ate.

夜を濡らす雨粒の匂いが窓のあわいから浸み込んで、そっと枸杞の肌に降りる。寝台に横たわる枸杞の膚(はだえ)はしっとりとして、生白く、艶やかに柔い。唯のたうつ蛇の刺青が彼の躰を涜聖している。それは塒(とぐろ)を巻いて這い摺りその心臓に牙を剥き、果てには深く、突き刺すだろう、彼が愛を口にする刹那。
鱗の一つに唇を押し当てる。仄か湿って、吸い付くような感触がある、鼓膜に雫が落ちてくる、ぽつ、ぽつと、窓の外に降る。
枸杞の肩に縋るようにして身を寄せて、蛇の尾を食んだ。腰骨から辿り、一枚、また一枚、鱗に口付けて、呑み込んでいく。臍を過ぎると不意に髪を梳く指を覚えた。目を遣れば、美しいひとがそこに笑って慈しみを持ち俺に尋ねる。
「孝一。何してるの?」
「……内緒」
枸杞の手が俺の頭を撫でる。俺はこの無意味な、無為な(或いはこれは陰惨かもしれない)行為を無心に続ける。刺青が好きなのと、なおも訊くのでそうだよと返し、枸杞のは好き、けれども終ぞ、食べてしまおうと思ったのだとは、言わなかった。


--------
杜都さんちの枸杞様お借りしました。