「レイジモードになったか……」

「ハクシンモン、もう一度ベルフェモンを眠らせることは出来ないの?」

「出来ないこともないが…時間がかかるのう。何をするにしても彼奴との交戦は避けられん」


コユリはヒョウルモンに揺られながらベルフェモンをどう倒すか思考を巡らせる。もう一度眠らせてデジタルワールドに帰すのが一番だろうが、タイキやユウにハントしてもらい制御してもらうのも一つの手だ。だが相手の力を把握していない為下手に動けない。グラウンドに出た時、他の場所を探していたタイキとシャウトモンもベルフェモンの咆哮を聞いて駆け付けた。


「コユリ!」

「タイキくん!シャウトモン!」

「今の声は一体…!?デジモンを見付けたのか?」

「う、うん…見付けはしたんだけど、」

「タイキさん!コユリさん!」


タイミング良くユウとダメモンも合流し、コユリは今しがた起きたことを説明した。それに対しシャウトモンもヒョウルモン同様驚きを隠せずにいる。


「妙だぜ、タイキ。確かにベルフェモンは城の地下にいたんだ。自力で動けるハズがねェのに……」

「…考えていても仕方がない。ハクシンモン、俺達でベルフェモンの足止めをする。その隙に奴を、」

「――…ギフト、オブ…ダークネス……ッ!」

「「っ……!?」」


唸(うな)るような低音の声。次の瞬間地面をも抉(えぐ)る斬撃が一同を襲う。破壊音と共に砂埃が舞う。間一髪、何とか攻撃を躱(かわ)した一同はその攻撃力の高さに冷や汗を流す。そして斬撃の出所へと視線を移せば、ベルフェモンレイジモードがそこにいた。その姿は翼の生えた二足歩行の巨大な羊、といった所か。スリープモードのような可愛らしさなど微塵も無い。


「コユリ、超進化だ!」

「う、うんっ…!ヒョウルモン、超進化ッ!」


コユリは更にリーツァモンとコグルモンをデジクロス、超進化させた。タイキとユウもクロスローダーを掲げてパートナーを超進化させる。襲い来るベルフェモンの斬撃を避けながらオーディルモンとΩ(オメガ)シャウトモンが攻撃を繰り出す。


「内部侵蝕(デッドデリート)……!」

「ハードロックダマシー!」


二体の攻撃は確実に命中、爆音と共に硝煙が上がる。一見すると仕止めたようにも思えたが、そう簡単に倒せる相手ではない。ダメージどころか傷ひとつ無いベルフェモンの姿に絶望すら覚えてしまう。次に仕掛けたのはツワーモンだ。ツワーモンがデジ忍法でベルフェモンの動きを封じ、β(ヴィータ)ルーツァリモンが凍らせる。


「いいぞ!ツワーモン、βルーツァリモン!」

「…いや、まだだ!」

「っ…氷が……!」


一度は全てを呑み込んだ氷。しかしそれはベルフェモンの纏う黒い炎によってゆっくりと蒸気を発しながら溶けていくではないか。そして全ての氷を溶かしたベルフェモンはゆっくりと口を開いた。


「…凛堂…コユリ、」

「えっ…私……?」


突然敵から名前を呼ばれたことに対しコユリは思わず身体が強張り、オーディルモンは反射的に構えた。


「…凛堂コユリを、抹消する」

「「ッ……!?」」


一瞬にして駆け抜けた戦慄。目の前のデジモンがコユリの命を狙って起き出したのであれば説明がつく。だが何故、どうしてそうなったのかはいくら考えた所で答えは出ない。今出来る事はコユリを全力で護る事だ。そこまで瞬時に思考を巡らせたタイキとユウはコユリを後ろに下げて彼女の盾となる。


「βルーツァリモン!コユリを乗せて逃げろ!」


オーディルモンに言われたβルーツァリモンはコユリを背に乗せて舞い上がった。なるべく高く、そして速く飛行したいのだがコユリにかかる負担を考えると思うように飛べない。

それに反応し動き出したベルフェモン。その目に捉えるのはコユリただ一人だ。まるで自分を奮い立たせるように空を仰いで吠え叫んでは空気を揺らす。

真正面から戦っても埒が明かない為、ここは一度撤退して作戦を練ることが最善だと考えたタイキ。どうやらユウも同じことを考えていたようで、二人はアイコンタクトで互いの考えを理解した。だがそれを実行に移す前にベルフェモンが地面を蹴ってコユリへと駆け出した。オーディルモンとΩシャウトモン、ツワーモンが阻止しようとするも、その力に圧倒され三体の壁は突破されてしまった。そしてタイキとユウには目もくれず、背の翼を羽撃かせてコユリの元に迫る。コユリを庇いながらも迎え撃つしかないと、βルーツァリモンが攻撃体勢に移った、その時。


「プリズムギャレット!」

「アレスタードラモン……!?」


コユリしか見えていないベルフェモンを横から攻撃したのはアレスタードラモンだ。不意打ちが効いたのかベルフェモンの体勢が崩れた。


「いいぞ!アレスタードラモン!」

「タイキさん!あそこ…!」


ユウに言われて見上げたその先には、校舎の屋上で格好付けるタギルがいた。


「明石タギルただ今参上!」

「何やってるんだ、あいつは……」

「コユリさん!俺が華麗にハントする所、しっかり見ててくださいよ!」


今の状況を知らない呑気な彼の姿に思わず頭を抱えるタイキとユウ。タギルに一言言ってやろうとユウが口を開きかけた時。アレスタードラモンに攻撃された反動で地に落ちるベルフェモンが悪足掻きのように斬撃を放った。


「ッ……!!」


それを間一髪でβルーツァリモンは躱(かわ)した。しかしその急な動きと反動にコユリが耐えれる筈もなく。


「きゃっ……!」

「コユリッ!!」

「コユリさん!!」


タイキ達の悲鳴にも似た声。だが彼女の身体はすぐに落下を止めた。真っ逆さまに落ちるコユリを助けたのはこの場に居た誰でもなかった。彼女の視界に入ったのは靡(なび)く白銀、その隙間から覗く見慣れた蒼だった。


「貴方は…一体……」




駆け付けた白の救世主



------(14/01/27)------
戦闘シーンが酷い出来なのはいつものことなので脳内補正してもらえると嬉しいです←





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