「凛堂コユリさん、お怪我はありませんか?」 「う、うん…大丈夫」 「よかった。天野ネネさんもご無事ですか?」 「…平気よ」 ユーリとセラフモンが駆け付けてからは、あっという間だった。コユリとネネが苦戦したメフィスモンを呆気なく撃破したのだ。初めて会うユーリにネネは警戒心をむき出しにしている。 「…手に持ってるそれ、クロスローダーじゃないわよね。ジェネラルでもハンターでもない貴方がデジモンを従えて戦うなんて……何者なの?」 真っ直ぐ向けられたネネの視線。しかしユーリは彼女を一瞥するだけで目を合わせようとはしなかった。 「僕が何者かなんて重要じゃない。重要なのは今後も襲撃を続けるであろう敵だ。奴等は襲撃の度に強くなってきています。僕達が必ず貴女を守ります…が、貴女も警戒はしておいた方が良い。……では、僕はこれで」 「ユーリくん!話を……!」 コユリは彼を引き止めようとしたが、それも虚しくユーリはキマイラモンと共に行ってしまった。ユーリにしても謎のデジモンにしても、ますます謎は深まるばかり。 「……彼、キリハ君に似てるわね」 「えっ……?そう、かな?」 ネネの言葉にコユリは首を傾げるものの、心の何処かではユーリにキリハの影を重ねているのだ。 「一先ず戻りましょう?きっと心配しているわ」 「…うん、そうだね」 各々が疑問や疑念、様々な想いを抱きつつ、二人は現実世界へと戻った。スタジオではまだスタッフ達はその場に倒れ夢の中。 「コユリ……!」 声が聞こえたその時には腕を引かれ、母の腕の中にいた。こうして抱き締められたのはいつ振りだろうか。 「おかあ、さっ……苦しっ……」 「……良かった、本当に…良かった」 心からの安堵の声に、コユリはその腕から離れようとするのを止めた。そして逃れようとして上げた腕を、恐る恐るランカの身体に回したのだった。 *** その後、意識を失っていたスタッフ達は無事に目を覚ました。一体何が起こったのかと困惑していたが、そのまますぐに撮影を再開し、予定通り終える事が出来た。 「えっ、もう行っちゃうの?」 「本当はユウにも会いたかったんだけど、映画の撮影があるから……。今度は休みを取って日本に戻ってくるわ」 「そっか……。お仕事、頑張ってね!」 「コユリもね。お互い頑張りましょう!」 このあと直ぐに香港へ戻ってしまうというネネとの別れの挨拶。会えない距離では無いが、やはりコユリの表情には寂しさが浮かぶ。 「そんな顔しないで。コユリが香港で仕事をすることになったら、私すぐに駆け付けるわ」 「あら、それなら次の新作発表会は香港にしようかしら」 「お母さん!そんな簡単に決めちゃ駄目だって!」 ランカの言葉にくすくすと笑いが起きる。ランカは、デジモンについてコユリやネネに聞く素振りを見せず、また今回見たものについても口にする事は無かった。彼女なりに気を使っているのだろう。 「それじゃあ、また会いましょう」 「うん、またね!」 彼の正体を誰も知らず ------(16/09/06)------ 一体いつ完結するのだろうか………。でも思い入れのあるこの作品は絶対完結させてみせますので、もしまだ読んで下さっている方がいるのなら気長にお待ち頂きたいです……。 |