていいのか?」

「全く、何言ってんだか」

「主の右腕は貴方ですよ?」

「馬鹿な事を申すな」

「これからも宜しくね、ヒョウルモン!」


そう言ってコユリはヒョウルモンに抱き着いた。ヒョウルモンは目頭が熱くなるのを感じたが、プライドから決して涙を見せなかった。


「コユリ!」

「なに?キリハくっ……!」


キリハに呼ばれてコユリが振り向くと、黄色に輝く何かが自分の元へ飛んで来た。急いで両手を伸ばし、それをギリギリで受け止めた。見てみるとそれはこのゾーンのコードクラウンで。


「それはお前が持っていろ」

「でもっ……!」

「俺は何もしていないからな」


腕を組んで外方(そっぽ)向くキリハ。「素直じゃないな」とメイルバードラモンは後ろで溜息を吐いた。


「コユリ、見て」

「えっ?……街のデジモン達が……!」


大広間に次々と姿を現していくデジモン。それはデクリアモンに吸収されてしまったこのゾーンの住人達だ。奴を倒した事により、無事に戻ってきたのだ。コユリはホッと胸を撫で下ろす。


「良かった……」

「これでこのゾーンも平和になったな」

「そうだね。ねえ、キリハ君」

「なんだ?」

「助けてくれてありがとうっ」




切り裂き煌めいた閃光



------(11/03/30)------
デクリアモンが弱いんじゃないんです!ソリフィアモンが強すぎるだけなんです!← 次の話?はキリハ贔屓で書こうと思ってます´ω`

12/07/24:加筆修正済み





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