「……ハァ、」 彼女の部屋を訪れると、こざっぱりしたこの部屋の主は窓際に肘をついて外を眺めながら溜め息を吐いていた。部屋を訪れた人物に気付いたようで、ゆっくりと憂鬱そうな視線が動く。 「…あら、銀。食戟お疲れさまあ、勝ったんでしょ?」 「無論だ」 「それは良かったわあ」 甘ったるい声と間延びした口調が耳に残る。それはいつも通りなのだが、やはり憂鬱そうなのが気掛かりで。心配した堂島がアヤメに歩み寄り、彼女の頭を優しく撫でる。 「元気が無いな、どうしたんだ?」 「…城一郎、本当に行っちゃうんだから。寂しいの」 確かに堂島も良き友でありライバルでもあった城一郎がこの学園を去ってしまい、少なからず物足りない日々を送っていた。だが自分の彼女が他の男を想って悲しげな表情を浮かべていることに堂島の心中は複雑だ。 「城一郎のことが好きなのか?」 「好きよ」 「……!」 「彼の料理が、ね」 一瞬はショックを受けた堂島だったが「相変わらず誤解を招く言い方だ」とすぐに笑ってみせた。そんな彼の姿にアヤメも目を細めて小さく笑みを浮かべた。そして彼の身体に両腕を回し、首筋に顔を埋める。 「ちょっとは驚いたあ?」 「あんなことを言われたら誰だって驚くさ」 「んふふ。心配しなくても銀のことは愛してるから」 「ああ、俺も愛してる」 [13/10/02] アンケより学生堂島さん夢。結局よく分からなくなった話。 title:微光 戻る |