至る所で爆発音が鳴り響き、砂埃が舞い上がっては視界を遮(さえぎ)っていく。不気味な程静かだったこのゾーンは今や戦場と化していた。遂にバグラ軍が本腰を入れて侵攻を開始したのだ。 「ヒョウルモン、雷火雨(サンダーレイン)!」 「メタルグレイモン、ギガデストロイヤーだ!」 キリハはブルーフレアの全勢力を持ってバグラ軍の相手をする。一方のコユリはあまり戦いたくないのだが、バグラ軍に周囲を囲まれて逃げ場が無い為に苦渋の決断をしたのだ。彼女の思いも重々承知だがやはり血が騒ぐらしく、ヒョウルモンは自分から敵の中に飛び込んで行く。 「毒霧(フォスキアーデ)!……悪いがそこ、風下だぜ?」 猛毒によって藻掻き苦しんで消えていく敵の姿に、ヒョウルモンは口端を上げた。各々が戦闘に気を取られていた最中、コユリの悲鳴が鼓膜を揺らした。 「「コユリッ!」」 「は、放してっ……!」 キリハとヒョウルモンが声を合わせて振り返ると、バグラ軍小隊長デビルサタモンに捕らえられたコユリの姿がそこにあった。すぐにでもデビルサタモンを倒してコユリを救いたいが、今攻撃すれば彼女まで傷付けてしまう可能性がある。 下手に手出しが出来ない状況に味を占めたデビルサタモンは、コユリの首を少しずつ絞めていく。このままでは窒息する前に彼女の細い首が折れてしまう。一か八かでヒョウルモンが駆け出そうとした瞬間、断末魔が辺り一帯に響き渡った。 「なっ……?!」 「……」 「っ……シキアモン!」 断末魔はコユリではなくデビルサタモンのものだ。彼女を掴んでいた両腕が肉体から離れ、そこから粒子となって消えていく。その拍子に落ちたコユリをシキアモンが受け止めた。あれからこの戦場に駆け付けたシキアモンがデビルサタモンの両腕を切り落とし、コユリを助けたのだ。 「迷ったり敵に捕まったり……隙あり過ぎ」 「あはは……。ありがとう、シキアモンっ」 「……たまたま…近くを通ったから。別に助けに来た訳じゃないし」 外方(そっぽ)向きながら言ったシキアモンは、ゆっくりと彼女を下ろした。 「コユリ、無事かっ?!」 「うんっ、シキアモンが助けてくれたからね」 「何でテメェがコユリを……!」 「詳しい話はここにいる奴ら全員倒してからで良いんじゃない?」 ヒョウルモンの問いには答えずに白鴉(はくあ)を構える。シキアモンの言う通り、周囲にはまだバグラ軍が残っている。 「確かにそうだな」 「チッ……足引っ張るんじゃねぇぞ!」 「それはこっちの台詞だよ、オジサン」 「まだオジサンなんて言われる歳じゃねえ!それに俺はヒョウルモンだ!」 ヒョウルモンはシキアモンの言葉に腹を立てながらも次々と敵を薙ぎ倒していく。そしてバグラ軍を一人残らず倒した所でコユリがシキアモンを紹介した。キリハは何も言わなかったが、ヒョウルモンはまだ嫌っている様だ。 「……コユリ、」 「どうしたの?」 「…昨日誘ってくれたのってまだ有効?」 「昨日……?」 ――…シキアモンも一緒に来ない? 「あっ……!もしかして一緒に来てくれるの?」 「……まあ、行ってあげても良いかなって」 「嬉しい!これから宜しくね、シキアモン!」 あまり素直ではないシキアモンを快く迎え入れたコユリだが、ヒョウルモンは「反対だ」と騒いでいる。 だがこうしてコユリの軍にシキアモンと言う大きな戦力が加わったのであった。 微笑むあなたを守りたい ------(11/12/29)------ シキアモン編はこれで終了です(´ω`) 次はラティスモン編になります。補足ですが、このゾーンのコードクラウンはシキアモンが持っていて、あの後コユリに渡しました← 12/09/13:加筆修正済み title:maria |