ノクタラーベキャラ設定

蔵未孝一:労働者/労働階級/差別意識ナシ
第三工業地区にて工場に勤めている労働者。環境は劣悪だが、「仕事終わりに仲間と飲む酒がうまけりゃどうでもいいや」と思っていて人形に対してもさしたる憎悪や恨みはないが、少なくとも親近感は抱いておらず、「別の世界の人」だという風に思っている。
沢霧と出会って、彼に好かれ彼を好きになって、共に過ごす時間が増えてきたことで段々人形が本当に統治者なのか否かと疑問を抱き始める。人形の身体や機能があまりに人間にとって“都合のいい”ものであるために、せっかく好きになった彼が知らぬ間に踏み躙られているようでようやっと世界に対して漠然とした反感を抱きつつある。
生身の人間としてはあり得ないことだがなぜか人形と互角にやり合える身体能力を持ち、沢霧が彼を認めたのも元はと言えばそのせい。

沢霧章吾:貴族人形/貴族階級/差別意識アリ
グロリオーサに所属する、非常に優れた性能と容姿を併せ持つ特権階級の権化。「有能であること」を至上の価値観としているため、単純に人形と比べて“性能”の劣る人間のことは見下しており、人形が人間の上に立ち世界を統治するのは当然の流れだと思っている。
人形師が特別手を掛けて造った“優れた人形”であるため、スペアのグラスアイも幾つか持っているが、普段目に嵌めている翠緑のグラスアイには人形の動力部を感知/透視する機能が備わっている。従って彼はシドの心臓が模造であることを知っている。
第三工業地区を訪れた際、労働者を処刑しようとして蔵未に“止められ”、彼に興味を抱く。それまで人間が人形に敵う筈がない、人形より優れた人間などいる訳がないと信じ込んできた沢霧にとって、人形に(しかも人形の中でも特に優れた自分に)歯向かえるだけの実力を持った蔵未の存在はカルチャーショックで、彼の元に通い詰めては彼を知ろうとするのだが、その内彼のことを好きになってしまう。だが元々恋愛感情というものが機能として十分に自覚されていないため、自身の感情に気づくのはもっとずっとあとの話。
嘘をつく必要性があまりわかっていないので何かにつけて正直。また必要もないから生殖について詳しくなく、教科書レベルの知識しか知らない。

カーティス・シザーフィールド:人形師/貴族階級/差別意識ナシ
弟を亡くし、彼に似せた歌い手人形を創って、廃墟となったプラネタリウムに隠居し共に暮らしているが、自分にとって都合のいい「弟」を創ってしまった罪悪感から同じ見目で自身に反抗的な護衛用人形・レンドも創った。
かつて行き倒れていたシドを介抱し、グラスアイを授けてやったことがある。
毎晩悪夢に魘されていてろくに眠れていないため少しやつれている。本人も人形と言って差し支えないほど整った顔立ち。

アーネスト・シザーフィールド:歌い手人形/貴族階級/差別意識ナシ
喉の部分がオルゴールになっているため発話できず、「きらきら星」しか歌えない。カートが亡くした弟の「自身を慕っていた姿」のみを元に造り上げたためカートのことが大好きで、でも悪夢に魘される彼を慰めたり、あるいは彼を罵倒する護衛人形のレンドに言い返すこともできないので、いつも悲しそうな顔をしている。
またカートはわざと彼の頭脳を通常より劣った形にしたため、時々カートが一人で泣いてる理由がアーニーには分からないのだが、分からないなりに慰めの言葉を伝えたくても、彼の口から零れるのはきらきら星の音色ばかり。
目はストームグラスになっている。

レンド:護衛人形/貴族階級/差別意識ナシ
自分にとって都合のいい弟を造ってしまったカートが自責の念に駆られて造り上げたもう一人の弟。彼はカートを憎み蔑み罵るように作られており、カートのことを罵倒してはアーニーにいつも恨みがましい目を向けられる。レンド本人はアーニーのことは嫌いじゃなくて、憎まなくていいのならカートのことも恨みたくはないのだが、上手くいかない。




@syg_ori: 「僕は僕の思い通りになる人形と一緒に暮らしているだけで、一人で生きているというのと何が違うんだ、僕も早く弟のところへ逝ってしまえばよかったのに、もう創ってしまったから最後まで見捨てる訳にもいかない、莫迦だった、生きていたってあの子が帰ってくる訳じゃないのに」

「お貴族さん、あんた名前は?」
「……沢霧章吾」
「サワギリ? 何て書くの」
「光沢の沢に、濃霧の霧」
「へえ。名前まで綺麗だなァ」
「お前は?」
「俺? 俺は蔵未だよ」
「クラミ」
「冷蔵庫の蔵に未来の未」
「……例えがめちゃくちゃだ」
「そぉ?」

「お貴族さんなんでこんなとこいんの?」
「え?」
「いやあのさ、むさ苦しくねえ? お貴族さんが楽しめるようなモンなんもねえよここ」
「……章吾でいい」
「へ?」
「お貴族さんって、」
「イヤ?」
「……嫌というか」
「だってお貴族さんだしさあ。あんた」

(人形より優れた人間もいるにはいるんだ。彼くらいしかいないだろうが)
(でも彼は貴族階級の華やかな暮らしより、汗と煤と鉄錆に塗れた工場地帯での暮らしを選んだ)
(“人形ではなく人間を選んだ”)
(俺は一緒に酒を飲めないんだろうか)
(人形だから?)

