締め切ったカーテンの隙間から微かに入り込む眩しい程の朝日。窓の外からは小鳥の囀りと鶏の鳴き声が聞こえてくる。毎日鶏に起こされては、後五分だけと布団を被り直す。だがその五分すら許さないと言わんばかりに、今度は天井から聞こえてくるモーニングコール。


「やあ、おはよう名前ちゃん!今日も清清しい青天だよ!」

「……んぅ、後ちょっと……」


天井の一角を外して天井裏から顔を覗かせる一色だが、それすらいつもの事の為名前は見向きもしない。二度寝に入ろうとする彼女の姿に、一色は外した天井を戻した。ガタリと上から聞こえてきた音に、一色が諦めて行ったと思った名前。これで眠れると安堵した、次の瞬間。鼻の辺りまで被っていた掛け布団が足首まで剥ぎ取られた。


「…寒っ……!」

「さあ起きた起きた!」


一色は諦めた訳ではなく、ただ下に降りに行っただけだった。そして合鍵を使って名前の部屋に入り、起きようとしない彼女の掛け布団を剥ぎ取ったのだ。


「…うぅっ、分かった起きるって!」

「新一年生達は始業式に行ったよ。僕達もそろそろ支度しないとね」


カーテンを開けながらにこやかに話す一色とは正反対に、名前は目をしばしばさせながら大きな欠伸をひとつ。


「あー…始業式って今日か……。面倒くさっ」

「まあそう言わずにさ。弟くんが編入して来るんだろ?」

「…あぁ…!あの愚弟が来るんだった」

「愚弟だなんて酷いなぁ」

「本当のことだよ、慧。……にしても寒い、」


まだ朝晩は冷えるこの時期。名前は自分の身体に両腕を回して擦る。布団を被ればまた夢の世界へ直行だと分かっているからそれも出来ない。


「寒い?それは大変だ」


言い終えるより行動の方が速いか。一色はベッドに腰掛け、名前の肩を優しく抱いて自分の胸元へと引き寄せた。


「ほら、これで寒くないだろう?」

「…ん、暖かい」

「年中無休、いつでも名前ちゃん専用のカイロになってあげるよ」

「流石に夏場は勘弁して欲しいな」


ふふっと笑いながら目蓋を閉じて一色に寄り掛かり、彼の温もりを静かに感じる。お互いをささやかな幸せが包み込んでいるこの時間も、後五分もすれば伝声管から聞こえるふみ緒の声で終わりを迎えるのであった。


[13/09/04]
title:瑠璃






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