コユリはキャニオンランドに着いた頃からキリハの様子がいつもと違う事に気が付いていた。

バグラ軍三元士の一人、ブラストモンとディスクゾーンで戦った時の事が思い出される。その時のキリハも今回と同じような雰囲気だったのだ。

一同は敵の戦力がどれ程のものなのかを確認する為にコグロモンズを送り込んだ。宙には中継映像が映し出される。

巨大な門の向こうにはこの国のデスジェネラル、グラビモンがいた。跪(ひざまず)いているのはバグラ軍の中でも選りすぐりのデジモン達だ。



「――…こんな大軍と、どうやって戦えば良いんだ……!」

「フッ…飛翔能力のあるヒポグリフォモンニ百、地獄の番犬ケルベロモン三百、並外れた破壊力を持つウェンディモン五百。そして、アヌビモンを護衛につけたこの国のデスジェネラル、土神のグラビモン。…俺達が倒す相手だ。……いや…この俺が……!」



――…キリハくん……。なんだろう…嫌な予感がする……。

敵の戦力を前に、一同はどうやってグラビモンを倒すか頭を抱えた。

そんな時、今回は自分が指揮を取るとキリハが名乗りを上げた。木の枝で地面に簡単な地図を書き、作戦を説明していく。



「――…コユリの軍は二手に分かれろ。ソリフィアモンはタイキの軍、ルーツァリモンはネネの軍のサポートだ」



いつもとは違う、冷めた蒼の瞳がコユリを見た。その瞬間、キリハが何か別のものを見ている様な気がした。瞳の奥で黒く渦巻いているものに少し恐怖を感じたが、それは表に出さない。



「…うん、分かった」

「ん?キリハ、おめぇの軍は?」

「フッ…そして俺の軍。敵陣に残るはデスジェネラル、グラビモンのみ。そこに俺が……」

「なんでぇ!美味しいトコは全部おめぇって訳かよ!」



キリハがグラビモンを倒す事にシャウトモンは不満があるらしい。ネネは持ち堪えられるかが心配の様だ。だがキリハはそれを悉(ことごと)く切り捨てた。



「――…十分敵を引き付けてくれるだけで、その間に俺がグラビモンを討つ」



かなり強引なこの作戦にネネやドルルモン達は不安を感じている。それもそうだろう。もし失敗してしまえば全員の命が危険に曝(さら)されてしまう可能性があるからだ。



「――…弱さは悪、石に齧(かじ)り付いてでも勝て。勝てない奴はクズだ」

「なんだと!」

「っ…キリハくん……」

「ッ…何故だ!何故そんなに先を急ぐ……?!」



タイキの問いにキリハは己の真の目的について語り出した。コユリは依然眉尻を下げたまま心配そうにキリハを見つめる。

彼の真の目的、それは己が"最強"である事を証明する事。だがその為ならタイキと戦う事も辞さないと言う。

――…やっぱりいつもと違うキリハくんだ……。でも…私は……。



「――…俺はキリハを信じる、アイツはそんな事しない。キリハを仲間と信じて、俺は共に戦う」

「……そうだよ、皆。私達がキリハくんを信じなくちゃ誰が信じるって言うの?」

「コユリっ……」

「…フッ、どうでもいいさ」



タイキはキリハの作戦でグラビモンに挑むと決めた。そして赤のXローダーを掲げ、軍旗を出現させた。赤と青、そして白の三色で色分けされた軍旗が空に靡(なび)く。



「……ハクシンモン、本当にこれで良いのね?」

「…ああ、大丈夫じゃ。何があっても勝手に動かず、コユリの指示に従うのじゃぞ」

「……分かった」



シキアモンとハクシンモンが小声で遣り取りしている間、コユリは静かにペンダントを握り締めた。全員が無事であるようにと祈りながら。





渓谷で祈りを捧げる





------(11/12/30)------
家族には悪いと思いながらも大掃除をほったらかして書きました← 正月は時間が取れないと思うので今のうちに……(´ω`;)

いつも以上にコユリの出番が少ない……orz





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