SS(2013) | ナノ





バタンッ、と玄関から聞こえてきた音で私は浅い夢から現実に呼び戻された。壁掛け時計を見上げれば深夜三時を回っており、彼の帰りを待っている間にいつの間にかテーブルに突っ伏して眠ってしまったようだ。


「……なんだ、まだ起きてたのか」

「今起きたトコ。…お帰りなさい、小次郎」

「…ただいま」


疲れきった様子の小次郎はソファーに深く腰掛け、眼鏡を外してテーブルに置いた。私も背もたれにぐったりと寄り掛かる小次郎の隣に座る。


「何だかやけに疲れてるね」

「…色々トラブルが起きたんだよ、ったく」

「そっか、お疲れさま」


労いの言葉をかけると同時に突然小次郎に抱き付かれ、そのまま二人でソファーに倒れ込んだ。大の男だから当たり前だけど、かなり重い。


「ちょっ、小次郎…!」


彼の肩を押して抵抗してみるものの、言わずもがな無意味で。


「…アヤメってホントに胸ねぇな」

「うっさい!」


人が気にしてると言うのにわざわざ「胸が無い」と言ってくる小次郎。でもそんな言葉とは裏腹に、私の身体に腕を回してなけなしの胸元に顔を埋めてくる。


「…落ち着くな、」


その言葉を最後に、段々と寝息が聞こえてきた。


「小次郎?」

「……」


返事は無い。どうやら本当に眠ってしまったようで、余程疲れていたらしい。


「今日もお疲れさま、小次郎」


彼の頭を優しく撫でた後、私も目蓋を閉じた。



[13/08/05]
四宮祭りその6。Twitterのmoeru_botより。疲れてる時だけ彼女に甘えてたら可愛いなって話。
title:微光


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