困惑するタイキ達の問いにキリハは、ユウにDWがゲームの世界ではない事を戦いの中で分からせると言うのだ。 キリハはそう話しながら立ち上がれないコユリを抱き抱え、石段に座らせた。 「――…この戦い、俺の指揮に従ってもらうぞ」 「えっ?!何言い出すんだ……」 「黙って作戦を聞け!」 キリハの作戦、それは仲間に自分のデジモンを託(たく)して戦うというものだった。それによって敵を混乱させ、その隙にタイキがユウの元へ向かう。だがこの作戦で一番危険なのは、囮(おとり)になるキリハだ。 その作戦を聞き、コユリは反応の鈍い手でゆっくりとXローダーを取り出した。手枷の鎖がぶつかり擦れる音がする。 「っ…リロード、ピュアグロウ……!キリハくん…ネネちゃん、Xローダーを……」 キリハとネネは彼女の言う通りXローダーを取り出した。 「リーツァモンとコグロモンズはキリハくんのXローダーに、ヒョウルモン達はネネちゃんのXローダーへ……!」 コユリはピュアグロウを二チームに分け、キリハとネネに託したのだ。 「コユリ、本当に良いのか?」 「うん、こんな事しか出来なくて…ごめんね……」 「こればかりは仕方無いわよ。まさかユウがこんな手を使ってくるなんて……」 ラティスモンとキュートモンは外傷しか治せない為、身体の痺れは効果が切れるまで待つしかない。 その言葉を交わした直後遂に開戦し、敵が攻めて来ている様子がクリスタルに映し出される。 「ダークナイトモン、リリスモン率いる神の獣軍団か。いきなり本隊で攻めて来たな」 「キリハ、お前…本当にそれで良いんだな?」 「諄(くど)い!」 「……分かった」 全員が覚悟を決め、託されたデジモンをデジクロスさせた。これが新たな絆の力だ。 「…キリハくん、」 「コユリ?」 コユリはゆっくりと右手をキリハへ伸ばし、彼のジャケットの裾を掴んだ。 「無理しちゃ…駄目だからね……?」 「っ……ああ、分かった」 その言葉を聞き、コユリは静かに微笑んだ。 そしてキリハはサイバードラモンとルーツァリモンを従えて城を出た。彼等が囮になっているこの隙にタイキが黒の城へと向かう。 暫(しばら)くして黒の城を貫くような閃光がコユリにも見えた。 「…皆っ…無茶しないでね……」 だがソリフィアモンやシャウトモンX5達の守備部隊が押され、遂に城の目前までダークナイトモンとリリスモンが攻めて来た。 「っ…私、下に行くわ!」 「なら私もっ……」 「駄目よ、コユリはそこに居て!」 そう言い切ったネネは急いで城を下りる。 コユリは大事な決戦で何も出来ない自分を恨んだ。掌に爪を立てて握り締める。血が滲もうが関係無い。 ――…私…こんな所で何してるんだろ……。皆が必死で戦ってるのに……。私…私は……ッ! 自由の利かない身体で必死に立ち上がろうとしたが、そのまま前のめりに倒れてしまった。だがそれでも止まる事無く前に進もうとする。這いつくばってでも参戦するつもりなのだ。 城の外ではシャウトモンX5とソリフィアモンがスカルナイトモンを撃破したが、間髪を容れずに敵の大軍が襲い掛かってくる。 「チッ……キリが無い……!」 「大丈夫か、ソリフィアモン!」 「ああ、だがこの数を相手にするのは少し骨が折れるな……!」 ソリフィアモンとシャウトモンX5は互いの背中を守りながら戦っていく。 「っ……ソリフィアモン…超進化ッ!」 「コユリッ?!」 頭上から聞こえて来た声にネネは驚きながら最上階を見る。そこには柵に寄りかかりながらもXローダーを持つコユリの姿があった。 だが次の瞬間には彼女の身体は力無く落ちた。β(ヴィータ)ソリフィアモンは直ぐ様地面を蹴り上げてコユリを抱き止める。 「…あ、あはは…ナイスキャッチ、βソリフィアモンっ……」 「冗談を言うな!動かない身体で、どうしてこんな事を……」 「皆が命を懸けて戦ってるのに…見てるだけなんて出来ないっ……!私だって、ジェネラルだから……!」 強い意思を宿した紅の瞳にβソリフィアモンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにそれを消して口端を上げた。 そして力を込めた短刀でコユリの手枷を破壊した。 「一気に敵を畳み掛ける。指示をくれ、コユリ」 「うん、分かった……!」 純白の意志 ------(12/01/10)------ 多分前のコユリだったら何もしないで見てるだけかなーっと、執筆中にぼんやり考えてました(´ω`) 第二期も終わりに近付いているので、気合いを入れて進めていきたいと思います(・ω・´) |