次の瞬間、キリハは先程とはまた違った世界に立っていた。所々荒廃したその世界に、キリハは神経を集中して周囲への警戒を怠らない。だがその時、背後でどさりと何かが倒れる音がした。 「っ…、」 「ツバキさん……?!」 何故ツバキがここに居るのか、キリハは困惑した様子でツバキに駆け寄った。ツバキはゆっくりと立ち上がってスーツについた砂埃を手で払い、まるで好奇心旺盛の子供のように目を輝かせて辺りを見回す。 「どうしてツバキさんがここに……!?」 「デジモンを自分の目で確かめたくてね。つい付いて来てしまったよ」 全く危機感無く笑うツバキの姿に、やはりコユリの父親だと改めて実感するキリハだった。だがツバキの背後にキラリと光るものが視界に入った。 「危ないッ!」 「?!」 キリハが強引にツバキの腕を引いて横に跳ぶと、今し方立っていた場所に閃光がぶつかり吹き飛んだ。コンクリートが抉られ破片が周囲に飛び散る。キリハは静かに冷や汗を流し、ツバキは突然のことに言葉を失っている。 上空ではサンダーバーモンが攻撃体勢を緩めること無く二人を狙って飛行を続けており、キリハはこの窮地をどうやって脱するか思考を巡らせる。自分一人ならば無茶をしての多少の負傷は止むを得ないが、ツバキに何かあってはならない。そんなキリハを他所に、サンダーバーモンは容赦無く攻撃を仕掛けて来た。 「ッ……!」 「プラズマキャノン!」 キリハの背後から放たれた閃光がサンダーバーモンの閃光とぶつかり合い上空で激しく爆発した。巻き起こる爆風。それが治まった時、キリハの目の前には大切な仲間達の姿があった。 「済まない、遅くなった」 「久しいのう、キリハ」 「キリハ、大丈夫か?」 「お前達……!」 そこに居たのはメイルバードラモンにグレイモン、デッカードラモンだ。更に周囲のビルの屋上には、サイバードラモンやガオスモン達ブルーフレアが集結している。突然の再会に、思わずキリハの表情が綻(ほころ)びる。 「キリハ!」 「っ…ドラコモン!」 愛くるしい笑顔を浮かべながら飛び付いたドラコモンを受け止めたキリハも懐かしそうに目を細めた。 「キリハ君、このデジモン達は……」 「俺の、大切な仲間です」 彼の素直な言葉にデッカードラモンは嬉しそうに目を細めた。 ツバキが物珍しそうに輝いた瞳をグレイモン達に向けているとメイルバードラモンと目が合い、メイルバードラモンがキリハに問い掛けた。 「キリハ、この男はコユリの父親か?」 「ああ、凛堂ツバキさんだ。今はこの人にお世話になってる。全員、粗相の無いようにな」 メイルバードラモンがそう言ったということは、やはりコユリとツバキは顔立ちや雰囲気が似ているようだ。その時、再会によって和やかになった空気をぶち壊すようにサンダーバーモンが攻撃を仕掛けて来た。それに対しデッカードラモンが迎え撃って相殺する。 「メイルバードラモンとグレイモン以外クロスローダーに入れ!」 キリハはクロスローダーを掲げて一旦ブルーフレアを中に入れ、直ぐ様デジクロスの体勢に入る。 「メイルバードラモン、グレイモン、デジクロス……!」 サンダーバーモンを観察した結果メタルグレイモンで行けると考えたキリハは二体をデジクロスさせた。 「ツバキさん、下がっていて下さい。アイツは俺達で倒します」 「あ、ああ…無茶だけはしないでくれ」 ツバキが下がったのを確認したキリハは上空を飛行して次の攻撃の機会を窺(うかが)っているサンダーバーモンを見据える。メタルグレイモンは久々にキリハの元で戦えることに興奮しているようで、早く指示を出してくれと訴えている。 「そう慌てるな、……来るぞ!」 「スパークウィング!」 「迎え撃て!メタルグレイモン!」 電気を帯びた無数の羽が矢のように襲い掛かり、メタルグレイモンはそれを全て撃ち落とした。 「一撃で決めろ!ギガデストロイヤー!」 メタルグレイモン渾身のギガデストロイヤーはサンダーバーモンに命中。悲鳴にも似た雄叫びを上げたサンダーバーモンはこの場から逃げようとするが、いつの間にか現れた時計屋のおやじが持つクロスローダーに引き込まれてしまった。 「君のお陰でサンダーバーモンをハントすることが出来た。感謝する」 「約束通り、俺の質問に答えてもらうぞ」 「分かっているとも。…それから、もう一つ君に頼みがある」 *** 「――…と、言う訳だ。これは君にしか依頼出来ないことだ。引き受けてくれるかね?」 「……ハァ、」 諦めにも似た溜め息のような息を吐き出した後、キリハは口を開いた。 「“世界の危機”だと説明されたら、引き受けるしか無いだろう?」 「感謝するよ、蒼沼キリハ君」 更に簡単な説明をした時計屋のおやじは、クロックモンと共に去って行った。キリハはメタルグレイモンをクロスローダーに戻した後、振り返ってツバキと視線を合わせた。 「ツバキさん、済みませんが当分日本には帰れそうにありません」 「私にはあまり理解出来ない話だったが、どうやらその様だね。…キリハ君、この世界を頼んだよ」 「っ…はい!」 強い意志が蒼の瞳から垣間見え、それが何時かの大悟と重なりツバキは静かに笑みを溢(こぼ)した。 「キリハ君、もし何かあったら遠慮無く言ってくれ。私に何が出来るかは分からないが、出来る限りの事はしたいと思う」 「ツバキさん…、ありがとうございます」 「全て終わったら、四人でご飯にでも行こう。キリハ君とコユリの話や、デジモン達の話を聞かせて欲しいんだ」 「はい、必ず。コユリも喜ぶと思います」 男同士の約束を交わした後、会社の事を思い出した二人はツバキが消えたと慌てているであろう秘書を思い急いで人間界に戻った。 もうひとつの再会の形 ------(13/01/20)------ ピンチの時に颯爽登場!みたいな展開が大好きです← コユリがハンターでは無いので、次回からオリジナル色の強い話になっていきます。内容も有り勝ちで何番煎じか分かりません(´ω`;)と言うか最早パロディ(( それでもキャラとの絡みはありますので、どうか温かい心でお読み下さい(´・ω・`) |