初めて彼の私服を見て思わず「マジか!」と声を上げてしまったのはほんの二時間前。本当は前から気になっていた映画を観に行くはずだったのに、そんな気さえ失せてしまう程彼の私服は酷かった。デートで「千発百中」とだけ縦に書かれたTシャツなんてありえない。でもそれはそれで面白いから佐鳥に写メ送ってやった。 「なぁ、アヤメ。もう映画観に行かね?」 「そんなダサい格好してる奴と映画なんて観たくありませんー。…あ、これなんてどう?」 既に飽きている公平に服を合わせてみれば、「どれでも良い」と興味の無さそうな言葉が返って来た。誰の為に選んでると思ってるんだ、と口をついて出そうになった言葉をぐっと呑み込んで目の前の服を見定める。 「取り合えずコレ着てみて。サイズは合ってると思うから」 「はいはい」 私もずば抜けてセンスが良い訳じゃないけど、それでも目の前の男よりはマシだと思う人並みのセンスで選んだ服を渡して試着室へと促す。他の服を見ながら渋々中に入った彼を待っていると、背後で思ったよりも早くカーテンの開く音がした。 「着た感じど、う……?」 振り返りながら思わず言葉を失った。だって、予想以上に似合っていて格好良かったから。かなり様になっている。 「どう?」 「……ダメ、」 「そんなに酷い?」 「…そうじゃなくて。格好良すぎて今以上にモテちゃうから、ダメ。千発百中Tシャツのままでいて」 自分でそこまで言った癖になんだか恥ずかしくなって、顔に熱が集中するのを感じた。ちらりと公平を見れば彼もまた顔を赤くして珍しく照れていて、端から見ればただのバカップルだと思いつつも照れずにはいられなかった。 [13/11/28] Twitterのmoeru_botより。今更ながら出水のTシャツが衝撃的だった為。 title:微光 戻る |