「この先にデクリアモンが……」

「気ィ引き締めてけよ」


眼前の巨大な扉は見るからに頑丈そうで他とは異彩を放っている。このまま打ち壊そうかと話していると、まるで中に誘(いざな)うかのようにゆっくりと扉が開いた。


「呼ばれてるみたいだね。…どうするの?」

「……行くしかないよ。今更後戻りは出来ないから」

「良く言った。それでこそ妾(わらわ)達の信じる光じゃ」

「ハクシンモンっ…」

「いきましょう、主(あるじ)」

「うん、」


コユリは一度深呼吸をしてから薄暗く奥の見えない扉の向こうを見据(みす)え、そしてゆっくりと歩み出す。ヒョウルモン達はコユリを守る様に警戒しながら四方に着いた。

扉の向こうは天井の高く大広間だった。神経を研ぎ澄まして辺りを見回すも、デクリアモンの姿は確認出来ない。だが肌を刺すような殺気を感じる。その時、ハクシンモンが声を上げた。


「っ……後ろじゃ!!」


一斉に後ろを振り向いた瞬間、鋭い影の矢がコユリ達の頭上に降り注ぐ。ヒョウルモンとシキアモンは横に跳び、コユリはラティスモンに抱えられて矢を逃れた。


「矢……!?」

「姿を現せッ!」


ヒョウルモンは宙に向かって声を荒げる。すると、広間全体から背筋が凍り付く様な不気味な笑い声が響き渡った。


「フフフッ…今更勇者面とはな、ヒョウルモン」

「…チッ……!」


大広間の影という影がコユリ達の前にズルズルと集まり、段々と形を成していく。そしてその影は巨大な龍のような姿を成した。あまりに突然の事に驚きを隠せずコユリは息を呑んだ。その横でシキアモンは眉間に皺を寄せながら白鴉(はくあ)を構える。


「これが、デクリアモン……」

「ヒョウルモンはアレと知り合いな訳?」


シキアモンはスッと目を細め、漆黒の瞳でヒョウルモンを射ぬく。その問いにヒョウルモンは答えようとしない。代わりにデクリアモンが愉快そうに口を開いた。


「知り合いも何も、共に数々のゾーンを滅ぼしてきた仲だ。そうだろう?ヒョウルモン」

「……」

「嘘だっ!ヒョウルモンが……ヒョウルモンがそんな酷い事する訳ない!」

「コユリっ……」


あの温厚なコユリが怒りで声を荒らげる姿にヒョウルモン達は目を見開いて驚いた。しかし、デクリアモンはそれを嘲笑して一掃した。


「なんだ、何も聞いていないのか。ならば代わりに私が話してやろう」

「止めろッ!」

「そこにいるヒョウルモンはバグラモン様の“犬”として仕えていた殺戮兵士だ」

「っ……嘘、」




キャパシティー欠乏症



------(11/03/30)------
長くなったから区切りのいい所で分けたら予想以上に短くなってしまった(・ω・`)

12/07/24:加筆修正済み





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