「デクリアモンって…ヒョウルモン達が前に話していたデジモンの事か?」

「ああ、そうだ。奴は俺達が倒した、そう思っていたが……」

「甦(よみがえ)った、って事…?」

「ッ…そんな事はどうだって良い!デクリアモン、コユリはどうした!」



タイキやネネは初めて対峙したデクリアモンに戸惑い、ヒョウルモンは倒した筈のデクリアモンが生きている事に少なからず動揺している。だがキリハにはそんな事など関係無い。



「言った筈だ、このガキはもうじき死ぬとな」

「そんな話、誰が信じるものか!」

「このガキの身体を、意識を乗っ取った。時間が経てば私と同化し、このガキの心は闇に消える。そうすれば…死んだも同然だろう?」

「ッ……!」



コユリの姿のままデクリアモンは笑みを浮かべている。そして右太股に着けているホルダーからXローダーを取り出し、キリハの足元へ投げた。



「形見として持っていたらどうだ?私には必要ないからな」



その言葉に、キリハは下唇を噛み締めながら白のXローダーを拾い上げる。



「あの時、俺達は核を破壊した。なのにどうしてテメェが生きてるんだよ!?」

「全てバグラモン様とダークナイトモン様のお力によるものだ。核の破片をこのガキの心臓に埋め込み、闇の力が溜まった時にまた甦れるようにして下さった。ただそれだけの話だ」



デクリアモンの話す闇の力と言うのは、至る所に生えているクリスタルに蓄積されていたのだろう。その力を全て使ってデクリアモンが甦った為、黒のクリスタルは白へと変わっている。



「いつコユリに核の破片を埋め込んだと言うの?!」

「お前は見ていた筈だぞ、核を埋め込むその瞬間を」

「……まさか…ヘブンゾーンの、あの時に……!?」



ネネの脳裏にはヘブンゾーンでの出来事が思い出される。

林の中、暗闇に乗じて背後からコユリを気絶させた。だが気絶させたのはダークナイトモンで、ネネはそれを見ているだけだった。

ダークナイトモンはこの時、コユリを気絶させると同時に彼女の心臓に核の破片を埋め込んでいたのだ。



「っ…こうなったのも…私の所為……?」

「どう言う事だ、ネネ!」

「落ち着けキリハ!」



震えた声で言ったネネをキリハが問い質そうとしたが、タイキがそれを止めた。デクリアモンはその光景を愉快そうに眺めている。

するとそれに気付いたシャウトモンがデクリアモンに啖呵(たんか)を切った。



「やいデクリアモン!笑ってるのも今のうちだ!俺達はテメェを倒してコユリを助け出す!核って事はグラビモンと同じようなモンなんだろ!」

「不便な事に私の核は一度しか寄生出来ない。このガキに寄生した今、永遠にこのままだ」

「ならもしテメェの核を破壊したらコユリは……!」

「察しの通り、核を破壊すればこのガキも死ぬ事になるぞ!助ける術は無い!」



その言葉にコユリだけを助け出す方法がある筈だと考えていた一同は衝撃を受けた。

デクリアモンの核は完全にコユリの心臓へと寄生しており、謂(い)わば二人は運命共同体。デクリアモンの核を破壊すれば必然的に彼女も死んでしまうのだ。

更に、コユリの心がデクリアモンと同化してしまっては、仮にデクリアモンだけを倒した所で彼女の意識が戻る事は永遠に無い。

どのみちコユリが助かる望みが皆無だと知り、一番動揺しているのはやはりキリハだ。



「…嘘だ、コユリが…死ぬ訳が無いっ……」

「おい坊主!しっかりしろ!……チッ!」



今にも膝から崩れ落ちそうなキリハの姿を見て、ヒョウルモンはタイキへと耳打ちをする。



「…ここは一旦引き上げるべきだ」

「ああ、今のキリハの状態じゃ……。それに、コユリを助ける方法は必ず見付かる筈だ……!だから、」

「おっと、逃げるのか?」



タイキとヒョウルモンの不審な動きに気が付いたデクリアモンはそう言って指を鳴らした。

するとその音を合図に、闇に身を潜めていた衛兵達が姿を現してタイキ達を取り囲む。衛兵はデーモンやスカルサタモン、スカルバルキモンだ。最後に現れたムルムクスモンはデクリアモンの斜め後ろで跪(ひざまず)いた。

――…くっ、今の状態で戦ったら絶対に負ける……。コユリがいない今、X7も出来ない……。どうすれば……!

タイキはこの窮地を脱する為に思考を巡らせる。ふと視線を上げると、コグルモンが頭上で身を潜めている事に気が付いた。

――…そうだっ!

策を思い付いたタイキがコグルモンに視線を配らせると、コグルモンは一気に彼の元に降りて来た。

タイキは直ぐ様キリハの持つ白のXローダーを取り、リーツァモンをリロードする。



「二人共、俺でも大丈夫か……?!」

「大丈夫ダ」

「問題無い…!」

「良しっ!…リーツァモン!コグルモン!デジクロス!」



タイキはチームを越えたデジクロスで二体をルーツァリモンへとデジクロスさせた。



「皆!ルーツァリモンへ!」

「分かったわ!」

「坊主!一旦引き上げるぞ!」

「…コユリがっ……」

「うるせぇ!少し黙ってろ!」



ヒョウルモンはそう怒鳴りながら尾をキリハに巻き付かせてルーツァリモンの背まで引っ張った。

タイキ達を攻撃する為に衛兵は武器を構えたが、デクリアモンが右手を上げて制止した。



「やはりこのガキは殺せないか」

「コユリは俺達の大切な仲間だ!絶対に救い出してみせる!」

「その"大切な仲間"の孤独にも気付いていなかったお前達が仲間面とはな」

「テメェ…!どう言う意味だ!」



紅の隻眼が漆黒の瞳を睨み付けたが、闇は静かに歪んだ笑みを浮かべるだけだった。

デクリアモンの合図によってデーモン達は一気に襲い掛かる。



「ッ…ルーツァリモン!ホワイトアウト!」



デーモン達の視界を真っ白に覆い尽くし、身動きが取れない隙にルーツァリモンは扉を打ち破って外へ脱出した。

その光景にムルムクスモンは不満そうな声色でデクリアモンに声を掛ける。



「逃がして宜しかったのですか?」

「どうせ奴等はまたここに来る。慌てる事は無い」





絶望の音色





------(12/02/08)------
遂に話数が三桁突入!\(^p^)/ ここまで続くとは全く予想してませんでした← 皆様が応援して下さったお陰です、ありがとうございます!

こ、今月中に第二期終了させたい……。でも手描きトレス動画作ろうとしてます。コユリでブリハマチ……誰得でもないですけどね!((蹴





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