SS(2013) | ナノ





「あ、あのっ!…これ、四宮先輩に渡して下さい!」


一年生だろうか。まだ彼のことをよく知らないで好きになってしまったのだろう。震える手で渡された女の子の甘酸っぱい想いが詰まったラブレターを受け取った。


「…と、言う訳でハイ」

「あ?面倒クセェな」

「そう言わないでよ」


その日の夜。小次郎の部屋に行き、直接彼にラブレターを手渡した。私って親切。だけど小次郎は面倒臭いと嫌な顔をしている。


「何で受け取るんだよ」

「そりゃあ頼まれたから」

「それが自分の彼氏宛てだとしてもか」

「うん」


即答すれば複雑そうな、何とも言えない表情を浮かべる小次郎。


「俺がこの差出人に乗り換えるとか考えねぇのかよ」

「それ自分で言っちゃう?」


今は何とか抑えているけど、前までは取っ替え引っ替えしてた癖に。でもまあそんなことを言うようになったのは、本気で私と付き合ってくれているからだと思うと嬉しくなった。


「ちゃんと読んで、返事してあげなよ」

「……」


そう言えば、彼は面倒臭そうな表情を浮かべながらラブレターの封を開けた。そして手紙を読んだかと思えば、またそれを封筒に戻して私に渡して来た。仕方がないので受け取る。


「なにさ」

「答えはノーだって、伝えておけよ」

「なんで私が」

「面倒事を持って来たのはアヤメだからな。後始末は当然だろ」


何だか不機嫌になってる気がする。眉間に皺寄せてるし。……あ。


「小次郎ってば、私が嫉妬しなくて寂しいんでしょ」

「…はぁ?何言ってんだテメェ」


否定はするけど、その言葉にいつものような威圧感は無い。やっぱり図星のようだ。そんな小次郎が可愛くて、ベッドに腰掛ける彼に歩み寄り、そのまま向き合う形で脚に跨がった。


「大丈夫だって。私はちゃんと小次郎のこと愛してるよ」

「…当たり前だ、」


そのまま彼をぎゅっと抱き締めれば、ぱたりと大人しくなった。やっぱり可愛い。それはそうと、あのラブレターどうしようか。



[13/10/02]
サバサバした彼女に少し不安を覚えてしまった女々しい四宮の話。
title:微光


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