コユリを抱き抱えたままふわりと着地した少年に見覚えは無かったが、何処か感じたことのある空気を纏っていた。コユリを下ろした少年は彼女より頭ひとつ分程背が高く、歳はいくつか上に見える。癖の無い白銀の髪と、切れ長で美しい蒼の双眸。 「あ、ありがとう……貴方は……?」 「……ユーリ」 「ユーリくん…?」 困惑しながらもまっすぐ見つめてくる紅の瞳にユーリは視線を逸らす。あまりコユリと顔を合わせようとはせずに、地に落ち立ち上がろうとするベルフェモンを見つめる。 「…下がっていてください、凛堂コユリさん」 「えっ…?」 「奴は、僕が仕留める」 その言葉と共にユーリが取り出したのは見覚えの無い小型の機械。それにより一体彼は何者なのかとタイキ達は困惑している。ユーリが続けて言葉を発しようとした時、急いで下まで降りて来たタギルが遮った。 「やいテメェ!いきなり現れて格好付けやがって!アイツは俺がハントするんだ!」 「…明石タギルさん、貴方じゃ奴はハント出来ない。巻き込まれたくなかったら下がっててください」 「何だとォ!」 「止めろタギル!」 ユーリに掴みかかりそうになったタギルをタイキが羽交い締めにして何とか止める。しかしタギルはじたばたと暴れてユーリに啖呵を切るのだが、ユーリ自身は騒ぐタギルなど目もくれず。 「皆さんのパートナーデジモンも一旦下げてもらえるとありがたいのですが」 坦々と言葉を続けるユーリに対し、コユリやタイキ達は従うべきか躊躇(ためら)っている。その瞬間、立ち上がったベルフェモンがユーリの後ろにいるコユリを狙って襲い掛かって来た。 「「……ッ!!」」 それ対し、誰よりも早く反応したのはユーリだ。彼が小型の機械をベルフェモンに翳(かざ)すと一瞬にしてシールドが張られ、一同にベルフェモンの鋭い爪が届くことはなかった。 「リスタート、キマイラモン」 ユーリの声と共に機械から現れたのはライオンの頭と手足、山羊の身体、蛇の尻尾を持つ焔を纏ったデジモンだった。 「もう一度言いますが、ここは我々が引き受けます。ベルフェモンは皆さんのデジモンとデータの構成が違う」 「ユーリ、それはどう言う意味だ?」 「…データAはA、BはBでしか干渉する事が出来ないんです。AとBは相容れない。皆さんをAとするならばベルフェモンはB、故に奴は今も無傷だ」 「それならユーリくん、貴方達は……」 「ええ、僕らはBだ」 バリバリッとシールドに罅が入る。ベルフェモンの攻撃によりシールドも限界に近い。 「シールドが消えたら全員離れてください。特に凛堂コユリさん、貴女は絶対に戦ってはいけない」 「えっ…?」 「オーディルモン、β(ヴィータ)ルーツァリモン、彼女は頼みました」 「何処の坊主か知らねぇが、言われなくてもコユリは守るさ」 「…なら良い」 オーディルモンの言葉にフッと口角を小さく上げて笑ったユーリの姿が、コユリの目にはキリハと被って見えた。 そしてユーリがキマイラモンと言葉を交わした瞬間、シールドが音を立てて砕け散った。ユーリに言われた通りオーディルモンはコユリを抱えてβルーツァリモンと共に空へと上がって距離を置く。タイキとユウも同様にユーリから離れる。 「キマイラモン…進化ッ!」 小型の機械から放たれた眩い光に包まれたキマイラモンは一瞬にして進化し姿を変えた。ユーリの前には六枚の翼を持つ美しい熾天使の姿をしたデジモンが舞い降りた。神々しいその姿は悍(おぞ)ましいベルフェモンと対照的だ。 「セラフモン、早く終わらせよう」 「イエス・マイロード」 正体不明の聖騎士とは ------(14/03/27)------ ユーリの説明が分かり難かったらすみません……。 |