「――…次々と国を突破していく君達こそ、私の待ち望んだ者達だ」 アポロモンはバグラモンを倒すべく、悪逆非道のデスジェネラルを演じてきたと言う。 「――…大魔殿に至る前の戦いで君達が梃摺(てこず)ったら…タイムアウトになる」 「タイムアウト?」 「コードクラウンが負のパワーで満ちる時、凡(あら)ゆる世界の破壊を招く日が訪れる。それが、D5だと聞いている。もう時間が無いのだ。頼む!私に協力してくれ……!」 頭を下げて頼み込むアポロモンに、タイキは時間が欲しいと告げた。するとアポロモンは素直に奥へと戻って行った。 ――…今までのデスジェネラルとは違う、綺麗な瞳……。嘘は吐いてないと思う…けど……。 「――…コユリ、お前はどうなんだ?」 「…私もタイキくんと同じ。アポロモンを信じてみたい…けど、」 コユリは葛藤していた。アポロモンを信じようとした時、直感的に嫌な予感を感じたのだ。 「なんだか主(あるじ)らしくないですわ」 「…うん……。なんか、嫌な予感がするって言うか……」 「ま、どちらにせよ僕達はコユリに従うよ」 「っ…ありがとう……」 そうしている間にも、キリハとネネが戻って来たアポロモンへ攻撃を開始。それを止めようとするタイキとシャウトモンX4。更にコユリとソリフィアモンが止めに入った。 「お前等、いい加減にしたらどうだ!」 「二人共落ち着いてっ……もう少し話し合おうよ……!」 「っ…コユリ、離れろ!」 「嫌っ……!」 だがコユリの言葉も虚しく、キリハはタイキを投げ飛ばした。 その瞬間アポロモンへ放ったメタルグレイモンのギガデストロイヤーが、アポロモンの前に飛び出したタイキに向かう。 その場にいた全員が息を呑んだ。 「あっ……!」 「タイキ!」 「タイキくん……!」 だがアポロモンが身体を張ってタイキを助け、彼は無事だった。攻撃を受けたアポロモンは、痛みで顔を歪めながら傷付いている右腕を押さえた。 「――…国民一人を罰する度にこうして自ら傷を付け、自分の力を奪っていた。今では右手がもう殆(ほとん)ど動かん。こんな事で罪が晴れるとは思わんが…何かせずにはいられなかった」 その気高さと誇りに、キリハとネネはアポロモンを信じる事に決めた。 「ありがとうキリハ!」 「ッ…くっ付くな!気色悪い!」 タイキは嬉しさの余りキリハに抱き付いた。勿論キリハは嫌がり、ネネは気恥ずかしそうにしている。 微笑ましい光景だが、コユリだけは浮かない表情を浮かべていた。胸騒ぎが治まらないのだ。 その瞬間地面が揺れ、その一部分が崩れた。 「油断はビックエネミー、大敵ね」 「ユウ!」 「ツワーモン!テメェ……!」 突然現れたのは、ユウとツワーモンだ。それにアポロモンは驚きを隠せないでいる。ユウはアポロモン自身が招き入れたと言うが、アポロモンにそんな記憶は無い。 「――…君の部下のマルスモンも、君自身が倒したんだよ」 「何っ……!」 「そう言う事さ、相棒。俺はずっとずっと前から、お前の中にいた」 滲み出て来た邪悪な力が、アポロモンの半身を飲み込んだ。 「俺は眩しい太陽の中に潜む暗い悪の黒点、ウィスパードだ」 ウィスパードは、バグラモンとダークナイトモンが用心の為にアポロモンの中に組み込んでいたプログラムだった。 これこそコユリが先程から感じていた胸騒ぎの正体だ。 そしてウィスパードは完全にアポロモンの意識を乗っ取り、シャウトモンX4に攻撃を仕掛ける。 「ウィスパード、ゲームを始めるよ!」 「ああ」 ユウのその言葉によって、ウィスパードはコユリ達を紫の光で囲った。この窮地を脱する為にグレートクロスを行う。 ――…アポロモン…ごめんなさいっ……! 「「グレートクロスッ!」」 コユリは覚悟を決めたが、タイキのXローダーは光らず、超進化も出来なくなってしまった。ウィスパードを倒す事にまだ躊躇(ためら)いがあるのだ。 そうしている間にコユリ達の地面が丸く抜け、一気に落下していく。 「やべぇ!これって……!」 「地獄行きだよブラザー!」 ――…しまった!俺の…俺の所為で……! 「やったー!さあ愈(いよいよ)ラストステージ、僕のターンだ!一緒にタイキさん達との戦いを楽しもうよ、ウィスパード」 「ああ、楽しもうぜ」 「ふふっ…待ってて下さいね、コユリさんっ……!」 侵された光 ------(12/01/07)------ コユリまで戦う事に躊躇ったら面倒な事になりそうなので、結構あっさりと覚悟を決めました……。成長したんだなーっと温かい目で読んで頂ければ嬉しいです(´ω`)← |