コユリは少し震える手でクロスローダーを構える。しかし戦闘体勢に入った敵は中々デジクロスする隙を与えてくれない。四方八方から影が襲いかかり、コユリ達は息を切らして避けるだけ。 「先までの威勢は何処へいった!」 「チッ……ムカつく!」 影を避ける為に宙に跳んだシキアモンは、その態勢のまま白鴉(はくあ)を振り翳(かざ)した。 「白刹(ハクセツ)!!」 白の閃光がデクリアモンを照らし、切り裂いた。その瞬間デクリアモンの影が飛び散った。その一瞬のチャンスをヒョウルモンは見過ごさなかった。 「コユリ!今だ!」 「っヒョウルモン!シキアモン!ラティスモン!ハクシンモン!……デジクロスッ!!」 コユリの持つ純白のクロスローダーが白く輝き、ヒョウルモン達は白の光に包まれた。その間にデクリアモンは散らばった影を集め、また元の形へと戻る。 「私とした事が……」 デジクロスの暇を与えてしまったとデクリアモンが悔しそうに唸る声がコユリの耳に届いた。 白の光が消え、そこには純白の鎧を纏った女騎士のようなデジモンが圧倒的な存在感を放っていた。鎧から流れるように伸びる漆黒の長髪は鎧の純白を更に引き立てる。黒髪の中にメデューサの如く白蛇が数匹生え蠢く。腰に太刀、反対には弓。そして手には槍が握られており、他にも武器が装備されている。 戦いを嫌うコユリとは正反対の姿だが、それはヒョウルモンとシキアモンの闘志の現れか、それとも彼女を護ると言う意思なのかもしれない。 「……ソリフィア、モン?」 目の前のデジモンの名前が分からず、手元のクロスローダーに視線を落とすと画面にそう表示されており、口に出してみた。するとソリフィアモンは振り向き、そして微笑んだ。鎧で顔半分が隠れ表情は上手く読み取れない。 「弱者が合わさった所で弱者に変わりはない!!」 デクリアモンの影が所有(あらゆる)方向からソリフィアモンを襲う。しかしハクシンモンの千里眼とヒョウルモンの白蛇が合わさったソリフィアモンの敵ではなくは、まるで舞っているかの如く軽々と避けていく。ソリフィアモンは凄まじい速さで間合いを詰める。余りの速さにデクリアモンの目には鎧を縁取る赤と、髪の黒が残像として見えた程度だった。 「聖なる光線(ホワイトレイ)!」 デクリアモンの懐へ入り、持っていた槍で影の胴体を切り裂いた。その時、コユリの瞳があるモノを捉えた。 「……あれが、核…?」 悍(おぞ)ましく輝く、丸い物体。それこそハクシンモンが言っていたデクリアモンの“核”だ。だがそれにダメージを与える前に体が元に戻ってしまい攻撃するチャンスが無い。どうしたものかとソリフィアモンが考えたその時、今まで向かってきていた影が自身を無視して通り過ぎて行った。 「なっ……?!」 押され気味のデクリアモンが、標的をソリフィアモンから無防備なコユリへと移したのだ。影はコユリを串刺しにしようと鋭くなって彼女に襲い掛かった。避ける事も出来ないコユリは条件反射でギュッと目を瞑る。その時脳裏を過ぎったのは、何故かキリハだった。 「プラズマキャノン!」 聞き覚えのある声。それはたった今脳裏を過ぎった人物の声で。恐る恐る目を開ければ、襲ってきた影は無く。その声の方へ振り向くと、 「……キリハくんっ!」 そこには数時間前に別れてしまったキリハが立っていた。彼がいるという事で安心したのか、コユリの表情が明るくなった。 「奴から目を逸(そ)らすな!」 「っ……!」 キリハの言葉にコユリはまた前を向き、敵を見る。ソリフィアモンはデクリアモンから離れ、一旦コユリの元へと戻ってきた。 「大丈夫か?」 「うん、大丈夫だよ」 「コユリ」 「キリハくん、」 カツカツとコユリに近寄るキリハ。背後にはメイルバードラモンが構えている。 「俺が先に攻撃する。その隙にお前が核を破壊しろ」 「でっでも、キリハくんの方が……」 「生憎俺は核だけを破壊出来る程器用じゃない」 メイルバードラモンは「戦うのはオレだ」とボソッと呟くが、キリハはお構い無しにそれを無視した。 「バグラモン様への手土産が増えたな」 「行くぞ……!」 「うん!」 白馬乗馬拒否の王子様 ------(11/03/30)------ この話も変な長さになったので分けました´ω` べ、別に話数を稼ぎたい訳じゃ((蹴 本音を言うと長いと見直しが大変なので(・ω・`) ソリフィアモンの設定は後程設定に追加します 12/07/24:加筆修正済み |