地面に捨てられたままだったロケットペンダントが宙に浮かぶ。すると一瞬にして周りの景色が消え、気が付けば暗い空間の中にいた。

そこには泣いている一人の少年がいた。十歳の時のキリハだ。

泣きじゃくる彼の傍に寄り添うのは優しい母親。次に現れたのは厳格な父親だ。父親は幼いキリハには苛酷過ぎる言葉を投げ付けていく。

だがコユリとタイキにはその言葉の真意が分かったような気がした。

キリハがロケットペンダントを手に取ると、先程の景色に戻った。



「――…そんな泣き虫だった俺が、強き愛の持ち主だと言うのか」

「そうだ」

「何?何が強き愛だと言うんだ!?」

「それは、今もお主の中に眠っている。自分でそれを見付けるのだ、キリハ」



デッカードラモンの言葉に、キリハは家族写真を見詰めた。

彼の両親は不慮の事故で亡くなり、その時親戚や父親の部下に裏切られて全てを失った。信頼していた人物達から裏切られた事が拍車を掛け、異常なまで"強さ"に執着していたのだ。



「――…でもそれは、本当の蒼沼キリハじゃないだろ!」

「ッ……!」

「愛を捨てちゃ駄目だキリハ!お前のお父さんも、そう言いたかったんじゃないのか?!」

「なんだと……?!」



タイキの言葉に驚き、困惑するキリハ。コユリはそんな彼の手を両手で優しく握った。



「…私は絶対にキリハくんを裏切らない。タイキくんもネネちゃんも…うんん、ここにいる全員、キリハくんを裏切ったりしないよ」

「ッ……どうしてそこまで言い切れるんだ?!」

「大切な人で…信頼してる仲間だから。それだけじゃ、駄目かな……?」



透き通った紅の瞳に見詰められ、蒼の瞳が揺らいだ。

だがその瞬間、一同の頭上からグラビモンの技が落下して来た。タイキ達を守る為、デッカードラモンが傷だらけの身体で盾になる。



「――…やい、キリハ!まだ分かんねぇのか!」

「っ…何だ?!」

「お前の強さ、力はよ、この中にあんじゃねぇのか?!」



シャウトモンが指差したのはキリハのXローダー。その中からはキリハの為に戦おうとするドラコモンやメタルグレイモンがいた。

そしてキリハは漸(ようや)く気が付いたのだ。本当の強さとは本当の仲間。欲しかったモノは仲間だと。

だが無情にもグラビモンの重力爆弾はデッカードラモンを押し潰した。その威力は凄まじいもので、デッカードラモンの身体は透け、光の粒子となって消えて行く。



「デッカードラモン!」

「…デッカー…ドラモンが……」



傷は余りにも深く、Xローダーの中に戻った所で治る事は無い。デッカードラモンは自らそれを覚り、薄れ行く意識の中で言葉を紡(つむ)ぐ。キリハの頬には大粒の涙が伝っていく。



「――…駄目だ!逝くな!お前まで俺を置いていく気か!」

「…儂はお主を見守っているよ……。お主には良い仲間が沢山いるではないか……」



目の前で起きている現実は余りにも辛く悲しい。コユリの瞳にも涙が溜まっているが、零れない様に必死で堪える。



「その強き絆で…新たなデジクロスを誕生させるのじゃ……」

「新たな…デジクロス……?」

「そうだ…儂には見えるぞ。強く、そして深き愛の戦士の姿が……。キリハ…儂のジェネラル……ありがとう……、」



そう言い残し、デッカードラモンは粒子となって消えていった。全員が悲しみに打ち拉(ひし)がれる中、グラビモンだけは残酷に笑みを浮かべている。

コユリ達の周りをグラビモンの大軍が取り囲む。



「タイキ、コユリ、ネネ!」

「ああ!」

「デッカードラモンの為にも……!」

「私達、皆の力で!」

「皆行くぞ!」

「「グレートクロス!」」



四人は己のXローダーを高く掲げた。デッカードラモンの言っていた、新たなデジクロスだ。



「Ω(オメガ)シャウトモン!」

「Z(ジーク)グレイモン!」

「バリスタモン!スターモンズ!」

「ヒョウルモン!」

「スパロウモン!」

「「グレートクロスッ!」」



四人の力を一つにしたグレートクロス。土埃を舞い上げて現れたのは、Ωシャウトモンを軸としたシャウトモンX7だ。



「セブンビクトライズッ!」



その技は周囲にいた大軍を一気に殲滅させた。グラビモンはシャウトモンX7を甘く見ているのか、余裕の表情を浮かべている。だがその表情はすぐに崩れる事となった。

シャウトモンX7はグラビモンのオクタグラビティによって動けなくなるが、絆の力によってそれを跳ね返し、間髪を容れずに攻撃していく。



「――…止めだ!クロスバーニングロッカー!」



その技によってグラビモンを倒す事が出来、タイキとネネは安堵の表情を見せた。だがキリハは俯(うつむ)き、デッカードラモンを死なせてしまった事を悔やんでいる。

蒼の瞳に涙が溜まっている事に気が付いたコユリは静かにキリハに寄り添い、何も言わずに彼の手を優しく握った。



「っ……コユリ、」

「…何も、言わなくて良いから」



二人にはそれ以上の言葉は必要無かった。コユリが傍にいる、それだけでキリハの心は少しずつ落ち着きを取り戻していく。



「――…タイキ、可笑しいぜ。光の道が現れねえんだ」

「本当だわ」

「デスジェネラルを倒した筈なのに、旗が変化しないなんて……」



グラビモンは確かに倒した筈だ。にも関わらず、靡(なび)く軍旗はバグラ軍のまま変化していない。

情報を得るため、ネネはハイビジョンモニタモンにグラビモンの城に潜入するよう命令した。





絆の力





------(12/01/01)------
ドルルモンは犠牲となったのだ((蹴 やっぱり"X7"にしたかったので……。

今回は少し長くなってしまいました……orz 読みにくくて申し訳ないです(´`;)





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