コユリ達は落ちずに済んだが、タイキがいなければグレートクロスを行う事も出来ない。

彼女達が上に這い上がる間、ヒョウルモンはバグラモンと睨み合う。



「まだ生きていたのか、ヒョウルモン」

「ハッ!テメェに抉(えぐ)り取られた右目の分、きっちりお返しするまで死んでも死にきれねぇよ」

「出来るものならやってみるが良い」



キリハとネネは自力で上へと這い上がり、コユリもラティスモンの力を借りて上る事が出来た。

己を睨み付けて来る蒼の瞳にバグラモンは気が付いた。その持ち主はキリハだ。



「――…そもそもXローダー自体、私が与えた物ではないか」

「そうらしいな……。グラビモンから聞いた」



元々人間にXローダーを与えてデジクロスの力を生み出す事を思い付いたのはダークナイトモンだ。

バグラモンに勝つ為、ダークナイトモンはユウを選んだ。そしてバグラモンはその妙案に感心し、キリハを選んだのだ。



「――…何故俺を選んだ?」

「凄まじい強さへの飢え感じたからさ。…だが、期待外れだったよ。君はユウにも、オメガモンが選んだタイキにも、ハクシンモンが選んだコユリにさえも及ばなかった」

「っ……!」



――…ハクシンモンが私を選んだ……?

バグラモンの言葉に、コユリは驚きを隠せないでいた。自分が誰に選ばれたのか、今まで考えた事もなかったからだ。


――…その者を助けたいか?

――…助けたい!

――…少女の、名は?

――…コユリ……私の名前は、凛堂コユリ……!


コユリは肩に乗っている小さいままのハクシンモンに視線を向けた。



「…どうして、私だったの……?」

「絶望的な運命を変える程の力があると見込んだからじゃ」

「それは……」

「――…コユリ!β(ヴィータ)ソリフィアモンとβルーツァリモンの力も貸してくれ!」

「う、うん!」



聞きたい事は山程あったが、キリハに言われコユリはすぐさまヒョウルモン達をデジクロスし、超進化させた。



「行くぞ!皇帝バグラモンを倒せ!」



四人で一斉にバグラモンへ攻撃を仕掛けるが、左手だけで簡単にあしらわれてしまう。



「――…チッ、ダメか」

「諦めるな!」

「そうよ!あれを見て!」



ネネが指差したのはバグラモンの左腕。そこには傷があり、微かに粒子となっていた。だがダークストーンと一体化している為、左腕を振るうと傷は一瞬にして消えてしまった。



「――…この力の全てを振るえば、たとえ左腕のみでも全てを消し去れる!」



遂に放たれようとするバグラモンの究極の技を押し返すべく、βソリフィアモン達は連続技で立ち向かう。



「デストロイスマッシャー!」

「ビートスラッシュ!」

「愚者へ送る葬送曲(デディレスカーレ)!」

「魔王の鉄槌(ネヴァロフェリノス)!」

「無駄だ……!」



技同士がぶつかり合って巨大な爆発を起こす。それによってβソリフィアモン達は飛ばされ、超進化とデジクロスが解けてしまった。



「どうでい、ちっとは効いたみたいだぜ」



爆発の光が治まり、そこいたのは傷付いたバグラモン……ではなく、背後からダークナイトモンの槍で一突きにされたバグラモンだった。



「申し訳ありません、偉大なる兄上」

「貴様…この時を待っていたのか……!」

「そう、兄上の力の全てが向けられるD5の瞬間こそ、私が貴方を越える唯一の好機」



ダークナイトモンはバグラモンに隙を作らせる為にコユリ達を囮(おとり)に使っていたのだ。そしてダークナイトモンは徐(おもむろ)にダークネスローダーを取り出した。



「――…まさか……!」

「貴方を吸収する為ですよ、兄上。……ダークネスローダー、デジクロス!」



躊躇(ためら)う事なくバグラモンとデジクロスするダークナイトモン。突然の事にコユリ達はそれを見ている事しか出来ない。



「そんな……」

「バグラモンが……」

「バグラモン?そんなデジモンはもういない。兄上は消えた……。私は勝った!」





悪への反逆





------(12/03/02)------
ハクシンモンについては謎?ばかりが増えて目的も一体どんな立場のデジモンなのかも書けないまま話だけが進んで行く……。全容は決戦後に明らかになると思われます(´`;)←





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