城の広間に置かれた玉座には脚を組んだコユリ、ではなくデクリアモンが座っていた。右手で髪の毛先を暇そうに弄(もてあそ)んでいる。

この光景に、デクリアモンの前に跪(ひざまず)くデジモン達は違和感を覚えていた。いくら中身がデクリアモンだったとしても、その姿が敵のコユリだからだ。それでもデクリアモンの威圧感に押されて声も出ない。

そんな空気の中、ムルムクスモンがデクリアモンの傍らに寄った。



「デクリアモン様、敵の居場所を特定致しました」

「…で、何処だ?」

「城から南東にある"クリスタルの森"に潜伏しております」

「……あそこか。まあ良い、どうせ奴等は夜明けと同時にこの城を攻めて来る筈だ」



そう言いながら立ち上がったデクリアモンが指を鳴らすと、宙に城の全体図が浮かび上がった。それに続いてΩ(オメガ)シャウトモン等の主戦力の画像も映し出される。



「奴等は仲間を入れ替えてこちらの混乱を狙って来るだろうが、役割が替わる事はまず無い」



宙に映される画像に触れ、タイキとキリハ、ネネの画像を一番表に出した。



「こちらの気を引き付ける為の囮(おとり)となるのは蒼沼キリハ、そしてその援護に付くのは天野ネネだろう。警備の隙を突いて私の首を取りに来るのは、工藤タイキだ」

「…何故、奴等の布陣がそうだと……?」

「下らん話だが、惚れた弱みと言うヤツだ。蒼沼キリハはこのガキを殺せない、天野ネネも同じだ。ピュアグロウは言うまでも無い。……となると残りは工藤タイキただ一人」



デクリアモンはコユリの記憶を読み取る事が出来ていた。その為、過去にあった全ての戦闘から今回の布陣を予想したのだ。



「ムルムクスモン、グリフォモン達はどうした?」

「既に待機させております」

「……デーモン部隊は正門、スカルバルキモン部隊は裏門を固めろ。スカルサタモン部隊は城内、グリフォモン部隊は上空を守れ」



デクリアモンが言った布陣が城の全体図に投影されたが、次の瞬間には意思を持って動く影が映像を切り裂いた。



「人間のガキ共は生け捕りにしろ。…それ以外は全員皆殺しだッ……!」



それに応えるようなデジモン達の咆哮(ほうこう)が広間を通り越して城全体に響き渡った。

それから数時間後、名も無いこの国に夜明けが訪れた。陽の光に照らされたクリスタルがそれを反射させ、地上は目が眩(くら)む程輝いている。

先頭に立つタイキが振り返ると、そこにいる全員が覚悟を決めた瞳をしていた。



「――…良し、行くぞ皆ッ!」

「ああ……!」

「えぇ!」

「行くぜ野郎共ッ!」



タイキの練った作戦に従い、一同は決められたチーム毎に城を目指す。先陣を切って勢い良く飛び込んで行ったのはシャウトモンX4、それに続くのはジェットメルヴァモンだ。

遂に始まった戦闘。デクリアモンはその様子を宙に映し出し、玉座に腰掛けながら窺(うかが)っていた。ネネ達はほぼ予想通りの動きをしているが、タイキとキリハ、ソリフィアモンの姿が見当たらない。

――…工藤タイキは良いとして……蒼沼キリハとソリフィアモンは何処だ……?

声に出さずに呟いた時、爆発音が鼓膜を揺らす。その大きさから推測すると、かなり近い場所からだ。

傍らにいたムルムクスモンが確認に向かおうとした時、巨大な扉を打ち壊したソリフィアモンが広間へと乗り込んで来た。



「ソリフィアモン……?!」

「その顔、どうやら予想が外れた様だな」



ムルムクスモンがソリフィアモンに攻撃を仕掛けた事を皮切りに、二人の攻防戦が繰り広げられる。土埃が舞う中デクリアモンの視界の隅で銀色が光った。



「ッ……!」



反射的に後ろへ跳ぶと、金属が地面にぶつかった甲高い音が聞こえた。視線をそちらへと向ける。

揺れる金髪、強い意思を宿した蒼瞳。そこにいたのはソリフィアモンの武器の一つである刀を手にした蒼沼キリハ、その人だった。



「何故お前が此処にッ……!」

「コユリは返してもらうぞ!デクリアモン!」





悪魔の笑みが崩れた





------(12/02/09)------
次回は少し時間を戻して、城から引き上げたタイキ達の話になります。

にしても刀を持ってるキリハって……未来トランクスと被って((蹴 中の人繋がりです(笑)





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