「俺はお前の仲間にはなれないんだろうか」
「仲間ァ? 俺なんかの仲間になってどーすんの」
「お前は優秀だから、」
「優秀とかそうじゃねーとかで俺仲間になったことないよ」
「……」
「あーそんなカオすんなよな……俺とお貴族さんとでは世界が違うよ。そんだけだって」

「何そんな寂しそうなカオしてんの?」
「は?ーーいや、別に」
「綺麗な顔してんだから笑ってなよ。綺麗な顔で寂しそうにされっと余計に辛いんだよね、ほら、ブサイクがさ、悲しそうにしてんのは笑えるけどさ」
「……お前性格悪いな」
「そうかもねえ。気にしねえけど」

「ってかお貴族さんたち俺らのことバカにしてんじゃねえの? そうでもねえの?」
「それは、ーー」
「あーいい、今のでよくわかった」
「……そうか」
「なんで俺に目ぇかけてくれてんのか知らねえけどさ、仲良くはなれねえと思うよ」
「……」
「でも、」
「、なんだ?」
「綺麗な顔してっから見てて楽しいなあ、あんた。だから時々会いに来てよ」
「……見てて楽しい」
「あ、失礼? これ」
「いや、ーー嬉しい」
「? あ、そ。ならいいけどね」

嬉しい、って言って笑った時の章吾がとりわけ綺麗でちょっと見惚れる蔵未さん(面食い
章吾は人形だから蔵未と仲良くなれないのが悲しい(本人は気づいてない)けれど、人形だから「綺麗で好き」って言ってもらえたので嬉しいらしい。

仲良くなり始めた頃に沢霧が人を殺すところを蔵未は見てしまって、やっぱり分かり合えないと感じる。

(なんで蔵未の顔を見て悲しくなったのか分からない、人間だったら分かるんだろうか、人形じゃなかったらどうしてこんなに悲しいのかちゃんと説明できたんだろうか、悲しいのは嫌だ、嫌だが理由が分からない)
(蔵未に会えなくなった気がする)
(だから?)

(やっぱ人形は人形だよなァ。あいつが悪いってんじゃねえけどそういう風に生きてんだもんな)
(俺らのことなんかやっぱどうとも思っちゃいねえな)
(仲良くなってもいいかなァとか思ってみたけど無理だよな)
(綺麗な顔してんだけどな。綺麗だからやっぱ、冷てえわ)

それ以来なんとなく行きづらくなって章吾は蔵未のところにしばらく行かなくなるけど、仕事にもなんだか身が入らないし訳も分からず憂鬱だから弱ってしまって、しかし訳が分からないながらに多分蔵未が原因だなってことだけは思い当たるから悲しい理由をずっとずっと考えてて、
蔵未はまあいつも通り労働者仲間と楽しくやってんだけど、工場の向こうからあの綺麗な顔がひょいと覗いて自分を見つけるとちょっと嬉しそうな顔をするのを待ってる自分に気がつき、ふぅん、面食いなのは自覚してたが我ながら節操ねえな俺、と恋心には早めに気づく。
沢霧はずーっとずーっと考え続けて結局蔵未と一緒にいられないことが悲しいのだと気づき、更に言えば蔵未のことが好きだから一緒にいられないのが悲しいのだということにもやっと気づいた沢霧は工場地帯へ向かう。普段は持ち歩かないスペアのグラスアイまで全部持ち出して。
それで会いに来た沢霧が蔵未に何を言ったかというと、テーブルにグラスアイを並べて自分が今嵌めてる翠緑のそれも片方抉り取って渡して、
「全部、好きにしていい。割ってもいい売ってもいいお前のものにしてもいい。だから、……俺は、一緒にいたい」

「この二ヶ月よく分からないがずっと寂しくて悲しかった、理由は最近わかったお前に会えないからだ、人形のままじゃ嫌だと言うかもしれないが俺にできるのはこれまでだ、瞳の力が無くなれば俺は用済みだし特権なんてないよ、そしたら一緒にいれるだろうか? それでも無理か?」

「お貴族さん、……何考えてんの?」
「……自分でもよく分からない」
「だってお前これなくしちゃったら、地位も何も全部なくなるんだろ? それをこんなところにもって来やがってどうなるかわかんねえんだぞ、」
「どうなっても別に良かった。ーーと言うとお前は怒るのか」

