SS(2013) | ナノ





ふと気が付いた時には、放課後の教室に私とドナートしか残っていなかった。寮に帰っても話せるが、話に花が咲いた為会話は留まることを知らない。


「それでシャペル先生がさぁ……、」

「――…へえ、それはまた凄い」


ドナートは聞き上手だからこちらとしても話すのが楽しい。先程までは日向子も居たのだが、先に寮に戻ってしまった。そう言えばさっきからポケットの中の携帯が震えている。きっと日向子からのメールだろう。後で返信しよう、頭の隅でそう思った時教室の扉がガラリと音を立てて開いた。


「あれ?四宮先輩?」

「四宮さん、どうかされました?」


突然私達の教室に現れた四宮先輩は何故か不機嫌そうにずかずかと私に近付いて来た。私先輩に何かしたっけ?次の瞬間には無言で腕を掴まれて強引に引っ張られた。


「ちょっ…先輩!痛いですって!」

「……」

「…ドナート!私の荷物寮まで持って来といて!」


何だか簡単には終わらなそうな気がしたから、振り向いてドナートに置きっぱなしの荷物を頼んだ。その瞬間更に強く腕を握られた。

無言で廊下を突き進む四宮先輩。完全に怒ってる。私本当に何かやらかした?


「せ、先輩!四宮先輩!」

「……」


教室から結構離れた所でようやく先輩の脚が止まり、私の腕は解放された。


「もう…いきなりどうしちゃったんですか?」

「何度も電話したのにさっぱりかけ直してこねぇと思ったら…、」


……ヤバい。さっきのはメールじゃなくて電話で、しかも先輩からだったのか。


「見付けたと思ったら梧桐田と二人だけで話しやがって。…これからは他の男と二人っきりで話すな」

「え、」

「お前は、俺とだけ話してろ」


強引で自分勝手で突然過ぎて意味不明だけど、先輩はドナートと二人で話していたことに嫉妬したのかと。もしかしたら、と馬鹿らしい程期待している自分がいたことに驚いた。



[13/06/18]
四宮祭りその2。Twitterのmoeru_botより。一方的な四宮の片想いと嫉妬。何となくそれに気付いて意識し出すヒロイン。時代背景的にどんな携帯かは不明←
title:瑠璃


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