信じると言ったキリハに攻撃され、コユリは現実を受け止めきれないでいた。まるでダストゾーンの再現ではないか、そう脳裏を過る。

あの時のキリハはダークナイトモンに操られていたが、今は己の意思で攻撃して来た事が雰囲気ですぐに分かった。

キリハの攻撃から身を守ろうとしないコユリに気が付いたヒョウルモンが、Xローダーから出て彼女の盾になった。



「っ…ヒョウ…ルモン……」

「絶対に揺らぐな!」

「ッ……!」

「坊主の事、信じてるんだろ!」



ヒョウルモンはコユリを叱咤(しった)し、その言葉で彼女は目が覚めた。

――…そう…だよね。私がキリハくんを信じなきゃ誰が信じるって言うの……!



「――…この世界で一番強いのはこの俺だ!この…蒼沼キリハだッ!」



異常なまでに強さに拘(こだわ)るキリハの姿に、コユリは直感的に"何か"が彼を突き動かしているのではないかと思った。

キリハはこの場でタイキ達を倒そうとメタルグレイモンを超進化させた。コユリは戦う事を拒んでいるが、ネネは戦おうとしている。そこにタイキが待ったをかけた。



「待ってくれ皆!キリハは…俺とシャウトモンで止める!」



シャウトモンも超進化し、二人の激しい戦いが始まった。コユリは一切口出しせずにペンダントを握り締めて祈るばかり。

そしてΩ(オメガ)シャウトモンとZ(ジーク)グレイモンの必殺技がぶつかり合い、巨大な爆発を引き起こした。それによって土煙が舞い上がる。

視界が晴れ、土煙の中から傷だらけのシャウトモンが現れた。止めを刺せとキリハがZグレイモンに命令するが、超進化が解け、メタルグレイモンは倒れてしまった。



「……コユリ、止めなくて良いのか」

「……キリハくんとは戦わない。こうなったのも、何か理由がある筈だから」

「…そうか。だが、本当にヤバイ時は勝手にするぜ」

「……うん、分かった」



いつものコユリであれば泣きながらキリハを止めるだろう。だが今は戦いの行方を静かに見守っている。

タイキはシャウトモンを、キリハはメタルグレイモンをXローダーに戻した。



「キリハ、止めろ!もう良いだろ!…キリハ!」



その言葉はキリハには届かない。今度はサイバードラモンとゴーレモンをリロードした。すると勝手にデッカードラモンが現れ、キリハを止めに入った。



「――…タイキ達は行きなさい。儂(わし)はキリハと話がある」

「デッカードラモン……」



タイキは躊躇(ためら)ったが、デッカードラモンの真っ直ぐな眼差しに強い意思を感じ取り、首を縦に振った。



「…分かった、ここはデッカードラモンに任せる。皆、行くぞ!」



キリハの事はデッカードラモンに任せ、一同はこの場を離れる為に走り出した。

キリハはタイキ達を攻撃するようにサイバードラモンに命令したが、デッカードラモンが立ち塞がった。



「――…今のお主は強き愛は疎(おろ)か、愛そのものまで失おうとしている」

「愛だと…?そんなものがあるから、俺は本当の強さを手に入れられなかったんだ!」


――…キリハくんっ!


「ッ……!」



一瞬脳裏を過ったのは、笑顔で手を振るコユリの姿。だがキリハはそれを掻き消すかのようにロケットペンダントを地面に叩き付けた。

そしてデッカードラモンを裏切り者とし、攻撃を始めた。だがいくら攻撃されようともデッカードラモンは反撃しない。

タイキ達は急いで倒れたデッカードラモンへと駆け寄る。ダメージは相当のものらしく、身体は少しずつ光の粒子となっていく。



「――…僕が治すっキュ!」

「っ…リロード、ラティスモン!」



ラティスモンとキュートモンが急いで手当てをしていくが、一向に治る気配が無い。



「有難う、キュートモン、ラティスモン。しかしあまり無理をするな……」



タイキはキリハを睨み付け、一歩ずつ近付いて行く。バリスタモンとドルルモンが、サイバードラモンとゴーレモンからタイキを守る。



「――…話してくれ、俺達は仲間だろ!」

「違う!…俺には仲間は要らない。……仲間は、いつか俺を裏切る!」

「……キリハ、」

「私達は何があってもキリハくんを裏切ったりしないよ……?」

「っ!…口先だけなら何とでも言える!」



コユリの言葉すら、今の彼には届かないのか。ネネはキリハに自分の事を話してほしい、そう伝えるとデッカードラモンがゆっくりと口を開いた。



「――…儂がお主達に見せよう……キリハの過去を」





捨てきれぬ愛





------(11/12/31)------
今回のコユリはかなり大人しいですね← 台詞を入れる場面が全然無いので辛いですorz





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