「あのなあ、」
「瞳があろうがなかろうがお前と一緒にはいられないと言われればそれはもう仕方の無いことだと思った俺は人形でお前は人間だ、それにたとえお前以外のやつに目を壊されて愛玩用になったところで俺は人形だから特になんとも思わない。役目が変わるだけだ」

「ーーてめぇ、」
「分からない、……多分、思わないと思う、悲しくも苦しくもないと思う、……わからない。今までだったらそうだったから構わないと思って来たが今考えると分からない。お前に会えなくて悲しいかもしれない」
「……お前な、」

「原因がわかったら解決しようとするのが筋だし俺にできることはこれだけだから、他にやりようがなかった。迷惑だったなら済まない。いらなくても売れば金にはなる、それもお前には要らないものだろうか、どうしようもないならば諦めるがせめてお前の役に立ててほしい」

「……人の話を聞け」
「なんだ?」
「いいよ。要らない。お前の瞳は」
「ーーそうか、」
「最後まで聞け。……俺はお前のその透き通る目が好きだったしってまあそこだけじゃねえけどさ、お前の目はお前がもってんのが一番綺麗で一番いいよ」

「……でも、」
「なんつーかさよく考えてみたけど、俺とお前が仲良くなれる気はやっぱりしねえの、けど仲良くなんなくても一緒にいたっていいんじゃねえの? お前と話合う気はしねえし酒飲んで楽しい気もしねえけど俺はお前のこと好きだよ、……綺麗で完璧なお前も好きだよ」

「……人形でもいい?」
「お前だって人間の俺でもよかったんだろ? 同じことじゃねえの。お前がなんで俺のこと気に入ったんだか未だによくわかんねえけど俺だってお前のことなんで好きなのかよくわかんねえし、でも会えたら嬉しいしお前が笑ってるとこ見てたいよ。だから、」

「寂しそうな顔すんなよ。綺麗な顔は笑っててくれっつっただろーが、会った時にもさ」
「……わかった」
「……そ。そういう顔な」

「ヤる? 生殖行為をするということか」
「まあオカタク言えばそうですけどもね?」
「生殖自体は不可能だが行為は行えるようにはなっているはずだ。ただどうやるのかは分からない」
「マジで?」
「基本的には必要ないし」
「気持ちいいとか思えんの?」
「……さあ?」

そんでヤってみて、沢霧がちゃんと反応してくれることに安堵する一方で「どうして“基本的には必要ない”はずなのに行為で感じるように設計されてるんだ?」って若干暗澹たる思いがする蔵未さん。教育は受けてないけどさすが賢い。

「昔は分からないことなんてないしできないことがあるなんて考えもしなかったが、お前と一緒にいるとわからないことやできないことばかりだな。使えないやつだ」
「別に使えなくたっていいよ恋人だもん」
「使えない人形なんて要るの?」
「……その考え方なんとかしろよ」

「そういえば人間は基本異性を好きになると聞いたが、お前は俺で構わないのか」
「え? あー俺別にどっちでもいけるから」
「そうか」
「人形の方はどうなの?」
「俺たちは生殖機能がないからあくまで外見上の差異に過ぎないのでこだわりは特にない。こだわるのもいるが」
「へえ、いるんだ」
「稀だがな」
「そういえば二つあったもんな」
「生殖行為の際には双方こなせるようになっているらしい。だがそれも個体差はある、俺はたまたまそうだったが」
「……ふうん」
「どうした?」
「いや、なんか。ーー胸糞悪ぃな」
「お前はどうとも思ってねえのかもしんねえけど、俺はお前が他の奴らにとって『都合のいい』ように作られてんのはムカつくんだよ」
「でも俺はお前にしか使われたくない」
「……」
「なんだ?」
「お前って時々破壊兵器だよな……」
「機能的には常にそうだが」

「……俺が人間だった方が良かったか?」
「まだそんなこと言ってんのお前は」
「人間は子供を欲しがると聞いた」
「俺は欲しくないね」
「ほんとうに?」
「いても養えねえしぶっちゃけ邪魔だよ」
「じゃあセックスをしても俺は子供を作らないから好都合だろうか?」
「……あのさあ章吾」
「なんだ?」
「俺はお前が使えるとか都合がいいとか優秀だとかそういう理由でお前のこと好きなわけじゃねえの」
「……よくわからない」
「じゃーお前はそういう理由で俺のこと好きなの?」
「違う!」
「同じことだよ」
「……そうなのかな」

「お前の動力部ってどこにあんの?」
「……ここ。喉の奥」
「へえ、ーー聞いといてなんだけど、んな簡単に言っていいのかよ?」
「孝一だから言った」
「ふぅん、」
「孝一になら殺されても後悔しないと思ったから」