俺とネネは、東京の下町で生まれ育った。
互いの家が近所で親同士も仲が良く、必然的に幼い頃から何をするにも一緒だった。所謂幼馴染み。それ以上でもそれ以下でもない微妙な位置に俺達はいた。その「幼馴染み」と言う立ち位置が嫌になったのは、小学校の高学年になってからだ。それは俺が彼女に一方的な恋心を抱いた事にある。
俺だけが変に意識しながら彼女に接していたが、中学に上がった頃にそれを止めた。彼女が俺を異性として見てくれる事は無いと悟ったからだ。それでも俺は、ネネが好きでしょうがない。
「――…俺、好きな子がいるから。君の気持ちには応えられない」
「っ……!」
涙目になりながら去っていく隣のクラスの女の子。もうこの光景には慣れたし、何も思わなくなって来た。
「モテモテね、カイ」
「っ……ネネ、」
「たまたま聞こえてきただけよ」
艶のある綺麗な髪を揺らしながら、俺の鞄を持ったネネが現れた。自然な流れで鞄を受け取り、どちら共なく歩き出す。
「全く、何でいつも俺なんだ」
「それ、他の男子が聞いたら怒るわよ?」
「そうか?」
「誰かと付き合えば、告白される事も無くなるわね」
「好きでもない奴と付き合えるかよ」
「そう言えば本命がいるんですものね。幸せね、その子は」
お前だよ、なんて言える訳もなく。適当にはぐらかせば文句を言われた。そんなたわいない話を交わしながら帰路に着いた。
こんないつも通りの日常が永遠に続くものだと思っていた。あの日までは。
あの日は小遣い稼ぎとして母さんの実家である神社の掃除を夕方までしていた。終わりに差し掛かった頃、境内の前をネネと弟のユウが通りかかり、声をかけようとしたが、「何か」が二人を飲み込もうとするのが目に見えて分かった。
「ネネッ!」
「っ…カイ!」
伸ばした手は届く事も無く、ネネとユウは消えた。最初からそこに誰もいなかったかの様に。
持っていた箒をその場に投げ捨てて、一心不乱に二人を捜し回ったが、見付かる事はなかった。絶望感、そして無力感からその場に崩れ落ちた俺に話し掛けてくる奴がいた。姿は無い。まるで俺自身に話し掛けている様だ。
「これは契約だ」
「ネネとユウを救えるのならなんだっていいッ!」
「お前、名前は?」
「俺は……!」
***
「――…カイ、起きろ」
「……んあ?」
「敵が攻めて来ているぞ」
「お前がいる、問題ないだろ?」
長い夢を見ていた様だ。まだ意識がハッキリしない中立ち上がり、漆黒のボディを持つ相棒の背に乗り、敵陣へと飛び立つ。
ネネとユウを救う為にこの身一つでDWに乗り込んだものの、まだ二人には会えていない。そして俺は今日も戦場を駆け抜けながら大好きなネネを捜している。
------(11/08/22)------
アンケートに投票して頂いたネタで、男主でネネ夢になります。設定もアンケートに基づいて書いていきます(´ω`) 因みに、相棒は黒いメイルバードラモンです。アニメを見る限り、ネネとユウの育った所は東京の下町だと思ったんですけど……違いますかね?(・ω・`)