グラビモンは前回の戦いの時、タイキの腕にコアを移動させていたのだ。コアは既にタイキと一体化し、タイキを殺さなければグラビモンを倒す事は出来ない。 「――…グラビモンを倒さなければ最後の国へは行けない……バグラモンを倒す事も出来ない……」 「キリハ君、まさか……」 「…キリハくん……」 キリハはタイキの元へゆっくりと歩み寄った。コユリは眉尻を下げ、心配そうに彼を見詰める。 するとキリハはしゃがみ、タイキの肩に手を置いた。 「…出来る訳ないだろ……。降伏だ、グラビモン……!」 「キリハ、駄目だ!」 「タイキ、選択の余地は無い」 その言葉にグラビモンはキリハを嘲笑(あざわら)った。 「――…では降伏の証にXローダーを渡してもらおう」 「キリハ!」 「大丈夫だ。今は降伏しても、いずれ必ず逆転出来る。お前がいればな」 キリハはそう言ってグラビモンにXローダーを差し出す。だがその蒼の瞳が気に入らないグラビモンは、触手を彼に向けて攻撃を仕掛けた。 無意識の内にキリハの元へ駆け出そうとしたコユリ。だがタイキは彼女の腕を引いて立ち止まらせ、自らキリハの前に飛び出した。 「何ッ?!」 ――…グラビモン、俺が死ねばお前も死ぬ! タイキが飛び込んで来るという想定外の事に、グラビモンは急いでコアを移動させた。 メルヴァモンがタイキとキリハを抱えて攻撃を避ける。更にシャウトモンX7がコアを撃ち落とした。 「――…グラビモン、俺達の強さは仲間を犠牲にする強さじゃない」 「仲間を守る強さだ!」 キリハが撃ち落とされたコアを握り潰し、グラビモンは断末魔を上げながら消えていった。その瞬間軍旗が三色に変わる。 先程タイキが無茶をして飛び込んで行った理由を聞き、キリハとネネは半ば呆れ返っている。だがコユリだけは紅の瞳に大粒の涙を溜めて肩を震わせ、ワンピースの裾を握り締めていた。 「い、一歩間違えば…二人共…死んじゃったかもしれないのに……」 「な、泣くなコユリ!」 「何はともあれ無事にグラビモンを倒した訳だし……」 「で…でもっ……」 コユリはタイキの無鉄砲さに腹を立てているのではない。二人共生きている事に安堵し、緊張の糸が一気に緩んだのだ。 そんな彼女を落ち着かせる為、キリハは躊躇(ためら)い勝ちに彼女を抱き締めた。 「っ……!」 「俺もタイキもこうして生きてる、だから泣くな。……お前の泣き顔はもう見たくない」 「…う、うん……」 守る強さ ------(12/01/06)------ 最後にコユリを抱き締めたキリハは、あの後ネネに引き剥がされ、セクハラだと言われ続けたりします← ネネはコユリの幸せを願っていますが、ヘタレなキリハに渡す位なら自分が幸せにしてみせる!…と言った考えを持っています(爆) |