「ユウ!コユリ!」


先程の連絡を通じてタイキ、シャウトモンと合流したコユリとユウ。相変わらずタギルとは連絡がつかず。ユウがタイキに現在の状況を説明する。


「――…そうか。まずはそのデジモンを見つけ出さないとな」

「ここは広いから、手分けして探した方が良いと思うの。本当はタギルくんもいてくれた方が良かったんだけど……」

「タギルの奴、何処に行ったんだか……。あんな奴のことは一先ず置いといて、デジクオーツに…」


ユウが言いかけた瞬間、周囲の景色が揺らいだ。目眩などではない。一体何事かと口にしようとした時にはデジクオーツに引き込まれていた。


「デジクオーツに引き込まれるなんて、」

「やっぱり今回はいつもと様子が違うみたいですね」


コユリはクロスローダーを取り出し、ハクシンモンをリロードした。


「ハクシンモン、敵のデジモンが何処にいるか見える?」

「……見えん」

「え?」

「どういう訳か千里眼が使い物にならん。敵に妨害されている可能性が高いのう」

「仕方がない、手分けして探すとしよう」


ハクシンモンの千里眼が使い物にならなければ、やはり自分達の足で探すしか他なく。三人は一旦分かれて学園内を隈無く探すことにした。コユリはハクシンモンを戻してヒョウルモンをリロードさせ、その背に乗って敵を探しに出た。


「で、当てはあんのか?」

「隠れる場所は沢山あるんだけど……。広い温室から調べていこうと思うの」


コユリが指差した先にはガラス張りのドーム状の建物が。学校内の施設とは思えない程立派な温室に向けてヒョウルモンは一気に駆け出した。

温室には熱帯地方の植物が数多く育てられており、何処か異国を感じさせてしまう程だ。ぐるりと探索してみたがデジモンの姿は此処には無かった。別の施設に移る前に、温室の隣にあるもう一つの小さめの温室へと足を踏み入れた。


「スゲェ薔薇の数だな」

「全部生徒が育ててるんだよ」


温室一面に広がる薔薇の園。本来であれば赤い薔薇もデジクオーツ故に色褪せている。それでも燃えるような赤が美しく咲き誇っているのだろうと思える程一本一本が凛々しく咲いていた。

薔薇に気を取られたのは最初だけで、すぐに気を引き締めて周囲を警戒しながら温室を進んで行く。そして温室の中心部までやって来た時、コユリが何かに気付いた。


「……?」

「どうかしたか?」

「…いや、あれって……」


不思議そうに指差した先をヒョウルモンが隻眼で追う。視界に入ったそれを頭で理解した瞬間ヒョウルモンは息を呑んだ。


「…今回の事件、間違いなくアイツの仕業だ」

「えっ…!」


絡み合う荊の中、さながらアイアンメイデンに囚われた様にぬいぐるみのようなソレはいた。一見すると可愛らしい羊のぬいぐるみの様だが、そんな物がこの場にある筈もなく。ソレこそが今回の事件を引き起こしたデジモンであることにヒョウルモンは気が付いた。可愛らしい姿のデジモンにコユリは「信じられない」と言いたげな表情を浮かべている。


「どうしてこんな所にベルフェモンがいるのか理解出来ねぇ…。今は城の地下で眠ってる筈だが……」

「ヒョウルモン、それどう言う意味?」


初めて対峙するデジモンに、コユリはヒョウルモンに説明を仰ぐ。そしてヒョウルモンは可愛らしい姿で眠りにつく敵について説明し出した。

目の前にいるベルフェモンにはレイジモードとスリープモード、二つの姿が存在する。基本はスリープモードだが、千年に一度目覚めレイジモードへと姿を変えるのだ。しかしそうなると破壊の限りを尽くし暴れ回るらしく、デジタルワールド改変後すぐに目覚めたベルフェモンを力ずくで封じ込め、城の地下に閉じ込めたらしい。


「――…で、ベルフェモンを封印したのは言うまでもなく、」

「妾(わらわ)が彼奴を眠らせたと言う訳じゃ」


クロスローダーの中からハクシンモンが間に入る。


「いくら強くても眠ってる内は大丈夫なんだよね…?」

「まあな…だが、嫌な予感がするぜ。一先ずここを出てガキ共と合流した方が良いな、コユリ」


まるで彼女の名前が合図となったかのように、閉じ切ったベルフェモンの目蓋がゆっくりと開かれた。


「ベルフェモンが……!?」

「チッ…!」


ヒョウルモンはコユリを背に乗せて温室を飛び出した。そして見晴らしが良く戦い易いであろうグラウンドを目指して一気に駆け抜ける。


「ハクシンモン!ベルフェモンの奴起き出したぞ…!」

「…あの時、妾(わらわ)は確かに封じ込めた。あれから千年は目覚める筈ないのじゃが、」

「でも実際僕らの目の前で起きちゃったじゃん。やっぱりハクシンモンの歳の所為だって」

「失礼な、妾はまだまだ現役じゃ」


クロスローダーの中でシキアモンがハクシンモンを茶化した為話が横道に逸(そ)れてしまったが、皆ベルフェモンが周期よりも早く目覚めた理由が分からず困惑しているのは確かで。次の瞬間、温室の方角から空気をも震わす咆哮が響き渡った。



動き始める怠惰の魔王



------(14/01/17)------
久々過ぎて口調が分からない……← 加筆修正も地道に行っていきます。





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