バグラ軍との戦闘中、カイが負傷した。敵に襲われそうになったネネの前に飛び込んだのだ。バグラ軍に勝利はした。しかし、傷が深かったのか、カイは今だに目を覚まさない。

チーム内は重い空気に包まれ、カイの目覚めをただ待つばかり。ネネは片時もカイの傍を離れようとはせず、ただ只管彼の意識が戻るのを待った。眠るカイの傍らで、ネネの脳裏に浮かぶのはトラウマとも言える幼い頃の記憶。



***



その日はいつもの公園でカイとネネ、そしてユウの三人でボール遊びをしていた。その時、ネネの蹴ったボールが道路の方へと転がって行き、ネネはそれを追い掛ける。心配になったカイも後に続く。


「ネネ!俺が取って来るから!」

「別に大丈夫だよ!」


しかし、大丈夫とはいかなかった。車道で止まったボールを拾い上げたネネ。彼女はボールに夢中で気付いていなかったが、車がすぐ傍まで迫っており、後ろにいたカイは反射的にネネを思い切り押し飛ばした。

次の瞬間、少年の身体は跳ね飛ばされ、地面に叩き付けられた。彼女を助ける為に己を犠牲にしたのだ。しかし幸いにも怪我は骨折だけで済み、病院のベッドの上で元気な姿をしていた。


「――…カイのバカぁ!!」

「っ…バカってなんだよ!骨折だけで済んだんだから、良かっただろ?」

「……っ良くない…!」


自分の不注意の所為でカイに怪我を負わせてしまった事による悔しさと悲しさから、ネネは泣き出してしまった。


「…っなんで、助けたのッ……!」

「なんでって……俺はネネの騎士(ナイト)だからな」

「っ……!」

「助けるのは当然だ」


平然と笑顔で言い放ったカイの姿に、いつしかネネの涙は止まっていた。



***



「――……カイのバカっ」

「…ッバカは…ないだろ」

「カイ……!」


ネネの呟きで目が覚めたかの様に、カイは少し痛む頭を押さえながら上半身を起こした。


「…悪かったな、心配かけて」

「っ悪かったな、じゃないでしょう?!どうして私なんかを助けたのよ!」


涙目になりながら、珍しく本音をぶちまけたネネ。何もしなくともスパロウモンが助けに来たと言うのに、わざわざ自分の身を投げ出したカイに怒りを覚えたのだ。


「……俺、騎士だから」

「っ……?」

「俺はネネ専属の騎士だからな。姫を助けるのが使命だろ?」


口角を上げて笑ったカイの姿に、ネネは思わず彼の胸に飛び込んだ。


「ッ……!」

「……あんな約束、もう時効じゃない。…何でバカみたいに守ってるのよ」


カイの前では言わなかったが、彼女も"あの時"の約束をちゃんと覚えていたのだ。


「……好きだから、」

「え?」

「俺、ネネが好きだ」


カイ自身、言うつもりは全く無かった。その場の空気に流されて言ったようなものだが、悔いは無い。ネネは鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべながらカイを見上げたが、またすぐに彼の胸に顔を埋めた。


「……言うの、遅すぎよ」

「それはどう言う……」

「私もカイが好きなの……!」


肩を震わせて泣きながらの告白に、今度はカイが驚く番だった。今だに状況を把握出来ていない中、彼は行動に出た。


「ネネ、顔上げろ」

「っ…なによ……ッ!」


ネネが顔を上げた瞬間、不意打ちとも取れるキスを落とした。


「幸せなんだから、泣き止めよ」

「幸せだから泣いてるのよ……!」

「そうか……なら、ネネが泣き止むまでキスしてやる」

「……!」


まさかカイの口からそんな言葉が出るとは思っておらず、ネネが呆気に取られている間にまたカイが唇を重ねた。

悲しみの絶えない戦場で、この一角だけは一時の幸せに包まれていた。





------(11/08/25)------
お題に"キス"が入っていたので強引にそのシーンを入れてみましたが……見事にぐったぐたですね…orz

ネネは必要以上に乙女になり、カイは設定通りにはいかずキザになり……まだまだ精進が必要ですね(・ω・`)多分アンケートの中編は、基本キス落ちになる予感……。



‖×
戻る


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -