街に下りて来た一同を待っていたのは、デジモンが一体も歩いていないがらんどうの城下町。コユリは生気を全く感じない虚しい印象を覚えた。情報収集をしようにも外には誰もいない為、適当に目に留まった家を尋ねてみた。辺りが静かなだけに木の扉をノックする乾いた音がやけに大きく聞こえる。


「すみませーん、誰かいますかー?」


扉が開く気配は無く、声を張るが反応は無い。隣のヒョウルモンと顔を合わせると「他を当たるぞ」と他の家を顎でしゃくり、諦めてこの場を去ろうとした時、ゆっくりと扉が開いた。


「――…だっ、誰……?」

「あっ良かった!少し聞きたい事が……、」

「……き、来たッ!」

「え?」


家から出て来たデジモンは恐怖で顔を歪め、その視線を辿った先には古城から街を飲み込むように迫り来る“影”。それはコユリをこのゾーンへと引き込んだモノと酷似している。


「……ちょっと下がってて」

「シキアモン?!」


無機質な声で一言言って数歩前に歩み出たシキアモン。その手には愛刀と言うべき白鴉(はくあ)が握られている。それを構えた瞬間無数の札がひらひらと落ち、無へと還った。“影”は意思を持ったように動き、ピンポイントでコユリ達へと襲い掛かって来た。


「……白刹(ハクセツ)ッ!」


白鴉から繰り出された一筋の白い光が一瞬にして標的を斬り裂き、何も無かったかのように跡形も無く消え去った。シキアモンが白鴉を鞘に納めると、先程消えた筈の札が現れては元通りに戻る。


「シキアモン凄い!」

「これ位普通だよ」

「……あ、あなた達は?」

「私達はこのゾーンを救いに来たの」


ニッコリと笑うコユリに、デジモンは愕然とし開いた口が塞がらずにいた。そんなデジモンはラブラモンと言うらしい。一同はラブラモンの家に上がらせてもらい、詳しい話を聞くことにした。


「あの影は一体なんだったの?」

「……あれはこのゾーンを支配するデクリアモンが操ってる影です」

「……厄介な相手だな」

「知ってるの?ヒョウルモン」

「ああ……。ヤツは体を持たない影だ」

「えっ?それじゃあ、どうやって倒せば……」


すると、今まで大人しく話を聞いていたハクシンモンがゆっくりと口を開いた。


「“核”じゃよ、コユリ」

「……?」

「奴の本体とも言うべき核を壊せば倒せる筈じゃ。まあそれを見付ける前に殺られてしまうかもしれんがのう」

「そんな……!」

「それではデジクロスしてみてはどうでしょう?」

「ラティスモン、」


音も無く突如コユリの傍に現れたラティスモンにラブラモンはびくりと驚いているが、コユリ達は馴れたもの。始めの頃こそ一々反応していたが、今では反応する時間さえ惜しいのだ。


「でも、私っ……」

「主(あるじ)になら必ず出来ますよ」


ラティスモンはコユリの白く美しい手を取って静かに微笑んだ。しかし長く厚い前髪の所為で瞳は見えず、それが本当の笑みかは分からない。そんな時、黙って俯いていたラブラモンが声を上げた。


「お願いです、このゾーンを救って下さい!」

「ラブラモン、」

「デクリアモンに……家族も友達も皆攫われたんです。…あいつは何もかも奪っていったッ!」


悔しさからの涙を流し切実に訴えるラブラモンの姿に、コユリは静かに決心した。彼女の紅の瞳は誰も見たことが無い程闘志に燃えている。


「……ヒョウルモン」

「どうした」

「私……絶対このゾーンを救ってみせる!」

「そう来なくっちゃな……!」


コユリの言葉にチームが団結したその時、偵察に行っていたコグロモンズが戻って来た。




撒き散らす悲痛な叫び



------(11/03/03)------
短いからって手抜いてる訳じゃないですよ← デクリアモンはオリキャラになります(´ω`)結構設定が雑ですが、スルーの方向で((殴

12/07/23:加筆修正済み





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