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蒼沼キリハは死にました。

初恋でした。一目惚れだったのです。彼の内面を知ってからこの恋は更に燃え上がり、私を狂わせてしまう程だったのに。

常にクールで一匹狼、何があってもその端整な顔を崩すことのない彼が好きでした。他人を蔑む冷めた蒼の瞳が好きでした。静かに漂う冷めた雰囲気が好きでした。中学生らしからぬ冷徹な性格が好きでした。

彼にとって私はただのクラスメイトであり、それ以外の感情は持ち合わせていないでしょう。私はそれでも良かったのです。元々彼が私を見てくれる訳が無いと諦めていたから。

毎日「おはよう」「また明日」と何げ無い振りを装って声を掛けても彼は無視を決め込むのでした。それでも、彼の冷たい双眸が私に向くたった一瞬。そのたった一瞬で私はゾクゾクと鳥肌を立てて興奮するのです。

前々から友人達にはドMだと冗談めかして言われたことがありますが、正にその通りだと今になって思います。彼に淡い恋心を抱くと同時に苛め倒されたいと願う私もいるのでした。だから、彼の意味の無い無視にも私は一人静かに興奮していました。

なのに。なのに。なのに。

三連休明け。私は心弾ませながら教室に入りました。黒や焦げ茶ばかりの髪色の中で一人目立つ金髪がすぐに目に止まるのです。でも、いつもと違っていました。この三連休で伸びたとは思えない程の長髪に分け目のある前髪。漂わせる雰囲気もどこか違っており、恐る恐る挨拶をしました。


「おはよう、蒼沼君」

「ああ。おはよう、柊」


蒼の瞳をスッと細めて美しく微笑んだ姿に、私の愛した彼はいませんでした。

その時、私の中の蒼沼キリハは死んだのです。

ああ。一体誰が、何が、貴方をそんなにまで変えてしまったのでしょう。私は貴方を変えた人を、コトを、一生恨み続けます。



[13/03/07]
ドMの独白。冷めたSっ気のある一期キリハが好きだったのに、急に二期キリハに変わって失望する話。


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