仕事が立て込んで予定よりも遅れて日本に戻って来た。そのまま合宿が行われているホテルに直行すれば、尊敬している先輩方や懐かしい同期や後輩達が出迎えてくれた。けれどそこに彼の姿は無く。 話を聞けば日向子が興奮気味に話してくれたけど支離滅裂で。代わりに堂島先輩が簡潔に先程起こったことを説明してくれた。日向子と冬美に早く会いに行ってやれと背中を押され、彼の部屋を訪れた。 「小次郎」 「…アヤメ。いつ帰って来たんだ…?」 「今さっき。…堂島先輩から聞いたよ、生徒との食戟の話」 「……そうか、」 ベッドに腰掛ける小次郎の前まで歩み寄り、彼の眼鏡を静かに外してサイドテーブルに置いた。 「アヤメ?」 不思議そうにする彼の首に腕を回して優しく抱き締める。 「……!」 「…馬鹿ね、ホントに。停滞してるなら何で私に言わなかったのさ」 「言える訳ねぇだろ。…お前には特にな」 「そう…。でも、もう大丈夫でしょ?」 「…ああ。大切なことを、ようやく思い出した」 背中に腕を回され、ぎゅっと抱き締め返してくれた。堂島先輩が小次郎はもう大丈夫だと言っていたけど、どうやら本当らしい。少し離して彼の目を見詰めれば、微かに赤くなっていた。一人声を殺して泣いたのだろうか。何だか私の方が悲しくなって今度は強く抱き締めた。 「小次郎、目、赤くなってる」 「…うるせぇ」 「泣くなら私の胸貸してあげるよ」 「…ハッ、こんなまな板じゃ全く嬉しくねぇな」 「酷い!そりゃ日向子程おっきくないけど冬美よりはあるんだから!」 そう言えばやっと笑ってくれた。私も思わず笑みが零れる。 「この合宿が終わったら実家に顔出そうと思う」 「うん」 「だからその時は一緒に来い」 「将来の嫁って紹介してくれるなら行っても良いよ」 「元よりそのつもりだ、馬鹿アヤメ。つべこべ言わずに俺に付いて来い」 「ふふっ、はいはい」 俺様で傲慢、なのに弱くて脆いこの人を支えていく為にも、そろそろ料理人から専業主婦に転職かな。 [13/06/18] 四宮祭りその1。四宮の口調が迷子。ヒロインも海外で活躍する料理人で四宮とは遠距離恋愛中だったり。 title:微光 戻る |