「すっげぇえっ!」


目を輝かせて興奮気味に言ったのは、今し方までコユリとヒョウルモン達の力に半信半疑だったタギルだ。

オーディルモン達に瞬殺されたリョウマ達三人は捨て台詞を吐いてすぐに去って行き、時計屋のおやじとクロックモンも気付いた時には消えていたが、誰もあまり気に止めなかった。


「コユリさん!マジで凄かったッス!」

「あ、ありがとうタギルくん」


タギルの熱気に押され気味のコユリは眉尻を下げて笑う。すると二人の間に割って入り、タギルを睨み付けたのはヒョウルモンだ。


「コユリに近寄るんじゃねえよ、アホ面」

「っ誰がアホ面だ!俺は明石タギル!スーパースターになる男だ!」

「なにそれ」


タギルの言葉にシキアモンは馬鹿にしたようにくすりと笑い、ヒョウルモンもけらけらと笑った。そのやり取りの傍らで、コユリはラティスモンやシャウトモン達と久し振りの再会を喜んでいる。


「テメェ…ガムドラモンか?」

「ッ……、」

「あ、本当だ。まさかこんな所にいるなんてね」


タギルの陰に隠れていたガムドラモンに気が付いたヒョウルモンとシキアモンはガムドラモンを知っているような口振りだ。驚いたようにタイキが口を開く。


「ガムドラモンを知ってるのか?」

「一応、教育係だったからな。俺達ピュアグロウは」


ヒョウルモンの言葉にタギル達は驚いた表情を見せる。詳しく話を聞くと、問題児であるガムドラモンに手を焼くシャウトモンを気の毒に思い、ピュアグロウ全員でガムドラモンの教育係に名乗りを上げたらしい。ガムドラモンにとってそのスパルタ的教育が一種のトラウマになっていることは言うまでもない。


「ピュアグロウはガムドラモンの教育係の他にも色んな仕事を引き受けてくれて、スゲェ助かってるんだぜ」

「そうなんだ……みんな、偉いね」


シャウトモンの話を聞いたコユリは笑顔でヒョウルモン達を褒め称える。褒められ慣れていないヒョウルモンとシキアモンは何処と無く照れ臭そうにしており、そんな姿にコユリは微笑んだ。


「オレは稽古をつけてもらったけどよ、ハード過ぎて身体中傷だらけになっちまったぜ」

「あはは、仕方無いよ、相手はヒョウルモン達なんだし」

「手加減なんてしないんだろうな」


ユウとタイキがそう言うと、それに反論したのはやはりヒョウルモンとシキアモンだ。


「傷が残るのは仕方ねぇだろ、稽古なんだから」

「そうそう、王様にはもっと強くなってもらわなきゃいけなかったしね」

「皆には感謝してるぜ。ハクシンモンの助言に救われたこともあるしよ」

「そうなんだ……。あれ?ハクシンモンは?」


ふとハクシンモンがいないことに気が付いたコユリ。きょろきょろと辺りを見回すが姿は見えず、クロスローダーに声をかけるが反応は無い。


「…どこに行っちゃったんだろ……」



***



「――…滅ぼさんとしていた人間になった気分はどうじゃ?……バグラモン」


深青の瞳に映るのは、時計屋のおやじだ。

リョウマ達との戦闘の後、ハクシンモンは時計屋のおやじを追っていた。そして二人っきりになったその場所は、背の高いビルとビルの隙間。陽の光があまり当たらず薄暗い。時計屋のおやじを追い詰めたハクシンモンは、その口で目の前にいる男をバグラモンと呼んだ。過去に己の力を奪い、一年前に倒した敵の名を。


「……やはり、貴様の仕業だったか」

「どうだかのう」

「…外道が」

「何とでも申せ……と言いたい所じゃが、お主にだけは言われとうない」


サングラスの奥にある赤の視線と、深青の視線が宙でぶつかり合う。だがそれを切り、踵を返したのはハクシンモンだ。


「悔い改め罪を償えば…元に戻れるかも知れんぞ。…ま、お主がどうなろうと妾(わらわ)には関係無いがのう」

「……」

「……ああ、そうそう。…元気そうで、何よりじゃ」

「ッ!」


一瞬だけ深青の目を細めたハクシンモンは、それだけ言ってコユリの元へと帰って行った。時計屋のおやじはハクシンモンの後ろ姿をただ見詰めながら、懐かしそうに小さく呟いた。


「……貴様は何一つ変わらんな、ハクシンモン」




尊敬と愛惜の眼差しが



------(12/10/10)------
シキアモン[越えられない壁]←←バグラモン、みたいな感じです(笑) それは愛だったり憧れだったり。この二人は何百年も前からの因縁があったりします← 次回はキリハに焦点を当てたいと思いますが妄想捏造のオンパレードです\(^p^)/





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