全ての照明がコユリを照らし、スタッフ達は彼女を見詰めている。彼女はそれらを物ともせずに、カメラに向かって笑顔を浮かべる。



「――…はい、オッケーです!」

「ありがとうございました!」



カメラマンの掛け声で今日の撮影は終了。コユリはスタッフ達に頭を下げ、撮影の様子を見ていたマネージャーの桐谷へと駆け寄った。



「お疲れ様、今日も良かったわよ!」

「本当ですか?」



桐谷から差し出された飲み物を受け取って口に含む。その間に桐谷はスケジュール帳に目を通す。



「今日の仕事はこれで終わりよ。明日は新曲のレコーディングだから、学校が終わったら連絡頂戴。迎えに行くわ」

「分かりました。…あの、やっぱり私…歌手に向いてないんじゃないかと……」

「…デビュー曲だって順調に売り上げを伸ばしてるし、もっと自信を持ちなさい」

「……はい、」



コユリは少し重くなった足取りで控え室に戻り、帰宅の用意をしてスタジオを後にした。

普段なら桐谷が自宅まで送って行くのだが、今日は調律を頼んでいたバイオリンを取りに行く為一人での帰宅だ。

駅に向かって脚を進めていた時、背後からの声に反射的に脚が止まる。



「コユリ……?」



振り向くとそこには、一年前の決戦を共に戦い抜いた仲間、タイキがいた。いつの間にか彼はコユリの身長を抜かし、以前より大人びた顔付きになっている。



「タイキくん!」

「久し振りだな、コユリ」

「うん、久し振り!」



自然と二人からは笑みが零れる。タイキはこれから駅前の公園でストリートバスケの試合らしく、そこまで一緒に行く事にした。

決戦後に一度会った切りで、連絡も数える程しかしていなかった二人から話題が絶える事は無い。



「――…にしてもコユリがモデルなんて最初は驚いたよ」

「あははっ…私もまだ夢じゃないかって思ってるんだよね」

「でも俺はモデルも歌手も合ってると思うぜ」

「あ、ありがとう」

「勿論俺もコユリのファンだけど、ユウが熱狂的なんだ」

「ユウくんが?」



元々コユリに好意を寄せていたユウが彼女のファンになるのも頷ける。タイキの話によると、ユウは未だにコユリが好きらしく、数多くの告白を全て断っているらしい。



「私なんかを好きでいてくれるのは嬉しいんだけど…ね、」

「キリハがいるもんな」

「う、うん」

「そう言えば、あいつとは上手くいってるのか?」

「…えっと…それなりに……」



少し困ったように笑ったコユリ。キリハがアメリカに留学している事を言えずにいた。理由と言うものは無く、ただ何となくだ。彼女の返答に、タイキもそれ以上の事は聞かなかった。

そして駅に着き、コユリは名残惜しそうに言う。



「――…ごめんね?用事が無ければタイキくんの試合、観に行きたかったんだけど……」

「そんなに気にしなくて良いって」

「今度は絶対応援に行くからね!」

「ああ、待ってるぜ!じゃあまた今度な、コユリ」

「うん、またねタイキくんっ」



そう言葉を交わして人混みの中に消えていったコユリを見送ったタイキは、近くの公園へと脚を進めた。すると待ち合わせをしていたユウとタギルの姿を見付け、声をかける。



「タギル!ユウ!」

「あっ、タイキさん!」

「珍しいっスね、タイキさんが時間ギリギリなんて」

「何かあったんですか?」

「丁度コユリに会ってさ、話しながら来たから少し遅くなったんだ」

「コユリさんに会ったんですか?!」



やはり食い付いて来たユウ。だがタギルにはコユリが分からずに首を傾げている。



「あ、ああ……。今度俺達の試合を観に来るって言ってたぞ」

「コユリさんが…僕の試合を……」

「"俺達"の、な」

「タイキさん、そのコユリって誰ですか?」

「…コユリは俺達の仲間だ」





平穏な今日この頃





------(12/03/14)------
アニメ前からスタート。
最後のタイキ達のくだりは要らないかなーっと思ったのですが、文字数稼ぎに……((蹴

キリハ×コユリ←ユウ・リョウマ・ネネを中心に話が回っていく…かも(笑) ピュアグロウ再結成は何話になる事やら(・ω・`)





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